劉道規1 劉裕の下の弟  

烈武王 劉道規りゅうどうき

 既出:劉裕15、劉裕16、劉裕37

    劉裕42、劉裕43、劉裕49

    皇母、檀道済1、沈淵雲子

    到彦之1、劉懐粛1、劉懐粛2

    檀祗1、毛脩之2



劉道規。字は道則どうそく劉裕りゅうゆうの下の弟だ。

幼い頃から任侠者であり、

そのため劉裕に常に目をかけられていた。

桓玄かんげん打倒のはかりごとも、

劉道憐りゅうどうれんをシカトし、

劉道規りゅうどうきと打ち合わせた。


クーデター直前、桓弘かんこう廣陵こうりょうに赴任。

劉道規は桓弘の近衛隊長になった。

劉裕が京口けいこうを陥落させたのと同日に、

劉毅りゅうき孟昶もうちょうと共に桓弘を斬り、

広陵の軍勢を集めて長江ちょうこうを渡る。

建康けんこうに進撃すれば、桓玄は敗走。

安帝あんていのいとこ、司馬遵しばじゅんを救出したので

かれを安帝の代理人として担ぎ上げた。

ここで劉道規は振武しんぶ將軍、義昌ぎしょう太守に。


劉毅や何無忌かむきと共に桓玄を追撃。

江陵こうりょうに向かおうとする桓玄は、

郭銓かくせん何澹之かたんしらを盆口ぼんこうに留めて守らせた。

追討軍が迫ると、船を並べて陣を敷く。


何澹之は一艘の小舟に大将旗を立て、

自らは別の船に乗り込んだ。

旗を見た何無忌はその船を攻めるべきだ、

と提案。だが周りは反対する。


「何澹之は別の船にいるはずだ。

 あの船をとってもメリットはない」


「それはわかりきったことだ。

 私が言いたいのは、そのような船なら、

 我らの精兵であれば

 たやすく獲得できるだろう、

 と言うことだ。


 実際はどうであれ、

 旗印を奴らは失うことになる。


 ともなれば、敵軍でも大将を

 失ったと思う者が出てこようし、

 まして我が軍の士気増大については

 言わずもがな。


 その両者が改めてぶつかれば、

 たやすく打ち勝てるだろう」


これを聞き、劉道規は歓喜する。


「名案です!」


早速作戦を実行に移す。

何澹之の旗が掲げられた小舟を奪取し、

「何澹之、討ち取ったり!」と喧伝。

桓玄軍もクーデター軍も、

この言葉を信じ込み、趨勢は決した。


何澹之軍は崩壊、盆口は陥落。

さらに進み、尋陽じんようをも平定した。




臨川烈武王道規,字道則,高祖少弟也。少倜儻有大志,高祖奇之,與謀誅桓玄。時桓弘鎮廣陵,以為征虜中兵參軍。高祖克京城,道規亦以其日與劉毅、孟昶共斬弘,收眾濟江。進平京邑,玄敗走,晉大將軍武陵王遵承制,以道規為振武將軍、義昌太守。與劉毅、何無忌追玄。玄西走江陵,留郭銓、何澹之等固守盆口,義軍既至,賊列艦距之。澹之空設羽儀旗幟於一舫,而別在它船,無忌欲攻羽儀所在,眾悉不同,曰:「澹之必不在此舫,雖得無益也。」無忌曰:「澹之不在此舫,固不須言也。既不在此,則戰士必弱,我以勁兵攻之,必可禽也。禽之之日,彼必以為失其軍主,我徒咸謂已得賊帥,我勇而彼懼,懼而薄之,破之必矣。」道規喜曰:「此名計也。」因往彼攻之,即禽此舫。因鼓譟倡曰:「已斬何澹之!」賊徒及義軍並以為然。因縱兵,賊眾奔敗,即克盆口,進平尋陽。


臨川烈武王の道規が字は道則にして、高祖の少き弟なり。少きに倜儻にして大志有り、高祖は之を奇しみ、與に桓玄を誅せんと謀る。時に桓弘の廣陵に鎮ぜるに、以て征虜中兵參軍と為る。高祖の京城を克せるに、道規は亦た其の日を以て劉毅、孟昶と共に弘を斬り、眾を收め江を濟る。進みて京邑を平らげ、玄の敗走せるに、晉の大將軍の武陵王の遵の承制せるに、道規を以て振武將軍、義昌太守と為す。劉毅、何無忌と與に玄を追う。玄は江陵に西走し、郭銓、何澹之らを留め盆口を固守せしめ、義軍の既に至るに、賊は艦を列べ之を距ぐ。澹之は羽儀の旗幟を一舫に空設し、而して它の船に別在す。無忌は羽儀の在せる所を攻めんと欲せど、眾は悉く同じからず、曰く:「澹之は必ずや此の舫に在らざらん、得たりと雖ど益無かりきなり」と。無忌は曰く:「澹之の此の舫に在らざるは、固より須まざる言なり。既に此に在らずば、則ち戰士は必ずや弱からん、我れ、勁兵を以て之を攻め、必ずや禽うべきなり。之を禽えたるの日にては、彼は必ずや以て其の軍主を失せるを為し、我が徒は咸な已に賊帥を得たりと謂え、我は勇み彼は懼れ、懼れたるに之に薄さば、之を破りたるは必たらん。」と。道規は喜びて曰く:「此れ名計なり」と。因りて彼に往きて之を攻め、即ち此の舫を禽う。因りて鼓を譟倡して曰く:「已に何澹之を斬りたらん!」と。賊徒、及び義軍は並べて以て然りと為す。因りて兵を縱い、賊眾は奔敗し、即ち盆口を克し、進みて尋陽を平らぐ。




この冒頭よ……明らかに劉道憐よりも愛されまくっておる。


それにしても何無忌さんの判断は素晴らしい。戦いに必要なのが、何よりも勢いだということをよく存じていらっしゃる。

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