異世界転生しなくても人生が変わる単純な方法

桂木 狛

異世界転生しなくても人生が変わる単純な方法



 今回はこのサイトやFantiaなどで発信している作品全体に繋がっていくお話です。


 ここでは日々の生活の質を高められるような情報を小説形式で紹介しています。思った以上に少ない自由な時間を増やして、限られた時間の質を高めていこうというのがこのサイトの趣旨で自分が作品を作る理由のひとつです。


 単に日常生活の役に立つ情報を伝えるだけなら小説として書く必要はないのですが、この形式を取っているのにも理由があります。ブログやまとめサイトなどで簡単に情報を手に入れることが出来る中で、わざわざこういうスタイルで情報を発信するのはかなり面倒くさいことをしているように見えるかもしれません。今まで私の小説を読んでくれている方々は分かっていることかもしれませんが、今回のお話を通してその理由についてもお話したいと思います。


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 この街に来たきっかけは何てことない出会いだった。


 出会いと言っても人じゃない。いや、ある意味人かも。だって空想の世界と言ってもその人は確かに私の世界に存在しているのだから。


 高校生の私は時間を持て余して図書館に入り浸っていた。もしかしたら時間を持て余していたのではなくて、本当に使うべきことに時間を使った結果が「図書館に入り浸る」だったのかもしれないけれど。


 ただ目に付くおもしろそうな本を片っ端から呼んでいた私だったけれど、小説はあまり読んでいなかった。


 まあ理由は色々。どうせ読むなら自分の身になる実用的な本を読んでいたかったし、そうでなくてもこの目の前に広がる現実世界を少しでも理解できるような情報に触れていたかった。


 だから私はいつも小説の棚を素通りして経済とか社会について書かれた本を漁り続けていた。


 今思えばどうしてあの本を手に取ったんだろう。普段は見向きもしないタイトルになぜだか引き寄せられた私は興味本位でその本を持って図書室の隅っこでパラパラと読み始めた。


 その本に書かれていたのは何てことない人々の日常生活。けれどその世界の登場人物はどこかにいそうで、どこにもいないような人たちだった。好き勝手に動き回っていて、感情はよくコロコロと変わる。怒ったり悩んだりもするけれどいつもどこか楽しそうで、何かよく分からないエネルギーに急き立てられているかのように何てことない時間を謳歌していた。


 私の周りにはいない。そんな人たち。それが本の中にいた。それも今まで読んでこなかった小説というジャンルの本の中に。


 その本の登場人物はある街に生きている人たちだった。そしてその架空の名前の街にはモデルがあって、現実世界のそこは本の中の街とよく似ているらしかった。


「ここに居られたらどんなに楽しいだろう」


 なんども小説の世界に入り込んでは、よくその街にいる自分を想像してみたりした。正直今まで一人暮らしなんてしたことが無いから知らない街で暮らすのがどんな感じなのか細かくは想像できないけれど、それでも楽しいというのは簡単に想像できた。


 ここに行けたら。


 自分の人生の中で見たら少しの時間だとしても、そこで過ごしたほんの少しの時間もなんてことなく過ごした10年以上に素敵な時間になるはずだ。


 行きたいな。いつも騒ぎ疲れているよな登場人物たちが暮らすちょっとへんてこな街に。


 そんなことを思いながら学校に通い続けて、受験勉強に勤しんで、たまに小説を読み返して街のことを思い出したりしながら、残りの高校生活を過ごした。


 もっと違うものが見たい。もっと新しい発見がしたい。あの街で、きっとあるはずの素敵な出会いを胸に秘めて毎日を過ごしてみたい。


 受験を目の前にした自分は相変わらず想像上の街の中をうろうろしていて、別にそれは人生の転機が差し迫っているからといって変わりはしなかった。いや、むしろ街のことを思う時間は増えていたかも。だって目の前にずっと行きたかった場所行きのチケットを手に入れるチャンスが待ち受けているんだから。


