孔琳之2 貨幣に関する議論
貨幣を廃止し、米や布での取引を
復活させるべきだ、
と言う議論が起こった。
これに対し、
「政はまず貨幣にて回され、
また交易においても不可欠なものです。
これを用いずにおれましょうか。
古の聖王が流通以外に用いようのない
貨幣を制定することにより、
物資の流通に用いたのは、
いわゆる物々交換では、
様々なコスト、ロスが発生することを
恐れてのことでした。
ゆえに龜の甲羅や貝などを
貨幣のように運用し、
のちに貨幣そのものが生まれ、
以後、貨幣は
廃止されたことがありません。
穀物は布は、まさしく宝であり、
そのものが衣食を提供いたします。
それらを貨幣のように用いよう、
と言うのであれば、
発生するロスは甚大となりましょう。
また、いわゆる商店における取引も
非常に煩瑣なものとなります。
また貨幣として蓄えた穀物が腐り、
布地が破れるなどのトラブルも、
看過できるものではございますまい。
更に、こたびの議論については、
三国
詐欺師は穀物をふやかしてかさを上げ、
生地を薄くして面積を広げ、
暴利をむさぼるのだ、と。
貨幣の代わりとして用いようとした時、
鍾繇の言葉のような詐欺が横行。
いくら厳罰を盛って取り締まっても、
禁じ切ることができませんでした。
そこで
貨幣は国を豊かにするわけではない。
処罰を減らすにすぎないのだ、と。
今、ここで既に行き渡っているものを
突然廃止すれば、
民間には大混乱が生じるでしょう。
また貨幣をたくさん抱え、
食料を持っていない人は
いかにいたしましょう?
飢え死にさせておけ、
とでも申すのですか?
それでもなお、
同じように貨幣を四十年間ほど
撤廃していたことがございました。
それによって生じた不便は
すさまじかったようでございます。
それで識者たちの議論の末、
やはり貨幣を用いる方がマシだ、
と結論づけられました。
弊害があまりに大きいと
わかっていることを、
敢えてお試しになるのですか?」
桓玄時議欲廢錢用穀帛,琳之議曰:「洪範八政,以貨次食,豈不以交易之所資,為用之至要者乎。故聖王制無用之貨,以通有用之財,既無毀敗之費,又省難運之苦,此錢所以嗣功龜貝,歷代不廢者也。穀帛為寶,本充衣食,今分以為貨,則致損甚多,又勞煩于商販之手,耗棄於割截之用,此之為弊,著於自曩。故鍾繇曰:「巧偽之人,競濕穀以要利,制薄絹以充資。」魏世制以嚴刑,弗能禁也。是以司馬芝以為「用錢非徒豐國,亦所以省刑」。今既用而廢之,則百姓頓亡其利,是有錢無糧之人,皆坐而饑困,此斷之之弊也。魏明帝時,錢廢穀用四十年矣,以不便於人,乃舉朝大議,精才達政之士,莫不以為宜復用錢。彼尚舍穀帛而用錢,足以明穀帛之弊著於已試也。」
(南史27-7_政事)
宋書だともっと長かった(※)んだけど、あんまりにも長すぎて死にそうだったので南史にあった概要を引っ張ってきました。ちなみにこの孔琳之の発言のもととなったのは、通典にある、この議論のようです。
魏文帝黃初二年,罷五銖錢,使百姓以穀帛為市買。至明帝代,錢廢穀用既久,人閒巧偽漸多,競溼穀以要利,作薄絹以為市。雖處以嚴刑,而不能禁也。司馬芝等舉朝大議,以為用錢非徒豐國,亦所以省刑,今若更鑄五銖,於事為便。帝乃更立五銖錢,至晉用之,不聞有所改創。
つーかこの議論に鍾繇いない気がするんですけど? 出てくるのはむしろ次の肉刑に関する議論なんですよね。孔琳之か、あるいは当時の史料に何らかの混乱が生じてたんでしょうか。
※こっちが宋書の原文。しぬ。
洪範八政,以貨次食,豈不以交易之所資,為用之至要者乎。若使不以交易,百姓用力於為錢,則是妨其為生之業,禁之可也。今農自務穀,工自務器,四民各肄其業,何嘗致勤於錢。故聖王制無用之貨,以通有用之財,既無毀敗之費,又省運置之苦,此錢所以嗣功龜貝,歷代不廢者也。穀帛為寶,本充衣食,今分以為貨,則致損甚多。又勞毀於商販之手,耗棄於割截之用,此之為敝,著於自曩。故鍾繇曰:『巧偽之民,競蘊濕穀以要利,制薄絹以充資。』魏世制以嚴刑,弗能禁也。是以司馬芝以為用錢非徒豐國,亦所以省刑。錢之不用,由於兵亂積久,自至於廢,有由而然,漢末是也。今既用而廢之,則百姓頓亡其財。今括囊天下之穀,以周天下之食,或倉庾充衍,或糧靡斗儲,以相資通,則貧者仰富,致之之道,實假於錢。一朝斷之,便為棄物,是有錢無糧之民,皆坐而饑困,此斷錢之立敝也。且據今用錢之處不為貧,用穀之處不為富。又民習來久,革之必惑。語曰:『利不百,不易業。』況又錢便於穀邪?魏明帝時,錢廢穀用,三十年矣。以不便於民,乃舉朝大議。精才達治之士,莫不以為宜復用錢,民無異情,朝無異論。彼尚舍穀帛而用錢,足以明穀帛之弊,著於已試。世或謂魏氏不用錢久,積累巨萬,故欲行之,利公富國。斯殆不然。昔晉文後舅犯之謀,而先成季之信,以為雖有一時之勳,不如萬世之益。于時名賢在列,君子盈朝,大謀天下之利害,將定經國之要術。若穀實便錢,義不昧當時之近利,而廢永用之通業,斷可知矣。斯實由困而思革,改而更張耳。近孝武之末,天下無事,時和年豐,百姓樂業,便自穀帛殷阜,幾乎家給人足,驗之事實,錢又不妨民也。頃兵革屢興,荒饉荐及,飢寒未振,實此之由。公既援而拯之,大革視聽,弘敦本之教,明廣農之科,敬授民時,各順其業,遊蕩知反,務末自休,固以南畝競力,野無遺壤矣。於是以往,升平必至,何衣食之足卹。愚謂救弊之術,無取於廢錢。
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