Digest of Japari Stage

とがめ山(てまり)

"はじめまして"

「みんな、新しいフレンズを紹介するで!」


クロヒョウの言葉に、アカデミーのオープニングセレモニーに出席していたフレンズ達が振り返った。


新しいその鳥のフレンズは、ふわりとステージに着地すると、その顔を上げた。

パークの危機を乗り越えたフレンズ達と、その目が合った。

「初めまして。ケツァールです」


* * *


私は、目の前で起きていることが信じられなかった。

私の大好きなあの子が、ちゃんとお別れを言うことができたあの子が、最後に私に見せてくれた格好の女の子が。

今目の前にいる。


思わず飛びつきたくなる気持ちを抑えて、ステージにつながる階段を上がっていく。


――フレンズはサンドスターの噴火によって生まれるんだ。今目の前にいるあの子が、さっちゃんではないんだ。さっちゃんには、ちゃんとお別れを言うことができたじゃないか。


それでも、舞台の上に佇む彼女と向き合ったときに。

あの子の衣装がそのままサンドスターを浴びたかのような、彼女の顔を見たときに。


また会えた、と思った。

あの子に会えたわけではない。そんな機会は、二度とやってこない。

あの子がこの世界に遺したものに。この世界に、この星に刻んだ記憶の欠片に。

巡り会えたのだ。


はじめまして、といって自分の手を差し出す。

私たちは、きっとどこかで、ずっとつながっているという祈りを込めて。


* * *


その子を見たとき、私はその子を知っているような気がした。


この世界に生まれたばかりで、何も分からないはずなのに。

目に涙を浮かべたその子の、その人懐っこい顔を、その髪の手触りを。

生まれたてでこんなことを言うのはおかしいけれど――”覚えている”気がした。


「初めまして。私はシベリアハスキーです」 と彼女が言って、手を差し出す。


差し出された手を、握り返す。

その手は柔らかくて、どこか懐かしくて、優しかった。


何も知らない世界だけど、この手の温かさを忘れない限り、この人たちと一緒に生きていけると思った。


* * *


はるか遠い未来、小さな星の誰も証言者のいない世界で、小さな奇跡が起きた。

星は回り、誰も知らない宇宙のどこかへと、彼女たちを運んでいく。


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