第19話 前に進め。自分
近頃、よく考えることがある。
長く人生を生きているといろんな事を思う。
(What if 。もしもあの時)
それはターニングポイント、運命の時と言う言葉に置き換えているかも知れない。
様々なすれ違いや掛け違いの捻れは恋愛や結婚であったり、仕事であったり、友人や知人であったり、時には大学や就職の試験で一問の正誤で捻れが生じ、その捻れはまたその先に違う所に結びついていく。その時の時間の切り替わりがターニングポイントかも知れない。即ち、人生に於いて幾つかのターニングポイントがあって様々な捻れを経験して電車の線路のように沢山の複線が出来て、それでも電車は止まる事なく走り続けて行く。その線路の電車に乗り、あたかも自分自身が決めて走り出したと思っていても、それは決められた定めであって変わることはないと・・・。
人は何かあると直ぐに過去に戻りたくなるものだ。後悔や達成した時によく口にする。
「もしもあの時・・・」
私はたとえ過去に戻れることが出来たとしても、また多少の時間は掛かったとしても、多少の寄り道があったとしても、きっと同じ人生を歩むんだと思う。出会うべくして人は出会う。
そう信じ続けていれば必ず出会うことができると思う。
私はそう考え、今でも信じている。
高校卒業式の時、講堂に集まった時にチラッと彼女を見たのが最後だった。
三年生の後期になってから私は誰とも話をしなくなっていた。そして自分の進路も決まらずに誰とも相談しないで時間だけが過ぎていった。
私は彼女の進路も聞くこともなく、私達は別々の人生を進むことになった。そしてあの日の事はもう忘れようと決心していた。
私はあの日の事から逃げ出したかっただけかもしれない。
恋愛に未熟だった私は彼女を守ることすら出来なかった。
暫く自責の念にとらわれていたが、前に進むことに決めた。
卒業後、私は私学の大学を受験することにして、学部は英文科にと志望校を二、三校に絞った。正直、受験勉強もそこそこしかやっていなかった。外国語大学の推薦枠もあったが敢えて難しい大学を選んで受験に挑戦しようと思った。結果、見事に落ちてしまった。
踏んだり蹴ったりで人生は上手くいかないものだと痛感したが、親に頼み込んで、浪人してもう一度ゆっくりと将来の事を考え直そうと思った。この一年間は決して無駄ではないと信じていたし、焦って間違った進路だけは一生悔いが残ることも理解していた。そして一年間という期間は長い人生でまだまだ取り戻せる時間であることも知っていた。だからここはじっくりと構えて自分の適材適所を考慮しながら進むべき道を考えたかった。そしていつか大成した自分の姿を大好きだった彼女に見せなければという思いも心の何処かにあった。
実は三年生の時に担任との進路相談を受けなかった。理由はたまたま三年間も同じ担任だったにもかかわらず、私の名前すら覚えていないような担任に何を相談するのか、失礼極まる話だったからだ。
私は中学生の時から担任には良い印象はなく、相談する事なく進路は自分で決めてきた。特に高校の担任は、気に入った可愛い女子生徒には自分の家まで呼んでえこひいきするような担任だったからだ。特に成績もずば抜けて良かったこともなく、どちらかと言えば目立たない生徒だったので担任からみたら存在感はなかったと思う。
高校を卒業し、再び英文科の大学に進むべきかどうかを考えていたのは予備校に行き出して暫く時間が経った頃だった。大学の四年間を普通のように過し、その後就職を考えていけば良いのではないかと言う考えには中々なれなかった。一浪することでこの後の四年間が人生を左右するとばかり考えていて、充実した時間を持つには何をすべきかをずっと探してした。
勿論、しっかり勉強して国公立の大学進学することが一番の近道であることは分かっていたが、理数系の勉強をしていなかったのでこの道は始めから諦めていた。
大学資金を借りる中でどう有効に使って良いか、他に今、英語以外に勉強すべきことは何かないか等、色々考えていた時期だった。
兎に角、大手商社に入ること、父親の思いの一部上場企業に就職することが親孝行だと思っていた。
その頃、私は「手に職を持つ」と言う考え方に強みを感じていた。
それは自分に鎧を纏うことで人生の強みになることは分かっていた。いわば今でいう資格みたいなものだ。
ある日、テレビを観ていると《ビジネス最前線》と言う番組があって、衣、食、住、遊に携わる職種紹介やその内容をある程度詳しく説明していた。学生にとっては憧れの職業はあっても実際にどのような業務なのか、何を専攻して勉強すれば役に立つのか等、もっと早い時期に知るべきだと思った。
私自身は特に衣に関して興味があった。昔から服が好きだったから大手商社の衣料品部門にと考えていた。衣料と言っても製品なのか、布地ベースなのか、はたまた紳士服か婦人服か子供服なのかと考えてみれば様々な方向性があることに、その時気付かされた。当たり前のように大学卒業して就職する手もあるが、もっと人と違ったことからの可能性もあることを知った。
そして私は決めた。
(もっと服のことを勉強しよう)
(一層デザイナーを目指そう)
(服の事や布地の事、デザインや企画が出来る商社マンもなかなかいないだろう)
(勿論、英語は当たり前のはように話せる)
この時に私は人生の道を決めた。デザイナーになったら世界中をまたにかけて仕事が出来る。手に職を持ち、単なるデザイナーじゃなくマーケティング、商品企画が出来て世界中ひとり単独でも動ける社会人を目指そうと。
漸く私は彼女からの呪縛から解き離れ自分のやるへの目標が出来た。
前に進め、もう迷わずに・・・。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます