王誕1  清抜なる文才  

王誕おうたん。字は茂世もせい琅邪ろうや臨沂りんし県の人。

いわゆる、琅邪王氏だ。

王導おうどうのひ孫としては、王弘おうこうと同世代だ。

祖父は王恬おうてん。父は王混おうこん


王誕は若い頃から文才を知られていた。

しん孝武帝こうぶていが死んだとき、

その哀悼文を王弘の父、

王珣おうしゅんが書こうとしていたのだが、

上手く締まらない。


王珣、王誕の文才を思い出す。

なので王誕に未完成の哀悼文を

示しつつ、言う。


「ここにあと一句を加えて

 締めたいのだが、どう思う?」


すると王誕、ノータイムで筆を執り、

王珣が書いていた「秋冬代變」の次に

「霜繁廣除 風回高殿」と記した。


王珣、そのスキっとさわやかな

文辞を気に入り、これを採用した。


鄉侯を父より継ぎ、

祕書郎、琅邪王文學、中軍功曹と

遷官した。




王誕字茂世,琅邪臨沂人,太保弘從兄也。祖恬,中軍將軍。父混,太常。誕少有才藻,晉孝武帝崩,從叔尚書令珣為哀策文,久而未就,謂誕曰:「猶少序節物一句。」因出本示誕。誕攬筆便益之,接其「秋冬代變」後云,「霜繁廣除,風回高殿」。珣嗟歎清拔,因而用之。襲爵雉鄉侯,拜祕書郎,琅邪王文學,中軍功曹。


王誕は字を茂世、琅邪の臨沂の人にして太保の弘の從兄なり。祖は恬、中軍將軍。父は混、太常。誕は少きより才藻を有し、晉の孝武帝の崩ずるに、從叔の尚書令の珣は哀策文を為し、久しくして未だ就かざれば、誕に謂いて曰く:「猶お少しく序節の物を一句」と。因りて本を出だし誕に示す。誕は筆を攬りて便ち之を益し、其の「秋冬の代變せる」の後に接して云えらく「霜繁は廣く除かれ、風は高殿を回る」と。珣は清拔なるに嗟歎し、因りて之を用う。雉鄉侯を襲爵し、祕書郎、琅邪王文學、中軍功曹を拜す。


(宋書52-4_為人)




藝文類聚 巻十三に全文が乗ってた。



序文


同軌畢至 百司胥亞

法物夕陳 轀輬夙駕 

親執饋奠 長號永夜

懼鼓刻之遄盡 哀良辰之莫借

悲宮宇之寥廓 痛聖儀之幽化 

夫至德無名 固理絕稱喟

然祝史陳辭 亦臣子所貴

寄窮情於翰墨 庶遺塵之髣彿 

其辭曰 



本文


惟皇作極 五德迭胤 康實復夏 武亦隆晉

亹亹太宗 希夷其韻 鏡之者玄 撫之者順


於穆皇考 嗣徽絕軌 前聖後哲 契合一揆

心去其伐 行遺其美 廢華任誠 捨筌存旨


惟深通志 群方咸秩 惟幾成務 能事斯畢

未若我皇 至則不疾 恢恢天網 疏而莫失


居有以虛 宰多以少 簡則可從 易則不擾

信及豚魚 澤被億兆 湛然司契 坐一八表


園陵既衛 威靈赫赫 子來既構 寢廟弈弈

武曰止戈 戎不極役 文教聿脩 有恥且格


跡有遠邇 感無高深 道之所被 改色革音

皓獸馴苑 素羽栖林 殊柯通理 異蔕同根


方融玄液 陶鑄斯民 雲韶候奏 比屋思淳

積祐莫應 天罰奄臻 太山頹搆 洪瀆竭津

何殃之甚 何酷之殷


自罹旻凶 二氣代變 霜繁廣除 風迴高殿

帷幙空張 肴俎虛薦 極聽無聞 詳視●見


人神道殊 吉凶有禮 龜筮參謀 埏隧告啟

史臣考吉 警者在陛 攀援忪忪 惟兄及弟


龍輿肅以引邁 前騼紛以抗旒

城闕儼以整列 馳道亙以通脩

感平昔之所幸 豈斯路之復由

輓哀唱以翼衡 駟悲鳴而顧輈

違華宇之晰晰 即永夜之悠悠

奉靈櫬而長訣 緬終天而莫收

訴穹蒼以叫踊 洞五內其若抽

儻性命之可贖 甘人百於山丘


茫茫大運 靡始不終 哲王遺世 貴在道融

昭哉我皇 萬代流風 良史式述 德音永隆



なお意味は一切わかりません。

ともあれ、以上の文のうち十六行目、


自罹旻凶 二氣代變 霜繁廣除 風迴高殿


の部分に関する加筆だった、

と言う事らしい。えっどうしてそこに

ノータイムではめ込めるの……。

とりあえず韻踏みの

関係だったのはわかったが。


藝文類聚及び全晋文では

宋書が「秋冬」としているところを

「二気」と書いてある。


ご教授頂いたところでは、平仄が

秋冬代變だと平平仄仄、

二氣代變だと仄仄仄仄になり、

より目立ちやすくなる、

またその内容も概念的にすることで

より「皇帝の偉大さ」をPRしたのでは、

と言う事であった。


うーん、文人列伝に入ると、

平仄を気にかけながら読めると

良さそうですね。


https://jigen.net/kansi/


頼りにしてるぜ!

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