劉遵考  無能の宗室   

劉遵考りゅうじゅんこう劉裕りゅうゆうの親戚だ。

と言って、その続柄は案外遠い。

曽祖父が兄弟同士だった、と言うものだ。

劉裕の曾祖父、劉混りゅうこんの弟。劉淳りゅうじゅん

祖父は劉巖りゅうげん、父は劉涓子りゅうけんしである。


劉裕の率いる軍に幹部として従軍、

盧循ろじゅん討伐の功で鄉侯に封爵された。


後秦こうしん討伐にあたっては

建威將軍、彭城內史に選ばれた。


この頃劉裕の諸子はみな幼く、

宗室といえば劉道憐りゅうどうれんと劉遵考だった。

……つらいな。


長安が平定されると、

并州、

司州の北河ほくが東北とうほく平陽へいよう

北雍州の新平しんぺい安定あんてい

上記エリアの守備総督となり、

輔國將軍、并州刺史、河東かとう太守として

蒲坂ほはんに拠点を構えた。


関中が失陥すると江南に帰還、

游擊將軍、冠軍將軍と遷官した。


恭帝きょうていが玉座から退き、

秣陵宮ばつりょうきゅうに移り住むと、そこの警護役に。


劉裕が即位すると、

これまでの劉遵考の功績をたたえ、

以下のように詔を下している。


「劉遵考は俺の親族として、

 まぁ遠くない間柄だ。

 そう言う間柄のやつが

 全然いなかいから、

 營浦えいほ県侯、食邑五百戶に封じてやる」


また彭城ほうじょうはい二郡太守となった。


423 年には右衞將軍に。

425 年には征虜將軍、淮南太守に。


劉遵考の施政はひどいものだった。

ガンガン民から収奪する。

そのため 428 年には糾弾を受けたが、

劉義隆りゅうぎりゅう、不問とした。

ただし淮南から建康に

戻ってくるようには命じた。


473 年に死亡、82 歳だった。

元公と諡された。


かれに才能は無く、ただ宗室だから、

と言う事で寵遇された。


老齢になってから病を得て、失明した。




遵考,高祖族弟也。曾祖淳,皇曾祖武原令混之弟,官至正員郎。祖巖,海西令。父涓子,彭城內史。遵考始為將軍振武參軍,預討盧循,封鄉侯。自建威將軍、彭城內史隨高祖北伐。時高祖諸子並弱,宗室唯有遵考。長安平定,以督并州司州之北河東北平陽北雍州之新平安定五郡諸軍事、輔國將軍、并州刺史,領河東太守,鎮蒲坂。關中失守,南還,除游擊將軍,遷冠軍將軍。晉帝遜位居秣陵宮,遵考領兵防衞。高祖初即大位,下推恩之詔,曰:「遵考服屬之親,國戚未遠,宗室無多,宜蒙寵爵。可封營浦縣侯,食邑五百戶。」以本號為彭城、沛二郡太守。景平元年,遷右衞將軍。元嘉二年,出為征虜將軍、淮南太守。遵考為政嚴暴,聚斂無節。五年,為有司所糾,上不問,赦還都。元徽元年卒,時年八十二。追贈左光祿大夫、開府儀同三司,侍中如故。諡曰元公。遵考無才能,直以宗室不遠,故歷朝顯遇。年老有疾失明。


遵考は高祖が族弟なり。曾祖は淳、皇が曾祖の武原令の混の弟にして、官は正員郎に至る。祖は巖、海西令なり。父は涓子、彭城內史なり。遵考は始め將軍の振武參軍と為り、盧循を討てるに預り、鄉侯に封ぜらる。建威將軍、彭城內史より高祖の北伐に隨う。時に高祖が諸子は並べて弱く、宗室に唯だ遵考有り。長安の平定さるに、以て督并州司州之北河東北平陽北雍州之新平安定五郡諸軍事、輔國將軍、并州刺史となり、河東太守を領し蒲坂に鎮ず。關中の守を失うに南還し、游擊將軍に除せられ、冠軍將軍に遷る。晉帝の位を遜きて秣陵宮に居せるに、遵考は兵を領し防衞す。高祖の初に大位に即きたるに、推恩の詔を下して曰く:「遵考は服屬の親にして國戚は未だ遠からず、宗室に多無く、宜しく寵爵を蒙る。營浦縣侯、食邑五百戶に封ぜるべし」と。本號を以て彭城、沛二郡太守と為す。景平元年、右衞將軍に遷る。元嘉二年、出でて征虜將軍、淮南太守と為る。遵考が為政は嚴暴にして,聚斂せるに節無し。五年、有司に糾さる所と為る。上は問わず、赦し都に還ず。元徽元年に卒す、時に年八十二なり。左光祿大夫、開府儀同三司を追贈せられ、侍中は故の如し。諡して元公と曰う。遵考に才能無く、直だ宗室の遠からざるを以て、故に歷朝顯遇さる。年の老いたるに疾有りて失明す。


(宋書51-18_寵礼)




うわぁ……(うわぁ……)


どうなんだろうなぁ。この辺って劉裕が高位につけたがったと言うよりは、周りが「宗室だから」と言う事で高位に挙げるよう勧めたり、とかだったんじゃないかなあ。とは言え「家」の理屈からすればそんなもんなのかもしれないし。どうもこの辺は現代日本人の倫理感覚からすればクソにしか見えない。


しかし頼りになる劉道規は早死に、生き延びたのが劉道憐、劉遵考と、劉裕も晩年は相当憂悶引きずりまくりだったでしょうね。さて、じゃあ次話以降はいよいよ名族だとか文官だとかになっていきますよ。もう略歴はやめます。だるいくせに得るものが少ないので。

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