王懿4  戦意軒昂    

南燕なんえん討伐の際、王懿おういは前鋒将を務めた。

大小二十あまりの戦いに勝利。


ついで、盧循ろじゅん建康けんこう侵攻。

何無忌かむきが戦死、劉毅りゅうきが桑落で敗戦。

しかも劉裕りゅうゆうが戻ってきたとは言っても、

その兵たちは満身創痍、

ろくに戦えるものなど

数千にも満たない有様。


対する盧循軍は十万規模。

数十キロにも及ぼうかという

大船団を編成し、向かって来ている。


戦に破れた者たちは

五斗米道ごとべいどう軍ヤバいを口にしている。

こんな有様であるから、

建康けんこう城内では遷都論が噴出していた。


そこに、王懿が一喝する。


「陛下がこの太陽のもとで

 劉裕様に命を下され、

 結果打ち立てられた大功は、

 天下を打ち震わせるに値するもの。


 クソどもが突っ込んできたとはいえ、

 劉裕様の留守を狙ったに過ぎん。

 既に劉裕様はお戻りになっている。

 奴らは間もなく瓦解しよう。


 草間から飛び出てきたのは

 所詮、匹夫どもである。

 匹夫が喚いていたところで、

 何を怯えることがある?


 勇者英雄は、常に

 仕えるべき主を求めるもの。


 ここで遷都などしでかしてみろ。

 この地に主が無い、と

 証明してしまうようなものだぞ!」


劉裕は王懿のこの発言に大いに喜び、

王懿を越城に駐屯させた。




武帝伐廣固,仲德為前鋒,大小二十餘戰,每戰輒克。及盧循寇逼,敗劉毅於桑落,帝北伐始還,士卒創痍,堪戰者可數千人。賊眾十萬,舳艫百里,奔敗而歸者,咸稱其雄。眾議並欲遷都,仲德正色曰:「今天子當陽而治,明公命世作輔,新建大功,威震六合。妖賊豕突,乘我遠征,既聞凱入,將自奔散。今自投草間,則同之匹夫;匹夫號令,何以威物?義士英豪,當自求其主爾。此謀若行,請自此辭矣。」帝悅之,以仲德屯越城。


武帝の廣固を伐ちたるに、仲德を前鋒と為し、大小二十餘の戰にて每戰輒ち克す。盧循の寇逼せるに及び、劉毅の桑落にて敗れ、帝の北伐より始めて還ぜるに、士卒は創痍し、戰に堪うる者は數千人なるべし。賊眾は十萬、舳艫は百里、奔敗し歸したる者は咸な其の雄なるを稱す。眾の議は並べて遷都を欲せど、仲德は色を正して曰く「今、天子の陽に當りて治め、明公に命じ世に輔を作し、新たに大功を建て、六合を威震す。妖賊の豕突なるに、我が遠征に乘じ、既にして凱入せるを聞かば、將に自ら奔散せん。今、草間より投じたるは、則ち之れ匹夫に同じ。匹夫が號令、何をか以て物を威せんか? 義士英豪、當に自ら其の主を求めたるのみ。此の謀の若し行かば、自ら此の辭を請いたらん」と。帝は之に悅び、仲德を以て越城に屯ぜしむ。


(宋書46-7_規箴)




だーからさぁ、ほんと誰だよこれ「宋書です☆」とか言ってねじ込んだ奴。もうちょっとがんばって沈約しんやくさんの記述に寄せろよ。沈約さん劉裕のこと「その当時の爵位で呼ぶ」からな。この段階だと「公」だ。つーか沈約てめえそのせいでお前の武帝本紀でどこに劉裕がいるか見逃しやすいんだよ! おっとすいませんうふふ。


それにしても王懿の発言には教養のかほりがプンプン感じられて、やっぱりこの人名士なんですね、と言う気分と、うるせーてめえもうちょい平易な言葉でしゃべれさっぱりわかんねんじゃ的な気分とがないまぜになって非常に参る。請自此辭矣とかサイコーに意味わからないです。

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