生贄

西川笑里

第1話

#ショートショート


生贄


 先生がニヤッときみ悪く笑う。

「いいか、まもなく世界が滅びる。それを防ぐ方法はただひとつ、このクラスの女子からひとりだけ生贄を出すことだ」

 委員長の藍花が聞く。

「なんで女子から?」

 先生は、なぜそんな当たり前のことを聞くんだという顔で、

「なんで? もちろん女子だからだ。他に理由はない」

と答える。

「じゃあもし拒否したら」

 もう一度藍花が聞く。

 不気味な笑い声で先生が答える。

「もちろん構わんよ。ただし」

 教室の全員を見渡しながら続ける。

「もし拒否するなら、世界は滅亡するのだ」

 だからお前ら女子が犠牲になれと当たり前に言う先生に、藍花は強い口調で言う。

「冗談じゃない! 死ぬときはみんな一緒でしょ!」

 すると先生は、

「おお、そうだった。もし生贄を拒否するのはいいが、そうなると、拒否をしたこのクラスの女子1人を残して、すべての人類は滅亡するんだ。よかったな、世界にただひとり生き延びる人類になれるんだ。親も友達もいない、電気もガスも水道もない、医者もいない世界でひとりであと…70年か? さぞや幸せな人生だろう。さあ、どうぞ拒否しなさい」

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生贄 西川笑里 @en-twin

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