羊の章
プロローグ
星は暗い夜空だから輝ける。人間だって、誰か引き立て役がいるから輝けるのだと思う。だから、暗くて何の取り得もない人間だって、明るく優秀な人々を支えるには必要なんだ。そう考えるのは、今の自分を変えようとしない惰性だと分かっている。けれど、自分は何をやっても失敗だらけで、人に迷惑ばかりかけている。クラスや教師たちに煙たがられているのは肌身に感じていた。
(ああ、また朝が来る)
巴はカーテンの隙間から差し込む光を憎々しく、そして絶望の眼差しで見ていた。
「巴、何をやっているの? 学校、また遅れるじゃない。早く起きなさい」
うるさい、と巴は泣きたい気持ちで布団を被った。その大きくてかん高い声で責めないで。私だって行かなくちゃ、と思っているんだ。でも、体が重くて、頭がぼうっとして何も考えられないの。まるで脳みその奥から腐っていくようだ。生きたままの巴の体から虫が湧いて出てくるのが想像できた。
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