第三百九十九話【摩訶不思議な政治スキャンダル『MK問題』と正真正銘の政治スキャンダル『政治献金キックバック問題』】
「〝唐突〟と思うだろうが諸君は『MK問題』を覚えているだろうか? 『奈良で暗殺された元首相が二つの学校法人に特別な利益を与えていた!』とASH新聞が大々的キャンペーン報道を展開した〝自称スクープ記事〟である」と、本当に唐突に言いだした仏曉。
「——元がキャンペーン報道の割に緻密とは言えず、いい加減なもので『K』の方はすっかり忘れられ、専ら『M』の方の問題となってしまった。しかも『M』の方も『国有地格安払い下げ事件』の筈だったものが
(なんなの? 変化球ばかりで来る)
(『演説』なのに先がまったく読めない)かたな(刀)始めこの場の聴衆はすっかり仏曉ペースで翻弄されているが〝これにもなんらかの意図がある〟という確証だけは誰もが心の内に抱いていた。
「——私は公共放送の一部番組、民放の一部番組、それらの報道番組を高く評価している。いずれも『韓国発祥のカルト宗教』をテーマとし、重大な情報を日本人に報せてくれていたからだ。だがたいていの報道は『韓国発祥のカルト宗教』の問題を『高額献金の問題』としてしか取り扱わず、教団の持つ真の価値観、教団の正体には斬り込まない。その程度でお茶を濁した上で『政治家が癒着していた』として報じる無難なものに終始していた」
「——しかしそうした〝なんとなくの腹立たしさ〟がどこかへ吹き飛ぶほどの悪質さという点で、まったく看過できない一部番組を放送したテレビ局がある」
「——『特定学校法人M』、これと『奈良での元首相暗殺事件』を結びつける印象操作をほどこした再現ドラマを造った民放テレビ局がある。私には『韓国発祥のカルト宗教』から目を逸らさせる稚拙な策略にしか見えなかったが、行為として実に許し難い」
「——『奈良で元首相が暗殺されたのは、元首相がMK問題を引き起こすような人間だったからだ!』と、そう印象操作し大衆にすり込む事を目的として、暗殺事件と『韓国発祥のカルト宗教』を結ぶ線、この印象を少しでも薄めようと画策したようにしか見えないからだ。だがこの再現ドラマを評価する者がいる。『慰安婦問題』で『左翼・左派・リベラル勢力』な日本人マスコミが使った〝論点逸らし戦術〟がここでも使われた事に気づけない愚か者がいる」
「——だがこうした工作を軽く見る事はできない。『左翼・左派・リベラル勢力』が永遠に『MK問題!』『MK問題!』言うのは勝手だが、これと『奈良での元首相暗殺事件』を結びつける印象操作をテレビ局がやったとなれば油断はならない。印象操作によって『慰安婦問題』が造られ日本民族に罪が被せられた歴とした事実があるからだ」
「——そこで念には念を入れ『MK問題』について、簡単にだが触れておく必要があると考えた。私は暗殺された元首相が『韓国発祥のカルト宗教』と癒着していた事を、日本民族を騙し裏切っていた許し難い背信行為だと考えているが、『MK問題』とやらについては別にどうとも思わない。なぜなら特定学校法人に元首相が利益を与えていたとする『MK問題』には、政治スキャンダルとして成り立たない〝構造的問題〟が最初からあったからだ。最初に『これでキャンペーン報道をやろう』と言い出した者は究極の無能である。誰も周囲に止める者がいなかったと見える」
「——このキャンペーン報道は明らかに内閣倒閣を目的としたものだったが案の定しくじった。しくじった理由は簡単だ。元首相は何らの利益も学校法人側から提供されていなかった。元首相が利益を得ていたという証明が無かった。ASH新聞は何の証明もできないまま報道に踏み切ってしまった。これが政治スキャンダルとして成り立たない〝構造的問題〟というその意味だ」
「——こういうものを政治スキャンダルとして成立させるためには絶対に外せない条件というものがある。『特定の学校法人に対する認可と引き替えに政治家が利益を得ていた』という、この構図でなければならない。ところがこの構図が成立しないのだから最初から政治スキャンダルとして成立のしようが無かったのである」
