劉敬宣3 劉裕と出会う  

399年、孫恩そんおんが挙兵。

沿岸エリアはもれなく恐慌に陥った。

この事態を受け、劉牢之りゅうろうしは自ら

征討を表明、虎疁こびゅうに出撃する。


死も厭わぬ五斗米道ごとべいどう軍の戦いぶりを受け、

劉敬宣りゅうけいせんは絡め手を提案した。

騎馬隊の機動力でもって

南にある山をぐるりと回り、背後から

五斗米道軍に攻めかかる、というのだ。


この作戦は受理された。


突然やってくる馬が、しかも背後から。

五斗米道軍は大混乱に陥り、敗走。

劉牢之軍は会稽かいけいまで進み、平定する。



その二年後、401年。

再び孫恩は会稽に攻めてくる。

が、その行く手を阻むものがいた。

劉裕りゅうゆうだ。


句章くしょう城に詰めた劉裕は、

幾度もの攻撃をすべて跳ね返す。

それを聞き、劉敬宣、

彼を支援したいと申し出る。


城を守る猛将に加え、

あの劉敬宣にやってこられるのだ。

たまらず五斗米道軍は、海にまで逃れた。


一段落は、ついた。だが不穏な情勢が

解消されたわけではないし、

そもそも、世の根本たる朝廷が

グダグダな状態。

これで事態が収まるはずもないと、

劉敬宣は判断する。


その後劉裕は、各地で五斗米道軍に対し

多くの戦功を挙げていく。

いまの世の中には、英雄が必要なのだ。

劉敬宣は劉裕に近づき、交友を結ぶ。

志向の似通っていたふたりは、

すぐに意気投合した。


一方で、五斗米道との戦い、その戦果は、

最高指揮官=司馬元顕しばげんけんの功績ともなる。

これらの戦いの結果、司馬元顕は、

驃騎ひょうき将軍、つまり軍の最高権力者となった。


なお、五斗米道の乱の原因は

司馬道子が孫恩と、その伯父孫泰そんたい

実権をもたせ、挙げ句の果てに、

その彼らの任地にて収奪搾取に

勤しんだことによる、とされている。



この記述を真とすれば、

ドエレーマッチポンプである。



ともあれ劉敬宣、

司馬元顕直属の配下であるから、

驃騎将軍府に入ることとなった。


そして、この司馬元顕。

驃騎府では飲めや歌えやの大騒ぎ。

当然部下たちも、

そういうノリになっていく。


劉敬宣も宴会には常に呼び出されたが、

そこで酒を飲むことはなかった。

そんな劉敬宣を周りの奴らがからかう。

が、劉敬宣、無反応。

その様子に、司馬元顕は

ムカついていたそーな。




三年,孫恩為亂,東土騷擾,牢之自表東討,軍次虎疁。賊皆死戰,敬宣請以騎傍南山趣其後,吳賊畏馬,又懼首尾受敵,遂大敗。進平會稽。五年,孫恩又入浹口,高祖戍句章,賊頻攻不能拔。敬宣請往為援,賊恩於是退遠入海。是時四方雲擾,朝廷微弱,敬宣每慮艱難未已,高祖既累破妖賊,功名日盛,故敬宣深相憑結,情好甚隆。元顯進號驃騎,敬宣仍隨府轉,軍、郡如故。元顯驕淫縱肆,群下化之;敬宣每預燕會,未嘗飲酒,調戲之來,無所酬答。元顯甚不說。


三年、孫恩の亂を為せるに、東土は騷擾す。牢之は東討を自表し、軍は虎疁に次す。賊は皆な死戰したれば、敬宣は騎を以て南山に傍せんと請い、其の後を趣さば、吳賊は馬を畏れ、又た首と尾とに敵を受くるを懼れ、遂には大敗す。進みて會稽を平らぐ。五年、孫恩は又た浹口に入り、高祖の句章を戍りたるに、賊は頻りに攻めど拔く能えわず。敬宣は往きて援を為さんと請わば、賊恩は是に於いて遠きに退り海に入る。是の時、四方は雲擾し、朝廷は微弱にして、敬宣は每に艱難の未だ已まざるを慮る。高祖は既にして累しば妖賊を破らば、功名は日に盛んとなり、故に敬宣は深く相い憑結し、情好せること甚だ隆んなり。元顯の號の驃騎に進みたるに、敬宣は仍ち府に隨いて轉じ、軍、郡は故の如し。元顯は驕淫縱肆にして、群下は之を化す。敬宣は每に燕會に預れど、未だ嘗て飲酒せざらば、之を調戲せるの來たれど、酬答せる所無し。元顯は甚だ說ばず。


(宋書47-12_直剛)




武帝紀と合わせて読めば、399年の段階で数千人の五斗米道軍相手に大立ち回りをキメた猛者が、今度は守城戦でも大活躍したわけです。そりゃ「こいつただもんじゃねえな」って思いますわよね。


と言うか、個人武勇、水軍指揮、守城実績、戦術策定、戦略策定。ちょっと劉裕さんの戦争遂行能力異常すぎませんかね? しかも海塩城あたりの戦い読むとゲリラ戦指揮も行けそうだし。まぁ圧倒的武勇+戦局眼、そこに駆け引き力が……あっだめだ結局チートだ……。

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