劉敬宣5 亡命1     

桓玄かんげんは朝廷に乗り込むと司馬元顕しばげんけんを殺し、

司馬道子しばどうしは廃位の上毒殺。

更に劉牢之りゅうろうしを征東將軍に「昇進させた」。


もはや正当な手段で桓玄打倒は不可能。

劉牢之と劉敬宣りゅうけいせんは、桓玄の殺害を図る。

狙いは、朝イチだ。


しかし決行当日は、あいにくの大霧。

桓玄の宿直する府の門が開いたのが

日が高くなってからのことだったし、

そもそも、日暮れころにまで

劉敬宣はやってこなかった。


計画が、漏れてしまったのか!

絶望した劉牢之、僅かな手勢とともに

長江の渡河地点、白洲はくしゅうに向い、

そこから廣陵に脱出しようと考えた。


実はこの時、劉敬宣は京口に出向いていた。

それで、家族らを匿おうとしていたのだ。


息子のこの動きについて、劉牢之、

「やつは桓玄に捕まったのだ」と誤認。

ともなると、もはや進退は窮まった。


劉牢之は、白洲で首を吊り、死んだ。


父の死を聞いた劉敬宣、

劉牢之の死体を見て

一通りの哭礼を済ませたのち、

司馬休之しばきゅうし高雅之こうがしらとともに、

洛陽らくように亡命。


そこで彼らの子どもを人質に差し出し、

姚興ようこうに救援を求めた。


すると姚興は司馬休之らに委任状を与え、

結果数千人の兵力を得た。


これは、あくまで種銭だ。

司馬休之、彭城ほうじょうのあたりに足を運ぶと、

アンチ桓玄派を取りまとめた。


が、それをおとなしく見過ごす

桓玄ではない。


孫無終そんむしゅうに兵を率いさせ、迎撃に出す。

ターゲットは、僑州冀州きしゅうを守る、劉軌りゅうき


孫無終軍の動きに対し、

劉軌は劉敬宣や高雅之らを迎え入れ、

戦力にあてた。だが、山陽さんようにて敗北。


そこで劉敬宣軍、昌平澗しょうへいかんに移動。

だがここでも敗北。

散り散りばらばらとなり、劉敬宣らは

南燕なんえん慕容德ぼようとくのもとに亡命した。




玄既得志,害元顯,廢道子,以牢之為征東將軍、會稽太守。牢之與敬宣謀共襲玄,期以明旦。值爾日大霧,府門晚開,日旰,敬宣不至,牢之謂所謀已泄,率部曲向白洲,欲奔廣陵。而敬宣還京口迎家,牢之尋求不得,謂已為玄所擒,乃自縊死。敬宣奔喪,哭畢,即渡江就司馬休之、高雅之等,俱奔洛陽,往來長安,各以子弟為質,求救於姚興。興與之符信,令關東募兵,得數千人,復還至彭城間,收聚義故。玄遣孫無終討冀州刺史劉軌,軌要敬宣、雅之等共據山陽破之,不克。又進昌平澗,戰不利,眾各離散,乃俱奔鮮卑慕容德。


玄の既の志を得るや、元顯を害し、道子を廢し、牢之を以て征東將軍、會稽太守と為す。牢之と敬宣は共に玄を襲わんと謀り、明旦を以て期す。爾の日に大霧に值い、府門は開に晚かば、日の旰れるにも敬宣は至らず、牢之は謀りたる所の已にして泄れたるを謂え、部曲を率い白洲に向い、廣陵に奔らんと欲す。而して敬宣は京口に還じ家を迎え、牢之は尋いで求めたるも得ず、已に玄に擒われたる所と為ると謂い、乃ち自縊し死す。敬宣は喪に奔り、哭し畢えるに、即ち江を渡り司馬休之、高雅之らに就き、俱に洛陽に奔り、長安に往來し、各おの子弟を以て質と為し、姚興に救を求めんとす。興は之に符信を與え、關東に令し募兵せしめ、數千人を得、復た還じ彭城が間に至り、義故の聚を收む。玄は孫無終を遣わせ冀州刺史の劉軌を討たしめ、軌は敬宣、雅之らを要え共に山陽に據して之を破り、克てず。又た昌平澗に進み、戰に利あらざれば、眾は各おの離散し、乃ち俱に鮮卑の慕容德に奔る。


(宋書47-14_衰亡)




劉牢之のメンタルに全く余裕がなくて物悲しい展開。桓玄は劉牢之の墓を暴いて死体を切ったってことになってるけど、この展開の感じだと司馬休之を伴って亡命しやがった劉敬宣に対する怒りのほうが大きそうな気もしないではない。


しかし長安に残された彼らの子弟、その後どうなったんでしょうね。地味に北魏で働いてたら面白そうなんですが。



而敬宣還京口迎家,牢之尋求不得,

つーかここの意味がわかんねえ。劉敬宣がなんで襲撃をパパと約束したのに京口に戻るん? うーん、吉川忠夫よしかわただお「劉裕」に頼るべき案件かなー。

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