劉敬宣6 亡命2
悟っていた。
また、夢を見た。
丸い土が、
平伏している夢だ。
目覚めたあとに、歓喜しながら言う。
「丸は桓に通じる。
間もなく桓氏は制圧され、
我らは江南の地に戻れるのだろう!」
彼らを仲間に引き入れ、劉敬宣、
総大将には
いよいよ計画発動、という頃、
「いま、
南燕の司空になっている。
かの地の要職に至っている
彼を迎え入れられれば、
大いに助けとなるだろう」
劉敬宣、大反対である。
「かのお方はすでに年を召している。
おそらく、これ以上の動乱を望むまい。
申し出てみたところで、
動いてくれるとは思えない。
協力を望むべきではない」
そんなはずはあるか、と高雅之、
勝手に劉軌に申し出てみれば、
やはり劉軌は従わなかった。
しかも劉軌づてで謀略が漏れる。
こうなっては仕方がない。
劉敬宣らは劉軌を殺し、
更に亡命せねばならなくなった。
南燕勢力圏から南下、
間もなく
劉敬宣らのもとに、
そんな劉裕から、劉敬宣に宛て
直筆の手紙が届く。
内容は、クーデター参与の勧誘。
「劉敬宣様! これは劉裕の
罠なのではありますまいか!」
そう諌めてくる側仕えに対し、
劉敬宣は答えた。
「かれがどういう人物か、
私はよく知っている。
劉裕殿は私をおびき寄せて殺そう、
などと考えるようなお人ではない」
そうして劉敬宣、大至急で帰還。
到着した頃には、すでに
奪還されていた。
劉裕、戻ってきた劉敬宣に、
改めて官位を授け、
また
改めて劉敬宣に継がせた。
これが、404年のことだ。
敬宣素曉天文,知必有興復晉室者。尋夢丸土服之,既覺,喜曰:「丸者桓也。桓既吞矣,吾復本土乎!」乃結青州大姓諸崔、封,並要鮮卑大帥免逵,謀滅德,推休之為主,克日垂發。時劉軌為德司空,大被委任,雅之又欲要軌。敬宣曰:「此公年老,吾觀其有安齊志,必不動,不可告也。」雅之以為不然,遂告軌,軌果不從。謀頗泄,相與殺軌而去。至淮、泗間,會高祖平京口,手書召敬宣;左右疑其詐,敬宣曰:「吾固知其然矣。下邳不誘我也。」即便馳還。既至京師,以敬宣為輔國將軍、晉陵太守,襲封武岡縣男。是歲,安帝元興三年也。
敬宣は素より天文に曉るく、必ずや晉室を興復せる者有りたるを知る。尋いて丸土の之に服せるを夢み、既にして覺むらば、喜びて曰く:「丸は桓なり。桓の既にして吞さば、吾れ本土に復さんか!」と。乃ち青州の大姓の諸崔、封と結び、並べて鮮卑の大帥の免逵を要え、德を滅ぼさんと謀り、休之を推し主と為し、克日に發せるに垂んとす。時に劉軌の德が司空と為り、大いに委任さるを被らば、雅之は又た軌をも要えんと欲す。敬宣は曰く:「此の公は年老い、吾れ其の安齊の志の有りたると觀らば、必ずや動かざらん、告ぐべからざるなり」と。雅之は以て不然と為し、遂にして軌に告がば、軌は果して從わず。謀は頗る泄れ,相い與に軌を殺りて去る。淮、泗の間に至り、高祖の京口を平ぐるに會し、手ずから書し敬宣を召す。左右は其の詐なるを疑えど、敬宣は曰く:「吾れ固より其の然りたるを知りたる。下邳は我を誘わざるなり」と。即便に馳せ還る。既に京師に至らば、敬宣を以て輔國將軍、晉陵太守と為し、武岡縣男を襲封さる。是の歲、安帝の元興三年なり。
(宋書47-15_識鑒)
劉敬宣の側仕えたちが「罠」と見越した理由が気になる。京口クーデターが虚報で、劉敬宣をおびき寄せるために桓玄が仕掛けたトラップと見たのか? あるいはそのまんま「劉裕が劉敬宣を殺そうとする」と見なしたのか? 後者であれば、劉裕がそう思うであろう材料を劉敬宣が抱えていたことになる。それってなんだろう。司馬休之絡みかなあ。
司馬休之、後に劉裕を糾弾する上奏文の中で、劉敬宣もアンチ劉裕勢力であるかのように語ってたりするんですよね。まぁ劉敬宣、動き出す前にテロにあって殺されますけど。
なんだろう、劉敬宣はアンチ劉裕派だったけど、大勢には余り影響なかったし、事績からすれば劉裕シンパとして記述できるから、「恩人の息子を大切にする情け深き武帝陛下!」アピールに使われたのかなあ。「伝説に組み込みうる人物」周りは注意深く、けど結論ありきで見すぎないよう気をつけたいものです。
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