 こうして思い返してみると自分にとっての人生の転機は受験じゃなかったんだってわかる。転機ずっと前に思いもよらない地味な場所にひっそりと転がっていたんだ。それもあんまり興味のないジャンルの棚に。


 高校の卒業式は自分にとってかなりどうでも良いものだった。だってその時にはもうあの街に行けることは決まっていたんだから。もうこの学校の人たちと会うことはないんだろうな。そう思うと図書館でひっそりと過ごしていた三年間がそれほど悪くないものに思えた。だって図書館に自分の居場所を見つけていなかったら、自分はきっと頑張る理由なんて見つけられなかっただろうから。


 そんなこんなで自分は今ずっと憧れていた街で暮らしている。


 よく「憧れた街に行ったところで幻滅するだけだよ」と言う人がいる。まあ、それは間違ってないかもしれない。何日も暮らしていたら旅で訪れただけでは分からない汚れている部分も目に付くし、何度かはトラブルに巻き込まれたりもする。そうしているうちに始め抱いていたイメージは色々な感情と一緒に胸に刻まれた思い出たちの中に埋もれていってしまって、段々と街に失望していってしまう。


 自分は何かある度にこの街を描いたあの小説を読む。確かに現実は小説ほど綺麗なところばかりではないかもしれない。けれど、間違いなくこの街にこの風景を見出した人がいたんだ。深呼吸をして、今自分がいる街を小説の中のイメージを重ね合わせるとちょっとだけ自分が立っている場所が特別な場所なんだって思えたりする。


 スーパーに買い出しに行ったり、バイトの休憩時間にちょっと風に当たりに行ったり。なんてことない時ほど普段の自分とは違う景色の見え方を見つけたりする。


 この街の話を読むほどに、この街の見方が変わる。素敵な音楽のようにお話は素敵なBGMとなって何てことない日常を彩ってくれる。


 次第に本の内容は変わっていって、生活を描いたものになっていった。日常のワンシーンやちょっとドキッとするような出来事。そんな愛おしい話を読んでいると自分の生活も愛おしく思えるようになるから不思議だ。


 話に出てくる料理を作ってみたり、同じように休日を過ごしてみたり。架空の登場人物は癒しをくれた。癒しに身体を埋めていると空想は段々と現実と混ざっていった。日々慌ただしく過ぎていく時間は段々と心地いい時間に変わっていって、憂鬱だった朝もちょっとは嫌いじゃなくなっていった。


 時々、高校の時の自分を思い返したりする。図書室で本を読んでばかりだった自分。今も自分は本を読んでばかり。なんにも変わっていない気もするけれど、外を歩くのは前よりも好きになった。自分の中には今のこの時間を心地いいものにしてくれるBGMが流れているから。


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 人生を変えるきっかけは至るところにある。今回このお話を書いた理由はそれだけです。


 パッと見ありふれていて無価値に思えるものの中にも意外と自分を変えてしまうような出会いは隠れていたりします。


 けれど、それをそれだけ大きな出会いに出来るかはその人の見方次第。なんてことないとスルーする人もいるでしょうし、チラリと見て拒絶する人もいるでしょう。


 私がここで小説家書いているのは色々なところから様々な「見方」をかき集めて紹介してみたら面白いだろうな、と思ったからです。そういうテーマのブログでも書こうかなと思っていましたが、「見方」を伝える手段として小説はとても優れていると気付いてこのスタイルを作り始めました。誰かがその人の視点で語ることで普段の自分とは違う視点に入り込める上に、それが心地よい視点であれば読み手のみなさんにリラックスした時間を届けることが出来る。そう考えて今もこうして小説を書いています。


 このお話の続きとして、つらいメンタルダメージを抱えていて今の状況を変えたいという人たちにおすすめのお話を紹介します。



・メンタルダメージを乗り越えて毎日を楽しむ想像力を身につけるリフレッシュ方法


https://fantia.jp/posts/215220



 ここではこういった人生を変えるために役に立つような視点や日々を心地よく生きられるような過ごし方について紹介しています。よかったらお気に入りユーザー登録をよろしくお願いします。

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