『ローガン』(老眼)

やましん(テンパー)

『ローガン』(老眼)

【これは、すべて、フィクションであります。一部、歴史的事実に基づく記述があります。】




 くそ、字が読めない。


 めがねがない。


 財布の行方がわからない。


『おい、じいさん。まだかよう。早く払え、ばーか❗』


『くそ、青二才にも届かぬ青一才め。くそ、メガネは、どこか? 財布もないぞ。』


『あのう、後ろ、並んでるので、見つかったら、声かけてくださーい。はい、次の方あ。もう、お待たせしましたあ❗🎶』


『あ、あた、あや、こりは、個人カードとかの入れものだ。財布の本体がない? あり、こりは、古い財布だた。くそ。メガネは、いずこ? あ。ああ、1000円あた。あのう、すいません。これで、たのんます。』


『はいはい、あらあ、読めないの、うち、完全キャッシュレスです。カードないですか?カード?スマホは?』


『か、カード? ・・・クレジットカードなら、あるけど。使いたくないなあ。』


『現金不可ですよ。『プイプイ』とか、『うちゃうちゃ』とか、ないですか?』


『プイ・・・・チチン・プイプイか?』


「はあ?あ、いいです。またどうぞ。』


『くそ、バカにするなあ。かつては、すこしもじったが、ショスタコーヴィチ先生の『第7交響曲』にも援用された、由緒ある言葉であるぞ。まあ、きみたちには、わかるまいが。くそ、聞いてもいないか、もう。シャンプー1個買うのに、何がカードだよな。しょがない。おとなり、行こ。このあたりは、もう、年寄りの歩く場所じゃあないなあ。カードなんか、使いたくもないし。あ、なんと、シャンプー・ショップ、とな。』



・・・・・・・・・・・・・・・・・・


『あ、これ、くださーい。』


『はい。55,000円です。カード払いです。』


『え? 550円じゃない? ありり、読めなかったかあ。』


『うちは、高級輸入シャンプー専門店でございまして。こちらは、フランスからの最新のお品でございます。』


『あ。シャンプーの店って、かいてたから。小さい字は、よくわからなかた。ちょっと、年寄りには、おたかすぎる。すいません。また。』


『ありがとうございます。またどうぞ。』


 ………『くすくす、じいさん来るお店では、ございませんですよね。はははは。』


 『あい。ははははははははははははははははははははははははは・・・・・』



『くそ、勝手に言ってろ。』



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



『シャンプー買うのに、なんで、こんなにも、苦労するの? 嫁さんいなくなって、こまったな。またく、やつら、何、考えてる? やっぱ、裏道にゆこ。』


 ・・・・・裏道のお店。いささか古風である。

    


『ああ、この、シャンプーください。こんどは、慎重に、確認した。馴染みのがあった、よかった。めがねが、まだ、見つからないが。どうなってる、このずだ袋は。あ、ぷいぷいとか、うきゃうきゃはないですよ。お金で、お願いいたします。』


『はいはい。うちは、現金歓迎。ああ、これ、よかったですね。もう、これで生産停止だとか。』


『え。おしまい?』


『もう、年配の方以外は、使わないとかで・・・お金も廃止とかですしねぇ。』


『はあ・・・・・世が世だからなあ。』


 たまたま、やって来た、おばあさんが言った。


『あらあ、閣下じゃございませんの。まあ、よくここまでお出かけ。』


『あらあ、うらの八百屋のおばちゃん。いつのまにかいなくなってさあ。どうしてたの。』


『閣下って、・・・・どなた?』


『ああ、あなた、まだお若いからねぇ。ほら、関東共和国の、むかしの大統領さんだよ。1年で首になったけど。へそまがりの、むつかしいおじさんでさあ。』


『おばちゃん、それは、間違いでなったんだから、言わないでくださいよ。』


『ほほほほ。まあ、人違いで大統領になったのは、あなただけだもの。でもね。なんかさあ、100歳以上は、表通りには出てはならないとか言う大統領令がでるとかって、ほんと?』


『ああ、それか。うん。そうらしいな。なんでも、表通りの美化の一環だとか。表向きは、老人保護だが。あ、これ、オフレコね。あ、ここなら、いいか。またく、くそばかな連中だ。何考えてるんだか。しかし、おれの意見なんか聞かないよ。最近、移住しろって、うるさくてね。あ、あったあ、やった。やっと、老眼鏡発見!』


『なんだい、それがなかったので、いらついてたのかい?』


『いやあ、おばちゃんには、歯が立たないや。おばちゃん、いくつになったの?』


『うん。まあ、レディーに歳なんか聞くもんじゃないよ。まあ、115だけどね、あんたは?閣下?』


『109だよ。まあ、特例で、移住は逃れてきたが。まあ、もう、疲れた。ご意見番ったって。文句言っても、なんにも聞きゃあしない。まあ、も、あきらめだよ。やめよと思うんだ、今月でね。』


『それがいいよ。あたしも、文芸評論家とか言って、八百屋を隠れ蓑にしてたのにねぇ、八百屋は売れないから、いつわりのような形で、ここに越してきてさ。でも、限界だね。本が出なくなったのだもの。』


『ああ。まったくだ。《老眼もてども、身は崩さず。》と思ったが、もう、限界だなあ。』


 突然、そこに、男が、乱入してきたのである!!

 

『くおら~~~~~、ありカード全部出せ~~~~~~! おらあ。ぶったぎるぜぇ!』


『きゃあ!! 強盗!!』


『ばっかやろう!!・・・・・・・・ぐわ~~~~~~~ん!』


『うわ。閣下強い。一発で、のしちゃったわ!』


『これでも、ロウガン(老眼)さまだ。』


『意味不明な・・・・・・』


   ::::::警官現る******


『どどどど、どうしましたか?』


『強盗よ。捕まえた。ほら。』


『おう、こやつは、最近このあたりを荒らしていた、『はやての権蔵』ではないですか! かなりの使い手ですが、どうやって?』


『閣下が、一発で仕留めた。あんたたち、まだ、修行が足りないねぇ。』


『閣下? この、おじいさん?』


『はっはははははは、いい、いい、君の手柄だ。じゃあ、おばちゃん、元気でな。もしかしたら、収容所で会うかも。』


『ああ、そうさね。閣下も、無理なく、生きなさい。』


『ダンケ!』



 第5代関東共和国大統領は、その半年後、肺炎をこじらせて、他界した。


 デジタルニュースでは、2行の訃報が出た。


 その半年後、一般の現金購買は、原則廃止となった。




  *************** 👓         おしまい




 







 










 
































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