第三百九十八話【我々は〝思想的混沌〟を求める。なぜならその方が都合がいいからだ】
「——重要な事は二度繰り返そう。『左翼・左派・リベラル勢力』な日本人マスコミは〝思想的立ち位置〟に困り始める」言ったそのままに二度同じことばを口にした仏曉。
「——これも『韓国』のおかげだ。少々不謹慎だが間違いなく面白い状態になる」
「——我々が長期政権与党の政府を、『韓国』を絡めながら無能と断罪した場合、日本社会が思想的に混沌としてくるのだ」と仏曉。
かたな(刀)含め、今なにを言われているのか、誰も今ひとつピンと来ていないようであった。
「——諸君らは当然覚えている筈だ。『左翼・左派・リベラル勢力』な日本人マスコミは常に韓国の側に立ち日本民族を攻撃してきた歴史的事実がある。もちろん〝どっちもどっち論〟も韓国側に立った行為と断じている。『徴用工問題』とやらで日本側に何らかの配慮や行動などを求める勢力は、国際条約無効論者でしかない。結んだ条約を骨抜きにして利益が出るのは韓国側に限られる。日本は条約締結時に韓国に金を騙し取られた立場になり、金を騙し取った側が韓国となる」
「——また別の具体例をあげるなら『慰安婦問題』だ。『左翼・左派・リベラル勢力』な日本人マスコミは『日本軍慰安婦問題』については激しい攻撃を加えるが、『米軍慰安婦問題』にはダンマリだ。これはなぜか? 当然『偉そうにしていても結局ヤツらが臆病者だから』という理屈は成り立つが、『〝韓国を窮地に追い込みたくない〟という意志があるから』という理屈も成り立つのだ。現に当の韓国政府や韓国の言論界、韓国人大衆は『アメリカを慰安婦問題で攻撃したくない』という臆病者根性に支配されている。人権主義に則り『米軍慰安婦問題』を公然と追求できる極端な者はこういう所でも少数派なのだ」
「——つまり、我々『極右』が〝韓国を絡めつつ日本政府攻撃〟した場合、『左翼・左派・リベラル勢力』な日本人マスコミは政府側の勢力になるしかない」
「——今までもこうした構図に〝一瞬なった事〟があるにはあったが、その際は『極右が民族差別をしている!』という事にし、『人権』を絡める事によって『我々メディアは長期政権与党の日本政府の提灯持ちではない』というカムフラージュが可能であった」
「——しかし、『韓国発祥のカルト宗教』については日本民族の側を悪者にして長期政権与党の日本政府の側に付く行為を『正義』にする理屈は通じない。なぜなら今度はこちら側が『人権』を絡められるからだ」
「——『韓国発祥のカルト宗教』が日本国内でやった事は、『韓国人による日本人に対する人権侵害』に他ならない。『外国人による日本人に対する人権侵害』に他ならないのである。その日本人人権侵害に長年荷担してきたのが『韓国発祥のカルト宗教』の日本国内での活動を、放置どころか容認し癒着までしてきた長期政権与党である。そして『韓国発祥のカルト宗教』は明らかに〝韓国人の歴史観〟即ち『日本悪玉史観』をベースに、それを宗教化したものだ。この一点の曇りも無い韓国絡みの問題では〝韓国の価値観そのもの〟を攻撃しない限り今後も日本人の人権は侵害され続ける事だろう。私が『韓国発祥』『韓国発祥』と言ってしつこい程に韓国を強調しているのはこのためだ。だが『左翼・左派・リベラル勢力』な日本人マスコミにはこれができない。なぜなら連中は『韓国を護りたい』という情緒持ちだからである。必然的に〝韓国擁護〟のためにヤツらは長期政権与党の政府側に立つしかなくなるだろう。かくして旧態依然とした日本の言論構造は『左翼・左派・リベラル勢力』な日本人マスコミの行動によって破壊され混沌が生じるのである」
「——我々にとっては願ったり叶ったりだ」
「——ただでさえ政府を批判するとそれだけで正義のように見えるもの。我々が『韓国』を絡め政府を攻撃した場合、果たして『左翼・左派・リベラル勢力』な日本人マスコミは我々と同じ椅子に座れるものだろうか?」と挑発的に訊いてみせた仏曉。
(そうだ。同じ椅子には座れない。韓国絡みとなると〝左側〟からの政府批判は、下手をすると無いのかもしれない、)かたな(刀)はここで〝仏曉の言の意図〟を理解した。
(これじゃあ〝左側〟は全部『政府御用メディア』になっちゃう)
「——『大衆とは解りやすさを求め、複雑な思考などできない』、と言ったら言ってる事がほぼアドルフ・ヒトラーだが、長年日本の『左翼・左派・リベラル勢力』はそのヒトラーと同じ手口を使い続け日本の言論界を支配し続けてきた。それは〝解りやすく敵を絞る〟という手法だ。ヒトラーは『ユダヤ人』と『共産主義者』を〝我々の社会を脅かす敵〟とした。『左翼・左派・リベラル勢力』は『日本民族』と『日本目線の右派思想者』を〝我々の社会を脅かす敵〟にした。このように物事を単純化すると大衆を洗脳しやすくなるのだ。しかし、敵がころころ代わってしまうというカオスな状況が造れれば、こうした手は使えなくなる。我々に必要なのは自由な言論空間だ。極右台頭のスペースを造るには、こうした『敵を常に固定化しておく単純化』をぶち壊し、逆に複雑化させる事である。故に私が求めているのは〝思想的混沌〟なのだ」
仏曉が握り拳をつくる。
「——『極右』と聞いてなんでもかんでも『ナチス』『ナチス』と、結びつけるのは時代感覚が既に古い。それこそナチス時代というのは日本で言ったら昭和時代だぞ! ヒトラー政権誕生は1933年、昭和8年だからな。『昭和の頃のやり方はもう古くて通じない』だったんじゃなかったのかね?」
そうたっぷりと皮肉を込めた仏曉であった。
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