「——ときに諸君の中に、それでも『今さらMK問題など、』と考えた者がいるかもしれない。だが意味はある。元首相が現役の首相で長期政権を築き続けていたその時間に、実は正真正銘の政治スキャンダルが存在していたからだ。これが当時の時点で明らかになっていれば、それこそ『左翼・左派・リベラル勢力』な日本人マスコミが心底望んだであろう〝暗殺された元首相の内閣の倒閣〟、さらにその先、〝長期政権与党の政権そのものをひっくり返す〟事もできたろう。だがその当時は一切表に現れず、それが2023年秋頃になって、今さらながらに発覚した」
「——それが『政治献金裏金化問題』、いわゆる『キックバック問題』だ」
「——問題の概要はこうだ。政治家は『政治資金パーティー』という政治派閥主催の献金イベントを行う。身も蓋もない言い方をすればカネ集めだ。まあ集める事自体は犯罪でもなんでもない。ただ政治派閥はそれぞれの派閥所属議員に対し『お前にはこれくらいのカネを集めるノルマがある』と、あたかも最低売上目標のようなラインを設定していた。寄付は基本出す側の善意の筈だが、これだと寄付者に寄付を強要する事になりはしまいか、と若干引っかかるところはある」
「——こうしたノルマを課している方も、『ノルマだけでは人は動かない』と考えたのだろうな。『営業成績のいい者には報酬が必要だ』、という考えになった。だがその『報酬』というのが問題で、ノルマを達成しそれを超えた分については『お前の取り分に出来る!』事にしてしまった。俗に言う『キックバック』だ。しかしこういう事をやっている事がバレると寄付者から総スカンを食う可能性があり寄付が集まらなくなるかもしれない。『俺が出した寄付がお前の小遣いになるのか』では、寄付など出す気も起こらなくなるのは想像に難くない。だから『政治資金収支報告書には書かなくていい』という事にしたものと推察できる。かくして政治献金が〝裏金化〟し大問題となった」
「——しかし私は『極右』を自認する者だ。『政治とカネ!』などとお決まりのフレーズで政府攻撃などしない。そんな簡単でお手軽でなんのリスクも無い凡庸な政治攻撃など『左翼・左派・リベラル勢力』な日本人マスコミでもできる。私はヤツらが絶対に言えない事を言う。それが『極右』の存在意義というものだ」
「——天下のASH新聞が『なんとしてもアノ内閣を倒閣してやる!』と意気込んでいたあの頃、どうしてこの政治スキャンダルが表に出てこなかったのか?」
(そうか、これが今ごろ『MK問題』を持ち出した真の目的か、)と思い至り、合点のいったかたな(刀)。
「——報道に拠れば、長期政権を続けていた〝元首相がトップを務めていた派閥〟だけで政治資金収支報告書に記載されていなかった総額はおよそ6億8000万円にも上っていた。同派閥に所属する議員の実に9割に裏金が渡っていた。しかもだ、ここが肝心なところだが、これは2023年起点で遡ること5年の間に積み上げた総額なのだ」(https://www.nagoyatv.com/news/seiji.html?id=000335230参照)
「——また、長期政権与党の政治家の中に、政治資金収支報告書への不記載処理は『20年以上前から慣行的に続いていた。自分は一切知らなかったし、知る機会があれば議論していたはず』とよく解らない主張をする者もいた。『20年以上前から慣行的に続いていた』と言いながら『知らない』とはこれ如何に?だが『20年以上前から慣行的に続いていた』と国会議員の口から出てきたのは大きい」(https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/1402252.html参照)
「——奈良で暗殺された長期政権を続けていた元首相、この人物が首相の椅子にいつまで座っていたかというと、2020年9月16日までなのだ。つまりこの正真正銘の政治スキャンダルは短い方の〝5年の方〟を選択してさえ、彼が現役の首相を務めていた当時から間違いなく存在していた」
