ショートショート『雨乞い』
あん
ショートショート『雨乞い』
クダイバの村には駅が一つ。砂漠を渡る連結船の駅だけだ。
南の街まではこの船に乗る以外の移動手段はないのだ。
クシャナという娘はこの度、クダイバ村立クダイバ中学を卒業し、
南の街の大企業にシステムエンジニアとして推薦される事となった。
だが卒業してから二ヶ月。乾季の為雨が降らず、
船が動く事はなかったのである。
「こりゃ困った。南の街に行けねえと折角のシティーライフが台無しゲナ」
村には一つ祠がある。どうもここは雨の神様を祀っているらしく、
雨乞いをすれば願いを叶えてくれる有難い祠である。
早速クシャナは祠で祈った。
「オラの大事な一生がかかってるゲナ。雨さ降らしてけろ」
すると祠のどこからか声がした。
『おめえの大事なもんを捧げたら雨さ降らしてやるべ』
「ほんとか?んならとりあえず今持ってるもんで一番高いもんはこれかな?」
クシャナはシマムラで買ったバッグの中からパチモンのペンダントを
賽銭箱に入れた。
『つまらねえもんで雨は降らせねえ。お前が一番大事なもんだ』
「なんじゃそりゃ!ペンダント返せ!」仕方ないからまたバッグから
別れた彼氏にもらったお守りを入れた。
しかし雨は降らない。幼馴染と再会を誓って交換したミサンガを入れても
効果はなかった。
段々腹が立ってきたクシャナは腹立ち紛れに持っていた
バッグを賽銭箱に投げ入れた!
すると突然空は暗くなり、たちまち雨が降り注いだ。
砂漠を潤すほどの集中豪雨である。
唖然とするクシャナに声が届いた。
「お前の今一番大切にしている『推薦状』は確かに受け取った。
お前の願いは叶えられた」
ショートショート『雨乞い』 あん @josuian
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