第三章

転生準備

朝、出発の準備を始めた僕達の前に突然【魔女】が現れた。


魔女の方から僕達に会いに来るなんて……。


警戒し、すぐに武器を錬成出来るように準備をした。罠の可能性が大。


「そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ。私は、ナツ様に会いに来ただけです」


ナツを知っているのか?


「ナツの知り合い?」


「ごめんね、サトル。魔女のこと、今まで隠してて」


「いや、まぁ。黙っていた理由は、後で聞くよ。そんなことより。あの……じゃあ、早速なんですが。ナツの呪いをといてくれませんか? ゾンビ化が止まらないんです」


「無理!」


「えっ!?」


「無理! 無理! 無理! 無理!」


「えぇ!?」


「無理! 無理! 無っ」


「なんで無理なんですかっ!! 魔法で呪いはとけるはずでしょ?」


僕は魔女に近寄り、両手を振りながら抗議した。


「そこにいるアンナは、普通の魔物じゃないよ。賢い人間が死ぬほど研究して造り出した生物兵器……。この呪いは、魔法対策を施してるし、下手なことするとナツ様の体が粉々になって再生出来なくなる危険がある」


ナツを見た。アンナの柔らかい髪を優しく撫でている。その目からは、不安は感じなかった。


最初から、治せないこと。分かっていたのか……。 だから、言わなかった。



「………大丈夫だよ。僕が何とかするから」


「また人を殺すの? 私の為に」


「………」


「もうサトルには、人を殺してほしくない。だからさ、もう終わりにしよ」



終わり?


終わりって何だよ。目眩がする。気持ちが悪い。



僕は、出発の準備を再開した。新しい魔女を探す為に。


「さぁ、行こう。ナツを治せるもっと上級な魔女を探しに」


足元にあった枯れ枝がビクッと震え、すぐに枝は大蛇に姿を変え、僕の体に巻き付いた。


鬼の形相で睨む魔女。


「この世に私ほど優れた魔女はいない。 ふざけたこと言ってると絞め殺しますよ?」


「やめてっ!」


ナツが、魔女の前に立ち……。


声を殺して、泣いていた。



…………………………。

…………………。

……………。


僕は、しばらく何も考えることが出来ず、ただただ青い空を見ていた。


……………………………。

……………………。

……………。



数時間後ーーーーー



魔女は口を開いた。


「一つだけ、助かる方法があります」


ナツも予想外だったのだろう。目を丸くして、この若い魔女を見ていた。


「異世界に『転生』すれば良いんです。新しい体。新しい世界でやり直せばいいんです」


「てんせい? それって、具体的にどうやれば良いの? ナタリ」


「この方法は、私一人では無理だったんです。でも今は、この場に錬金術師がいる。しかも世界最高の」


あまり嬉しくないな。なぜかは分からないけど。


「まず私が、お嬢様と他二人を今から殺します。この大鎌で」


どこから出したのか。巨大な鎌を左手に持っていた。離れていても分かる。その邪悪さ。


「この鎌で首をちょん切ると異世界に転生出来るんです。新しい体に生まれ変われるので、ゾンビの呪いからは解放されると…………思います」


最後、やけに声が小さくなった。

自信はないんだな。それほど、難易度が高い魔法。


「問題は、転生するとそれ以前の記憶がすべて無くなることだったんです。ですが、それは、ここにいる坊やに何とかしてもらいましょう」


確かに、記憶だけなら何とか出来る。

僕は、記憶を錬金術で『具現化』することが出来たから。新しい『器』に乗り移る時と基本的に一緒。




①僕がナツ、アンナの記憶を抽出して具現化する。最後に自分。


②この魔女が、僕達三人の首をはねる。(転生)


③頃合いを見て、魔女が僕達三人の『体』を再びこの世界に呼び戻す。


④体に『記憶』をインプット!



とっても簡単だ。



「転生先は、私の独断と偏見で選びますから」


首と体がセパレートした僕達に向かって、魔女は呟いた。魔女の首には、僕達の記憶が入ったペンダントが3つ、新雪のようにキラキラと輝いていた。

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