范泰6  賀正の奏上   

425 年、正月の祝賀の辞を述べる際、

併せて近年の日照りについても語った。


「改元がなされ、

 物事が刷新されております。

 陛下は日々徳を積まれ、

 吉祥百福をお招きでおられるご様子。


 しかしながらいま市井では

 干ばつの害が甚だしく、

 日差しは苛烈、川も井戸もかれ、

 年寄りや幼いものでは

 遠くに水を汲みに行くことも叶わず、

 貧者も困窮のため

 水を得づらくなっております。


 加えて彼らの身にのしかかる税は

 軽くなってはおりません。

 人々は怨嗟を抱え始めております。


 臣も齢七十を越えましたが、

 これだけの惨状は、

 はじめて目の当たりといたします。


 これは陰陽の乱れによる

 ものなのではございますまいか。


 無論我々がどんなに祈ったところで、

 天のおぼしめしなど

 察せられようはずもございません。


 とは申せど、かんの時代。

 東海とうかいの人が孝婦を殺したとき、

 三年間の日照りがございました。

 そこで妻の墓を祀ったところ、

 雨が降り始めた、

 という故事がございます。


 春秋にも、えいの人が

 無道の起こっていたけいを討伐すると

 雨が降り始めた、

 という故事がございます。


 どうか、陛下に於かれましては、

 この事態について、

 重くご検討願いますよう。

 災いが続いているということは、

 どこかに国を脅かす

 元凶があるのでございます。


 王は百姓の罪を引き受け、

 いんとう王は各地の罪を自らが負い、

 殷王の太戊たいぼは農業の奨励を徳とし、

 宋景そうけいは火星の動きから身を慎みました。

 みな過ちより教訓を得、

 功績へとつなげた事例です。


 市井の者ものが苦しんでおる姿を

 ぜひとも、お気に掛け下さい。

 彼らを導くことで、

 国家はますます栄えましょう。


 臣の病は日を追うごとに篤く、

 夜に寝て、明日の朝に

 目覚められるかすら

 わからぬありさま。

 まして来年の慶賀なぞ、

 どうして参列できると

 考えられましょう。


 なので、この微才をわきまえず、

 死後の悔いを残さぬように、と、

 陛下との永遠のお別れの前に、

 その悲しみを

 表明致しました次第にございます」


などと言いながら范泰、後日には

東陽での舟遊びをしていた。

朝廷のことなぞまるで

気にかける様子もない。


いやいや、なんだそりゃおかしいだろ。

あるものが范泰の振る舞いを糾弾したが、

劉義隆りゅうぎりゅうはお咎めなしとした。




元嘉二年,表賀元正,并陳旱災,曰:元正改律,品物惟新。陛下藉日新以畜德,仰乾元以履祚,吉祥集室,百福來庭。頃旱魃為虐,亢陽愆度,通川燥流,異井同竭。老弱不堪遠汲,貧寡單於負水。租輸既重,賦稅無降,百姓怨咨。臣年過七十,未見此旱。陰陽并隔,則和氣不交,豈惟凶荒,必生疾疫,其為憂虞,不可備序。雩禜之典,以誠會事,巫祝常祈,罕能有感,上天之譴,不可不察。漢東海枉殺孝婦,亢旱三年,及祭其墓,澍雨立降,歲以有年。是以衞人伐邢,師興而雨。伏願陛下式遵遠猷,思隆高構,推忠恕之愛,矜寃枉之獄,遊心下民之瘼,厝思幽冥之紀。令謗木豎闕,諫鼓鳴朝,察芻牧之言,總統御之要。如此,則苞桑可繫,危幾無兆。斯而災害不消,未之有也。故夏禹引百姓之罪,殷湯甘萬方之過,太戊資桑穀以進德,宋景藉熒惑以修善,斯皆因敗以轉成,往事之昭晰也。循末俗者難為風,就正路者易為雅。臣疾患日篤,夕不謀朝,會及歲慶,得一聞達,微誠少亮,無恨泉壤,永違聖顏,拜表悲咽。

遂輕舟遊東陽,任心行止,不關朝廷。有司劾奏之,太祖不問也。


(宋書60-6_規箴)




なんだこのじじいwwwwww


……と言いたいところではあるんですが、この上申、だいぶ「徐羨之どもを好きにさせてるから干ばつとかがおこっとんのやで、わかっとんのか、おん?」みたいなニュアンスも混ぜ込んでますね。でなきゃわちゃわちゃしたエリアに派兵したら雨が降った、みたいな事例を引き合いにするはずがない。


殷王の太戊、および宋景がちょっとよくわかんない感じでした。まぁ途中さっぱり文意が取れないところとかもありましたが。なんにせよ、范泰の奏上はやっぱり情報の山っぽいですね。

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