謝方明4 囚人解放    

劉道憐りゅうどうれんの副官として配属された。

劉道憐であるから、

もろもろの決済事は

だいたい謝方明しゃほうめいの仕事になった。

京口けいこうで勤務。

劉道憐が江陵に移ると、

謝方明も移動する。


ある年末、江陵こうりょうの牢獄に繋がれていた

囚人たちを一時解放、里帰りを許した。

ただし三日には戻って来い、と命令。


対象となった囚人は二十名ほど。

府内の者らは当然ビビりまくりである。


京口時代に謝方明の下で働いていた

弘季盛こうきせい徐壽之じょじゅしは謝方明に従い

江陵入りしていたのだが、


この話を聞き、大いに諌止する。


「昔の人がそのようなことをした、

 と、確かに残っております!

 ですがそれは、

 話を盛っているのでしょう!


 だいたい、今の人間の人情は

 信頼に値するのでしょうか!


 昔のことを引き合いに出したところで、

 意味はございますまい!」


が、謝方明。引き下がらない。

特に議論も重ねず、囚人らを解放。


この措置に対し囚人とその家族らは

みな大いに驚き、喜び、泣いた。


「このような措置を頂けたのであれば、

 もはや殺されても恨みますまい!」


とまで言い出してくるものも

あらわれたほどだ。


そして、一月三日。

十八人が戻り、二人は行方不明。

捕獲に出ましょうか、

と聞いてくる部下に対し、

謝方明、許可を出さない。


囚人のうち一人は

酒に酔いつぶれていたため、

一月五日には戻ってきた。


もう一人は

一月十三日になっても戻って来ない。

そこで部下の朱千期しゅせんき

探索及び討伐を申し出る。


だが、謝方明のもとにはその囚人が

どのようなことをしているのかの

情報も入ってきていたようだ。

朱千期の申し出を退ける。


その囚人だが、故郷に出たあと、

牢に戻るべきか戻らざるべきかを

迷っていたようだった。


故郷の者たちはそんな囚人を責め、

ついには彼を江陵に送り返す。


こうして、

謝方明が解放した囚人のうち、

逃亡者はゼロと言う結果に。

この結果には、皆々が感嘆した。


やがて、母が死亡。

喪に服すために職を去り、

そして喪が明けた三年後には、

晋国中の宋国の事務官として

改めて取り立てられた。




頃之,轉從事中郎,仍為左將軍道憐長史,高祖命府內眾事,皆諮決之。隨府轉中軍長史。尋更加晉陵太守,復為驃騎長史、南郡相,委任如初。嘗年終,江陵縣獄囚事無輕重,悉散聽歸家,使過正三日還到。罪應入重者有二十餘人,綱紀以下,莫不疑懼。時晉陵郡送故主簿弘季盛、徐壽之並隨在西,固諫以為:「昔人雖有其事,或是記籍過言。且當今民情偽薄,不可以古義相許。」方明不納,一時遣之。囚及父兄皆驚喜涕泣,以為就死無恨。至期,有重罪二人不還,方明不聽討捕。其一人醉不能歸,逮二日乃反,餘一囚十日不至,五官朱千期請見欲自討之,方明知為囚事,使左右謝五官不須入,囚自當反。囚逡巡墟里,不能自歸,鄉村責讓之,率領將送,遂竟無逃亡者。遠近咸歎服焉。遭母憂,去職。服闋,為宋臺尚書吏部郎。


之の頃、從事中郎に轉じ、仍いで左將軍道憐が長史と為り、高祖は府內眾事を命じ、皆な諮りて之を決む。府に隨いて中軍長史に轉ず。尋いで更に晉陵太守を加えられ、復た驃騎長史、南郡相と為り、委任せること初の如し。嘗て年の終わりたるに、江陵縣の獄囚の事に輕重無く、悉く散じ家に歸せるを聽さば、正三日を過るに還到せしめんとす。罪に應じ重に入りたる者は二十餘人有り、綱紀以下に疑い懼れざる莫し。時の晉陵郡の送故主簿の弘季盛、徐壽之は並べて隨いて西に在り、固諫し以て為えらく:「昔の人は其の事有りと雖も、或いは是れ過言を記籍す。且つ當に今の民情は偽薄にして、古義を以て相い許すべからず」と。方明は納めず、一時にして之を遣る。囚、及び父兄は皆な驚き喜びて涕泣し、以て死に就けど恨みたる無きを為す。期の至れるに、重罪の二人に還らざる有れど、方明は討捕を聽さず。其の一人は醉いて歸す能わず、二日に逮びて乃ち反り、餘の一囚は十日にして至らざれば、五官の朱千期は請見し自ら之を討たんと欲せど、方明は囚たるの事を知らば、左右をして五官に謝し入るを須さざるに、囚は自ら當に反ず。囚は墟里にて逡巡し、自ら歸す能わざれば、鄉村は之を責讓し、率領し將に送らんとせば、遂に逃亡者は無きに竟る。遠近は咸な歎服したり。母が憂に遭い、職を去る。服の闋ぜるに、宋臺尚書吏部郎と為る。


(宋書53-10_政事)




これ二人目の囚人については、さすがに内心で焦ってたんじゃないすかねwwwwwwそれにしても相変わらず表現が難しい。

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