お嬢様喧嘩します!ーあ、俺のせいかな?ー

 環は録音したものを相馬と摩耶に聞かせる。

「本音は戻りたくない、そして兄に見返すためか」

「奈々ちゃんにはそれなりの考えがあるわけだね、けどやっぱお兄ちゃんの存在が強いと」

「お兄様を見返すため……けどそれは財閥的にマズイ気がします」

「と、言うと?」

「もし仮に奈々ちゃんがお兄様を見返す結果が出たとなれば財閥的に跡継ぎが問題になります」

「え?そこまで揺らぐものなの?」

「場合によりますが元は奈々ちゃんの財閥状況は他とは違い跡継ぎがきまっているお兄様の一存だけで動いています、もしそこに兄妹による対立や跡継ぎ交代が起きた場合かなり問題になります」

「んーでもそれはあくまで家族の問題だからさ跡継ぎに関してはまた別で考えればいいんじゃないか?それに奈々はあまり興味なさそうだから身を引きそうだし」

 相馬は奈々の性格とあの時の夏休みみたいな状況からしてそんな跡継ぎはそこまで気にしてないだろうと思っていた。

「私もそう思いました、しかしこの録音から分かるように私を変わったと言いました。ということは奈々ちゃんはまた別の考えを持ち始めています」

「もしかしたら本当に跡継ぎを狙っているのかもしれないということか」

「はい」

 ますますどうすればいいか分からず頭を抱える相馬。

「やっぱ兄貴と話し合った方が早いんじゃね?」

 相馬の一言に摩耶は小さく頷く。

「私も思いました、今回の一件は私の責任でもあると思います、そこを謝り奈々ちゃんのことを許して優しくしてほしいと思います」

 相馬と摩耶は同じ考えだった、しかし環は酒を冷蔵庫から出して割り込む。

「でもさぁ、お兄様と話すたってどうやって会うの?」

「私のお父様とお母様に取り合います」

「んー多分そこまでは行くと思うよ、ただ聞いた限りだとそのお兄ちゃんは多忙ということよね。私は教師をしてるから分かるけど多忙なほど必要最低限なことにしか耳を傾けないと思うよ」

「それもそっか……じゃあどうするか」

「やっぱり奈々ちゃん自身に任せるしかないのかな」

「そうとも限らないよ、仕事をきっちりこなすタイプの人間は絶対に外せない用事でも必ず出席する」

「あっ、財閥会のパーティー」

「しかないんじゃない?その財閥会はおそらくだけど現財閥と次に任せる財閥の跡継ぎが顔合わせとかするからそのお兄ちゃんは出てこざるえないと思うからそこしかないんじゃない?」

 まさか環から名案が出てきたことに驚く相馬。

「すげぇ、なんかいつもと違う環じゃん、どうしたの?どうやって調べたの?」

「ggrks」

「は?」

「今のネットはいいものよ、そこをちゃんと使わないと、あー世間知らずならまだしもウチの生徒ならすぐに使うわよ」

「くっ……」

 嘲笑う環を見て悔しがる相馬に一体なんの事か疑問に思った摩耶は環の言葉『ggrks』を調べようとするが相馬は止め静かに首を横に振った。

 そんな環の名案によってまた新たな計画が生まれ次は奈々の兄である真司と話し合うことが決まった。

 そして摩耶を家に返す帰り道で摩耶は相馬にお礼を言う。

「改めてありがとうございます」

「いや今回は環にお礼を言うといいよ」

「はい、あとでお礼を言いに行きます、今回は先に寝てしまいましたから言いそびれてしまいました」

「いつもあんな感じだよ、本当」

「ふふ、私本当に相馬さんのことが好きになってよかったです」

「よくそんな恥ずかしいセリフが淡々と言えるな、別に嫌ではないが当然だと思うぞ」

「そうなんですか?私は相馬さんしか見てなかったので他の人は分からないです」

「うぅん……そのセリフは刺さる」

 普通では中々言い出せないセリフを簡単に言いさらには笑顔とセットでさすがの相馬も突き刺さり倒れそうになるがなんとか耐える。

「去年は私と色々とありましたが今年は奈々ちゃんと色々と忙しいですね、奈々ちゃんは大変でちょっと不謹慎ですが私は少し楽しいです」

「俺は去年大変だったけどな」

「あっ、そうでしたね」

「でもまぁ奈々に関しては摩耶一人で悩むことじゃない。奈々も悩んでると同時に俺や環がいる。だから大丈夫だ」

「はい。必ず奈々ちゃんと一緒に卒業しましょう」

「そうだな」

 相馬は摩耶のやる気を見て本当に仲がいいことを知り俄然と摩耶を悲しませる結果にはしないように決意した。

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箱入りお嬢様恋愛を始めます!ーお嬢様、大丈夫ですか?ー 水無月 深夜 @Minazuki1379

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