第四百四話【『ヘイトスピーチ解消法』という名の欠陥法】
「ここで話を『韓国発祥のカルト宗教』へと戻す。長期政権与党の政府はこの『韓国発祥のカルト宗教』に、『便宜を図ったことは無い』と言い切った。だが私に言わせればこんなものは嘘八百だ。『便宜』などという生やさしいことばでは済まない。長期政権与党の政府は、『韓国発祥のカルト宗教』の教義を実践していたのだ! その教義とはむろん『日本人は韓国人に永久に尽くさねばならない』だ!」
(『韓国発祥のカルト宗教』の教祖の『御言葉』がそう言っていたんだったよね、)とかたな(刀)は思い出す。しかし再びここに話が戻ってくるとは〝少し予想外〟でもあった。
仏暁は手元のファイルを繰る。
「——日本には俗に『ヘイトスピーチ解消法』と呼ばれる法律がある。ただ、この法律については正式名称で呼称した方がその本質が解りやすい。では読み上げよう、」
「——それは『本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律』だ」(http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=428AC1000000068参照)
長ったらしい法律名に場内は困惑の様子。しかし仏暁〝もうお解りだろう〟と言わんばかりに、
「——さて諸君、この正式名を聞いてなにか違和感を感じなかっただろうか?」と聴衆に問いかけた。
「——『本邦外出身者』という部分にだっ!」
「——これではまるで『本邦内出身者』に対する〝不当な差別的言動〟を解消しなくてもいいみたいじゃないか! その『本邦内出身者』とは、他ならぬ我々日本民族のことだ! どうして外国人による日本人差別が日本の法律で容認されているのかっ⁉」仏暁、叫ぶ!
「——こんな法律を『ヘイトスピーチ解消法』などと呼称するのはイカサマである。『外国人による日本人差別容認法』とも言えるべき法律を造ったのは誰だ⁉ 長期政権与党の、しかも奈良で暗殺された元首相が現役の首相だった時にこの恐るべき法律は造られたのだ! 平成二十八年のことだっ!」とさらに仏暁叫ぶ!
「——そして『左翼・左派・リベラル勢力』はこの法律を大いに肯定した!」
「——だから奴らは間が抜けているというのだ」ここで一転、仏暁の声の調子が変わった。
「——というのも、条文の中身を見ていけばすぐに気づく。この法律の第二条には、『この法律において「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」とは、専ら本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫であって適法に居住するもの』とある。(http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=428AC1000000068参照)この法律がいかにろくに考えないで造られたか分かろうというものじゃないか。『適法に居住するもの』とハッキリ書いてあるぞ!」
「——つまり、『違法に居住するもの』については、「出て行け!」だとか「国へ帰れ!」とか言っても、『不当な差別的言動』ではない、いわゆる『ヘイトスピーチには当たらない』という法律なのだ」仏暁は言い切った。
(あ、)とかたな(刀)。
「——しかし、今さらながらではあるが『左翼・左派・リベラル勢力』はこの法律のこうした『欠陥』について気づいている節がある。既にそれとおぼしきリカバリー運動は始まっている。連中が行っている外国人の『難民申請運動』がそれに当たると私は睨んでいる。『不法滞在者を合法滞在者にしてしまえば現行のヘイトスピーチ解消法でも対処できる』と考えているに相違ない」
「——だが『難民申請』をしさえすれば、それらが片っ端から認められていくというのも考えづらい。『却下率が0%、申請しさえすれば100%難民と認められる』、ではさすがにお人好しの日本人と言えどもその異常性には気づくからである。そうなると許可を出した政治家どもは大衆の憎悪の的となる。〝無制限の移民受け入れ〟を歓迎する国民が多数派の国など、この地球上にはただの一ヵ国も存在しないからだ。したがって〝違法に日本に滞在している外国人〟が合法扱いとなる事で消える事は無いし、そんな彼らに対して『出て行け』とか『国に帰れ』と言っても法律的にヘイトスピーチにならないこの状況は保存され続けるのだ」
「——ここで私は『左翼・左派・リベラル勢力』が壮大にマヌケな事をやらかし勝手に自爆してくれると信じている。奴らならきっと『違法に日本に滞在している外国人に「出て行け」とか「国に帰れ」と言う行為も犯罪として取り締まれるよう法改正すべきだ!』と言い出してくれるに違いない。もし現れてくれたら我々極右の方が大衆の支持を得る正義側の勢力となる!」
と、ここで一転、声のトーンが変わる。
「——とは言え、これもまた話が脱線気味になっている。よって話を本線に戻すと、この『本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律』という法律に於ける『適法に居住するもの』とは、そもそもどういう集団を想定したものか? 今の要点はここだ」
「——それは『在日韓国・朝鮮人』、総じて『在日コリアン』という民族集団だ。この民族集団にカテゴライズされる人々は全て適法に日本に居住している。彼らの事を法律用語で『特別永住者』という」
「——この俗に『ヘイトスピーチ解消法』と言われる法律ができたきっかけは、我々の同業者が『在日朝鮮人系の民族学校』の前で
「——したがってこの法律はその成立のいきさつからして、『日本人の加害行為から在日コリアンを保護するために造られた』という性質を持つ事となった。『加害者は日本人・被害者は在日コリアン』を前提として造られているため、『本邦内出身者』、つまり我々日本民族に対する法的保護など〝どうでもいい〟という極悪な法律となった」
「——だが真に正しい価値観は、『オール・ライブズ・マター』なのである!
『特定民族 特定人種・ライブズ・マター』は正義のように見せかけているだけの邪悪な価値観でしかない」
ここで仏暁、大きく手を振る!
「——ほうれ見たか! 長期政権与党の政府は『日本人は韓国人に永久に尽くさねばならない』という『韓国発祥のカルト宗教の教義』を実践しているではないか! なにが『我々は便宜を与えた事は無い』だ! あの大嘘つきどもめ!」と声を張り上げ終わったところで仏暁の表情がガラリと変わる。
「——しかし、これだけで長期政権与党の政府が『日本人は韓国人に永久に尽くさねばならない』という『韓国発祥のカルト宗教の教義』を実践している、と言い切るには隙がある。つまり、尽くしているのは事実上『在日コリアン』という日本国内に居住する者達だけで、『韓国という国家そのものや、韓国本土に在住している韓国人に尽くしているわけではない』、と言われてしまえばそれまでだからだ」
「——そこで次の弾だ、」と言ってファイルを繰る仏暁。
(用意が、あるんだ、)とかたな(刀)。
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