この胸の高鳴りは、きっと。

この想いって素敵だと思うの

私の教室にはひとつの空いている机がある。いつからだったか忘れてしまったがぽつりと誰かが来る訳でもない席がある。違和感しかないその席の話を誰もしない。私だってそうだ。これはもう話題にしてはいけないと誰もがわかっている。でも私はその空いた席に着いての秘密を一つだけ持っている。それはかつてその席に座っていたひとがうっかり忘れていったであろう日記。いや、うっかりではなく確信犯だったのかもしれない。この教室にいる人間がこの日記を読んで後悔すればいいと祈る、想いが詰まった日記だ。その日記を手に取り何気なく読み始めた私は抗えない謎の感情に取り憑かれてしまった。


5月17日

呆れるくらい眩しい太陽がカーテンの隙間から顔をのぞかせる。窓越しに見える外はあんなに静かなのに私の周りは騒がしい。こんな家畜小屋になんていたくない。いっそみんな死んでくれたらいいのに。それかわたしが

5月18日

名前も知らない無貌のなにかが話しかけてきた。とても耳障りだ。何を言っているのかすら理解できない。この世界には化け物しかいない。いや、もしかしたら

5月19日

日曜日は好きだ。あの家畜小屋に行かなくていいから。家で1人静かに本を読むことが私がただ生きる意味なのだ。日曜日が終わる直前にいつも思う。いっそ、世界が壊れて明日なんて来なければいいのにと。でも私は、こんな祈り届かないことはしっている。


夢中になって読み進めれば読み進めるほどわかる。これはただの日記ではない。真綿で締めつけられるようにに緩やかに死んでいく様子を見せつけるためのもの。…遺書なのだ。馬鹿な私は人の死の美しさにに取り憑かれてしまった。1週間前は自殺した、バカなこの日記の主を笑っていたというのに。その死すら美しく感じるのだ。この感情は、きっと、きっと恋だ。あぁ!なんて素敵なことなんだろうか!

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この胸の高鳴りは、きっと。 @akira-yuhi

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