檀祇2  広陵のボス   

盧循ろじゅん建康けんこうに攻め寄せてきたとき、

檀祇だんき西明門さいめいもん周辺を守った。

その後江陵こうりょうを守る劉道規りゅうどうき檀道済だんどうさい

支援する予定だったが、

病にかかり、出征を断念。


412年、劉毅りゅうきが滅んだ段階で、

いちど宣城せんじょう郡に出向したのち、広陵こうりょうに。

なお宣城郡は

ながらく劉毅が根拠地にしていた。


ここでの軍権は、督江北、淮南軍郡事。

淮水わいすいから長江ちょうこうにかけてのエリアの守護だ。

最前線でこそないが、旧南燕なんえん系勢力や

東晋とうしん亡命皇族系勢力も少なくない。

決して安定しているとは言えない。


実際に檀祇、414年には

亡命皇族、司馬國璠しばこくはん兄弟より

襲撃を受けている。


かれらは北徐州きたじょしゅうの境あたりで

数百人ほどの兵力を集め、

夜陰に乗じ、広陵城に取り付いた。

そして場内に向け、叫ぶ。

おそらく内容は、奸賊劉裕りゅうゆうの打倒、

そして司馬氏の復興。


この声に驚き飛び起きた檀祇。

司馬國璠兄弟を「処分」しようと

門外に出た。

するとそこを狙い撃ちされ、

太腿に矢傷を負ってしまう。

檀祇、慌てて門内に戻り、

側仕えたちに語る。


「賊は闇夜に乗じ、

 わしの不備を付け狙ってきたのだ。


 ならば、奴らから

 闇を取り払ってやればよい。


 明け方の太鼓、五鼓を打て。

 そうすれば奴らは、

 逃げ出そうとするだろう」


檀祇の見立ては的中。

司馬國璠たちは朝となり、

守備が厚くなってくることを恐れ、

一斉に逃げ出した。


檀祇はそこに追撃をかけ、

百人あまりを殺した。


この事件により、檀祇は降格。

が、翌年には右将軍に昇格した。


また416年、劉裕が後秦討伐に

動こうとしたときにも

亡命皇族が動いていた。


その皇族の名は残っていない。

ともかく、かれは涂水じょすい流域を襲撃。

そのエリアの責任者であった

劉基りゅうきという人が救援を求めてきたため、

檀祇は援軍を派遣。

この名無しの皇族を打ち破り、殺した。




盧循逼京邑,加輔國將軍,領兵屯西明門外。循退走,祗率所領,步道援江陵,未發,遇疾停。八年,遷右衛將軍,出為輔國將軍、宣城內史,即本號督江北、淮南軍郡事、青州刺史、廣陵相。進號征虜將軍,加節。十年,亡命司馬國璠兄弟自北徐州界聚眾數百,潛得過淮,因天夜陰暗,率百許人緣廣陵城得入,叫喚直上聽事。祗驚起,出門將處分,賊射之,傷股,乃入。祗語左右:「賊乘暗得入,欲掩我不備。但打五鼓,懼曉,必走矣。」賊聞鼓鳴,謂為曉,於是奔散,追討殺百餘人。祗降號建武將軍。十一年,進號右將軍。十二年,高祖北伐,而亡命司馬囗寇涂〈涂或作滁〉中,秦郡太守劉基求救,分軍掩討,即破斬之。


盧循の京邑に逼れるに、輔國將軍を加えられ、兵を領し西明門外に屯ず。循の退走せるに、祗は領したる所を率い、步道にて江陵を援けんとせるも、未だ發せざるに疾に遇いて停む。八年、右衛將軍に遷り、出で輔國將軍、宣城內史と為り、即ち本號を督江北、淮南軍郡事、青州刺史、廣陵相とす。號は征虜將軍に進み、節を加う。十年、亡命の司馬國璠兄弟の北徐州の界より眾を數百聚め、潛かに淮を過りたるを得、天の夜なるの陰暗に因り、百許りの人を率い廣陵城の緣に入りたるを得、直上に聽事を叫喚す。祗は驚き起き、門を出で將に處分せんとせるに、賊は之を射、股に傷せば、乃ち入る。祗は左右に語るらく:「賊は暗に乘じ入りたるを得たり。我が不備に掩せんと欲す。但だ五鼓を打たば、曉るきに懼れ、必ずや走れん」と。賊は鼓鳴を聞き、曉と為りたると謂え、是に於いて奔散す。追討し百餘人を殺す。祗は號を建武將軍に降ず。十一年,號を右將軍に進む。十二年、高祖の北伐せるに、亡命の司馬某の涂中を寇せるあり、秦郡太守の劉基は救を求まば、軍を分け掩討し、即ち破りて之を斬る。


(宋書47-26_暁壮)




宋書さんのこの、オープニングを「劉裕に付き従った武将」で固めてくださる構成のおかげで「はいはいまた孫恩そんおんはいはいまた桓玄かんげん南燕盧循劉毅休之きゅうし後しnいい加減耳タコじゃあっ!(バァン!)」っぷりがとめどなくてな。マジでこの流れの外がほぼわからない。ご冗談でしょう……? 周辺の状況については文官さんたちの記述に期待かなあ。


そしてしん氏兄弟、張邵ちょうしょう劉敬宣りゅうけいせん伝ではあれほどどーでもいい褒め言葉も惜しまなかったのに、ここに来て劉裕サマ伝説にかかわらないところじゃ失策をあげつらってくるというこの非対称性。いやさぁ、武官クソって思ってんなら、無理せず文官先にもってくりゃよかったんじゃない……? 三国志さんごくしみたいにさぁ……。


マジで沈約さんのこの偏った書きっぷり勘弁してほしいですわ……。

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