「——つまりASH新聞は、政治スキャンダルとして構造的に成立しない『MK問題』など造り出す必要など無く、それでも内閣倒閣が可能な材料はあったのだ! なにせその〝元首相がトップを務めていた派閥〟で政治献金が裏金化され、幹部全員が事情聴取されるくらいだからな!」
「——しかしASH新聞が心底憎んだ元首相が現役の首相だった頃、こうした問題は一切表に出てきていない。誰も問わないので私が問う。これはなぜだ⁉」
顎に手をあてる仏曉。
「——あの頃とはなにか条件が変わってしまった。なにかの変化が起きた、と考えるしかない」
「——2023年10月13日、長期政権与党の政府は『韓国発祥のカルト宗教』に対し、宗教法人法に基づき解散命令の請求を
「——この後じゃないかね? なぜか『政治献金を裏金化していた問題』、いわゆる『キックバック問題』が露見したのは」
「——試しに私は〝関連キーワード〟をかけてインターネット検索をしてみた。調べたいのは『政治献金を裏金化していた問題』、いわゆる『キックバック問題』がいつ頃から報道されるようになったのかだ。ネットで検索をかけると記事が配信された日付も表示される。その中で一番古いものは2023年11月18日であった。その中身は『東京地検特捜部が団体担当者から任意で事情聴取していた』というものである。(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE143UG0U3A111C2000000/参照)間違いなく長期政権与党の政府が『韓国発祥のカルト宗教』に対し、宗教法人法に基づく解散命令請求を
「——こうなると人は誰でも推理をしてみたくなるものだ。この問題が最短でも5年、最長で20年間、事が表に出てこなかったのはいったいなぜか? それは内情を知る者の口が固かったからだ。ところが2023年11月になって突然緩くなった。繰り返すが『キックバック問題』が表に出てきた時期は、長期政権与党の政府が『韓国発祥のカルト宗教』に解散命令請求をした後なのだ!」
「——その解散命令請求を出した文部科学大臣当人が『韓国発祥のカルト宗教』と癒着していたという報道があった。2024年2月7日付の新聞各紙にその記事は載った。翌2月8日付の記事では当該文部科学大臣が『韓国発祥のカルト宗教』の関連団体の推薦確認書に署名していたと、事実上認めたと報道された」
「——同年2024年2月22日に『韓国発祥のカルト宗教・解散命令請求』を巡って東京地裁が教団側と文化庁側、双方から話しを聞く『審問』が初めて開かれる予定になっていた。その直前のタイミングでのこの記事だった。記事の中には政治家側のこんな匿名コメントもあった。官邸筋、要するに首相官邸のスタッフの誰かという事になろうが『メディアを通して教団側が反撃しているのではないか』という声が存在し、或る政権幹部は『徹底的に戦う』と述べた、という」
「——しかし首相官邸のヤツらがこれだけしか考えていないのならあまりにピントが甘すぎる。『韓国発祥のカルト宗教』の招待に応じて〝その現場〟に赴けば、そこで写真くらい撮られて当たり前だ。『メディアを通して教団側が反撃しているのではないか』と疑うのなら、奈良で暗殺された元首相が現役の首相だった頃は露見しなかった『政治献金の裏金化』が、2023年11月になって初めて露見したのはなぜかを疑うべきだろう」
「——長期政権与党の内部に『韓国発祥のカルト宗教』のスパイが入り込んでいた、以外に〝答え〟があるかね?」
場内、ざわめく。
「——外国のスパイに易々と入り込まれ内情を掴まれる政権与党、こんな無能な者どもに国家の安全保障を任せられると思うか‼」仏曉は吠えた。
(怒り方が、やっぱり変化球だ、)と思うしかないかたな(刀)だった。
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