施設紹介『擬珍宝』

ねずみ

「カイロウドウケツ」

「みなさんこんにちは!ちょっと不思議でとても楽しい学問の世界を紹介する博物デイズのコーナーです。今日は記念すべき第100回!スタジオを飛び出して現地から魅力をお伝えできることになりました!ーー中継の多摩さん?」

「__はい!皆さんこんにちはー!私がいま来ておりますのは巷で大流行の『擬珍宝』です!あるテーマにぴったりの生物たちを集めて展示している、世界でもここにしかない博物館なんですよ!」

「大人だけではなく中学生や高校生にも大人気の擬宝館、本日はなんと!飼育員の阿鳴さんがガイドをしてくださるそうです!阿鳴さん、よろしくお願いします!」

「阿鳴です。よろしくお願いします。」

※スタジオの皆様は画像検索とともにお楽しみください。


「まずはこちらをご覧ください。カイロウドウケツです」

「細く透き通った繊維が網目を作り、摩天楼のようにまっすぐ伸びています。先端は少し膨らんでいて、擬珍宝の名にふさわしい形をしています。まるでガラス細工のような繊細さですね」

「カイロウドウケツの外殻はガラスの成分と同じ二酸化ケイ素でできているんですよ」

「この美しさから、カイロウドウケツは若い女性にも人気が高いそうです。…あっ!中に何かいます!白い……エビ、でしょうか?」

「素晴らしい。これはドウケツエビという、カイロウドウケツの中で生活するエビの仲間です。彼らはカイロウドウケツが幼体のうちにその内部に入り込み、殻に守られて一生を過ごします。生きた要塞に守られて暮らしているというところでしょうか」

「生きた要塞!中に入ったエビは一生この中で過ごすそうですが、餌は何をあげているのでしょうか?」

「ドウケツエビは海水中のプランクトンを食べて生活します。飼育の際はやはり水質に気を遣いますね。節足動物は空腹になると共食いをしてしまう種も多いのですが、このエビはほとんどの夫婦が仲良く暮らしています」

「夫婦?…本当です!このカイロウドウケツにも2匹のエビが住んでいるようです!」

「たまにですが、ひとつのカイロウドウケツに3匹のエビが入ることもあります」

「三角関係ですね!」

「そうですね。ドウケツエビはヒトなどの哺乳類とは違い、成長の過程で性分化します」

「と、いいますと?」

「カイロウドウケツに入ったときは性別が決まっていないということです。2匹のオスが1匹のメスを争うか、2匹のメスが1匹のオスを分かち合うかは彼ら次第なんですよ」

「ロマンチックですね。女性にも大人気、カイロウドウケツでした!」

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施設紹介『擬珍宝』 ねずみ @petegene

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