第3話居場所

1年の7月に入って、負けて引退する3年の6月まで、僕は、バスケ部に居座った。僕がコートにいるときは、下手ゆえに死亡フラグが立っていると揶揄されようが、僕は、コートに立ち続けた。そこには、いつも、T 先輩みたいになりという強い思いがあったからだ。その甲斐があってか、最後の試合も、得点こそ挙げるこはできなかったが、出場する機会を得た。チームのメンバーとは、合わない、合わないと心の奥底で思いながらも順応していく術を身につけた。僕は、中学校までは、好きなアーティストを言う事すらも恥ずしがるような、シャイでねくらな人間だったように思う。ハンドボール部を辞めてしまった理由の1つに人間関係が上手くいかなかったこともあったように思う。バスケ部に入り、自分に自信がもてるようになった。もうそこには、床に涙を濡らした僕はいない。転々と部活を変え、自暴自棄になっていたあの頃とは違う。いつしか、クラスで話題の中心にいた。こないだ、ポケモンの性格診断をやった。僕は、どうやら、ピッピによく似ていて、人によく愛されるらしい。昔じゃ、考えられない。後輩の八木君がバスケ部を去り何故僕が何故睨み付けたのか。その問いに戻ろう。まず、名前すら、うろ覚えだったから、さして彼自身に興味はなかったのだろう。しかし、彼は、一発でバスケ部にいたことがあることはわかった。僕が考える理由はこうだ。僕は、部活を転々とした。それ故、誰よりも縄張り意識みたいものが強くなってしまった。言い換えれば、バスケ部という居場所を必死に守ったという小さなプライドからかもしれない。そんな、八木君の僕に返す眼差しの先にも何らかの強い思いが潜んでいるように感じた。10秒という短い間の視線のやりとり。かつての居場所。今、それは変わり、僕は、居場所を探している。八木君も、見つかったかもしれない。でも、あの頃必死で練習したバスケ部の「居場所」は僕のものだ。そう八木君に言いたかったのかもしれない。








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眼差し カネコ @kaneko_1

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