劉敬宣9 407年の情勢
大功を立てさせてやりたい。
そこで407年、劉敬宣に
5000の兵を率いさせ、
それを、とある文官の一人、
内容は、こうだ。
「クーデター決起以来、
公が負け知らずであったのは、
天が公に味方し、
信任なされたからであります。
いま、君臣ともに泰らか。
収穫にも恵まれ、民が
飢えに苦しむこともございません。
強盗たちも鳴りを潜めております。
ならば、今こそ国の根本を
確かなものとすべきではないでしょうか。
蜀の賊を討伐し、
天下に安寧をもたらす。大切です。
しかし、今ではない。
古の人も申しております。
天の時は地の利に如かず、
地の利は人の和に如かず、と。
蜀までには何千キロもの距離、
しかもその旅程には荒れ狂う長江、
険しき峰々。たどり着くまでに、
どれほどの年月を費やしましょう。
存じております。
いざ公が動けば、蜀を落とし、
やすやすと
公の武威です、
成し遂げられぬはずがございません。
しかし荒廃しきった蜀の地には、
今やぺんぺん草すら生えず、
首都の
ほぼ死んだそうではございませんか。
蜀征伐は、ひとくちに言って
まるで割りが合いませぬ。
理由を、三点申し上げましょう。
一つ、ゆかりのない遠方の戦いを、
兵らが厭いましょう。
加えて軍旅の途上で、疫病にあって
死ぬ者も出ましょうに。
この状態で、彼らがモチベーションを
保てるとお思いですか?
二つ、我々の軍は遠征で疲労します。
一方の賊軍は、無傷。
彼らは我らの軍が到着するや、
野戦にて一気に決着を
つけようとするでしょう。
このときの彼我の勢いの差は、
決して無視できぬ被害を
もたらしましょう。
そして、三つ。補給問題です。
数百キロの遠征ですら、
食料が切れれば地獄。
ましてや今回は、数千キロに及びます。
本当に、この軍旅を維持するだけの
補給を確保できるのですか?
食糧問題が解決できなくば、
かの
成果なぞ挙げられますまい。
この遠征に賛成しているものは、
譙縦が謀反者たちに推戴されて
反乱を起こした、と申しております。
愚見を申し上げれば、それは
全くの見当違い。
彼の者は匹夫に過ぎません。
大者たちがいなくなったので、
その隙をついて謀反を起こしたのです。
その官舎に詰めている者も烏合の衆。
まともな者は千人に一人いれば
良いところでしょう。
勢いに任せて突き進むしか
能のない連中です。
公は今や、この国を支えるお方。
ならば今は、外を気にかけつつも
内部をお固めになり、
近隣を安んじることで、初めて遠方をも
服属させられるのではありますまいか?
譙縦は、ただでさえ内輪もめに忙しく、
およそそこに人の和はありません。
ならば奴らは蜀という天険にあっても、
決して地の利は活かしきれますまい。
譙縦に殺された
譙縦を殺すまで、収まりは付きますまい。
劉敬宣殿は公より受けた多大なご恩を、
なんとかその働きで返そうと
躍起になっております。
なるほど、お二方のお気持ち、
わからぬでもありません。
しかし、これは国家の大事。
お二方の思いを、
お国のことより優先させれば、
良からぬことが起こるのではないか、
と不安で仕方ないのです。
私は文官です。もとより軍事は
私の口出しする領分ではございません。
しかしながら、この思いにつきましては、
隠しおおせることができず、
訴えに上がった所存にございます」
だが、訴えは退けられた。
高祖方大相寵任,欲先令立功。義熙三年,表遣敬宣率眾五千伐蜀。國子博士周祗書諫高祖曰:「自義旗之建,所征無不必克,此可謂天人交助,信順之徵也。今大難已夷,君臣俱泰。頃五穀轉豐,民無饑苦,劫盜之患,亦為弭息,比誠漸足無事,宜大寧治本。蜀賊宜平,六合宜一,非為不爾也。古人有言,天時不如地利,地利不如人和。今往伐蜀,萬有餘里,溯流天險,動經時歲。若此軍直指成都,徑禽譙氏者,復是將帥奮威,一快之舉耳。然益士荒殘,野無青草,成都之內,殆無孑遺。計得彼利,與今行軍之費,不足相補也。而今往艱險,雨雪方降,驅三州三吳之人,投之三巴三蜀之土,其中疾病死亡,豈可稱計。此一疑也。賊必不守窮城,將決力戰。今我往勞困,彼來甚逸。若忽使師行不利,人情波駭,大勢挫衂。此二疑也。且千里饋糧,士有饑色。況今溯險萬里,所在無儲。若連兵不解,運漕不繼,雖韓、白之將,何以成功。此三疑也。今云可征者皆云:『彼親離眾叛。』愚謂不然。彼以一匹夫,而能致今日之事,若眾力離散,亦何以至此。官所遣兵皆烏合受募之人,亦必無千人一心,有前無退矣。為治者固先定其內而理其外,先安其近而懷其遠。自頃狂狡不息,誅戮相繼,未可謂人和也。天險如彼,未可謂地利也。毛脩之家仇不雪,不應以得死為恨;劉敬宣蒙生存之恩,亦宜性命仰報。今將軍欲驅二死之甘心,而忘國家之重計,愚情竊所未安。闕門之外,非所宜豫,苟其有心,不覺披盡。」不從。
(宋書47-18_政事)
周祗
ここにしかいない人。諫言が長かったので訓読は省略しましたが、いやー、なんつーかさぁ……すっげえ読みやすい! なんていい人なんだ! 駢儷文キメてくる奴らはみんな周祗さんを見習え!
この感じだと、他の人も諌止の書状を劉裕に送ったんでしょうね。で、全部棄却された。劉敬宣にせよ、それから後に派遣される
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます