第九話 仕合結果レビュー
二人の口撃に『芳文(文由)』には反撃の余地は無い。
まずは『芳文』に罵倒を浴びせる『ゆい』のローキックが炸裂。
「私の事をお店でいつも鼻の下を伸ばして指名するくせに、こんな可愛い彼女の口説き方なんて相談して。何なのよ!」
「え~!そういうお店なんじゃないの?」
「何よ!今更。そういう店ってどういう意味よ!」
「いや、別に変な意味じゃなくて」
「変な意味も何も無いわよ。馬鹿にしないで!」
「えー!そんなぁ!」
お次は『まい(将人)』の攻撃。《口撃》による重い「ボディブロー」が炸裂。
「どういうことですか?よくわかりませんけど」
「俺もよくわからないよ!」
「っていうか、この女の人誰なんですか?お店って何?」
知ってるくせに『まい』の迫真の捨て台詞が『芳文』の横っ腹に地味に効いてきた。コンビニの観客もざわついている。
「いや、違うんだよ、『まい』ちゃん。ほら、お店って言っても色々あるじゃんか」
「だから、どんなです、かーーーーー!」
出た!必殺技、鼓膜クラッシュ!一気に仕合のケリをつける『まい』。 耳元への大声で『芳文』を粉砕。もう彼は立ち上がれない。
「ごめん!俺が全部悪かった。許してください!」
「姉貴?どうするよ、この後」
「どうしょっか」
「ゆい」は、にやつきながら崩れ落ちている『芳文』を見下しながら言う。
「『芳文』さんごめんなさいね。ネタばらしするわ」
「え?」
「実はね、この『まい』は男で、私の双子の弟なの。そんで『まい』ってのはLIKEの私の裏垢なの」
「え、そうなの?」
「そうですよ。『文由』さん」
将人は太い声で、サッカー歴の証であるいい感じのふくらはぎを披露する。
「すごいね」
「そうでしょ?」
「顔とかはやっぱり『ゆい』ちゃんにそっくりだね」
「ありがとうございます。流石に女装してるので」
「すごいのよ?ここに来るまで。みんな将人を二度見よ?」
「そりゃ、そうだろう。俺だって本屋で初めて会ったとき時、驚いたもん。かわいくて」
「何か妬けるわね、微妙に」
「複雑だね。世の中」
あははは、と三人の笑い声が周囲に大きく響いた。
「じゃぁ、罰として『Q』へ来店時は二人同時指名する事。次回以降、料金は倍ね!」
「え、何?それって俺が女装でキャバで働くっつーこと?」
将人には寝耳に水である。
「そうよ。今度お店に頼んでおくから。それが今回のギャランティね」
「えー!」
とどのつまり、いくら束で掛かっても男は女には叶わない「いきもの」ものと言う事である。
ゆいとまいのお仕置き道中 イノベーションはストレンジャーのお仕事 @t-satoh_20190317
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