謝純   劉毅に殉ず   

謝純しゃじゅん



謝裕しゃゆうの二人の弟が立伝されている。

まずは上の弟、謝純。字は景懋けいぼう


かれは劉毅りゅうきの下に配属となった。

有能であったからか、

あるいは陳郡ちんぐん謝氏だからか。

劉毅りゅうき江陵こうりょうに出た時、

その副官にまでなった。


そして、王鎮悪おうちんあく襲来。


王鎮悪が城の近くに来ていた時、

折り悪く劉毅は病気にかかっていた。

配下たちはこぞって見舞いに訪れた。


見舞いを終え、

いったん城から退出した謝純だが、

敵襲の報を聞き、すぐに城に戻る。


側仕えたちは謝純の車を引き、

逃げるべきだと進言するのだが、

謝純、これに激怒である。


「私は劉毅様の部下だ!

 ここで逃げて、いったい何を

 望むというのだ!」


そして劉毅の元に戻った。


だが、趨勢はどうしようもない。

劉毅軍、散々に敗退。

兵士たちは散り散りに。


同僚の毛脩之もうしゅうしは、謝純に言う。


「謝純様、

 わたくしと共に参りましょう。


 劉裕りゅうゆう様も悪くは致しますまい」


謝純、毛脩之の申し出も退ける。

そしてついには

王鎮悪軍の兵士に連れ出され、

燃え盛る江陵城を背景に、

殺された。




景仁弟純字景懋,初為劉毅豫州別駕。毅鎮江陵,以為衞軍長史、南平相。王鎮惡率軍襲毅,已至城下,時毅疾病,佐吏皆入參承。純參承畢,已出,聞兵至,馳還入府。左右引車欲還外解,純叱之曰:「我人吏也,逃欲何之!」乃入。及毅兵敗眾散,時已暗夜,司馬毛脩之謂純曰:「君但隨僕。」純不從,扶兩人出,火光中為人所殺。


景仁が弟の純は字を景懋、初に劉毅の豫州別駕と為る。毅の江陵に鎮ぜるに、以て衞軍長史、南平相と為る。王鎮惡の軍を率い毅を襲うに、已に城下に至り、時に毅は疾病せば、佐吏は皆な參承に入る。純は參承を畢え、已に出づるに、兵の至るを聞き、馳せ還りて入府す。左右は車を引きて外解に還ぜるを欲せど、純は之を叱りて曰く:「我れ人吏なり! 逃げて之に何を欲さんか!」と。乃ち入る。毅が兵の敗れ眾の散ぜるに及び、時は已に暗夜にして、司馬の毛脩之は純に謂いて曰く:「君は但だ僕に隨うべし」と。純は從わず、兩人に扶され出で、火光の中にて人に殺さるる所と為る。


(宋書52-11_衰亡)




えっ改めて見ると何このカッコイイ人……


それにしても謝裕、この弟のことをどう思っていたんでしょうね。有力者について「家門を絶やさない」ことを第一にすべきなのが名族の振る舞いとして正しいことではあろうにせよ、毛脩之につきさえすれば死ななくても済んだでしょうに。どうして謝純は劉毅に殉じる道を選んだのだろう。それだけ劉毅に対して思い入れを持っていたということなのか、あるいはそれだけ劉裕謝裕ペアに思うところがあったのか。


続いて載る謝述の列伝を見れば、何かがわかるんでしょうかね。

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