第三百九十五話【韓国人社会に於ける『親日派』認定】

「『韓国発祥のカルト宗教』の始末を韓国人にやらせる方法、それを今から諸君らに披露しよう」仏暁はたいそう自信のありげな様子で切り出した。


「——大韓民国本国の韓国人大衆に届くように、『韓国発祥のカルト宗教は』とメッセージを送ってやればいい」


(はぁ?)とかたな(刀)。場内にもまた『この男はいったい何を言っているのだ?』といった声調子のざわめきが広がる。


「——うん、この反応。きっと諸君らはこう思った事だろう。『日本人にあれほど危害を加えた奴らをとは何事だ!』と。きっと『韓国発祥のカルト宗教』の被害者達も同じ思いだろう」


「——が、私は手段を選んでいないだけだ」と平然とした表情の仏曉。


「——『韓国発祥のカルト宗教は』と、日本人社会に向かって言うのではない。、ここがキモなのだ」


「——韓国人社会に於ける〝親日派認定〟。それは『国賊』、あるいは『売国奴』という意味である」


「——では韓国人社会に於いて〝親日派認定〟された韓国人はどういう運命を辿るのか? アメリカ人社会に於いて〝反ユダヤ主義者認定〟されたのと同じ運命を辿る。そう例えたら解りやすいだろうか。早い話し、。しかもそれが〝正義の執行〟という事になる」


 仏暁、ニヤリ顔にさらに重ねるような笑みを浮かべる。

「——我々は韓国社会に定着しているこうした社会的性向を利用する。もう察しはついているだろう。『韓国発祥のカルト宗教』を大韓民国国内で『親日派』にしてしまえば、後は勝手に韓国人大衆が『韓国発祥のカルト宗教』を社会的に抹殺してくれる。奴らの本拠地の韓国で潰されてしまえば、当然日本国内の方も自動的に潰れるのは必然である」


「——では具体的に行こう。2022年7月8日、奈良で長期政権与党の元首相が暗殺された事件をきっかけとして、当該与党と『韓国発祥のカルト宗教』との癒着ぶりが広く知られるところとなったのは既に述べた。『韓国発祥のカルト宗教』は〝反共産主義〟の看板を掲げた団体を立ち上げ、これを名分として日本の長期政権与党と昭和の頃から超長期に渡り密接な関係を築き続けてきたのである」


「——事件からおよそ2週間後の2022年7月24日、或る地方紙に興味深い記事が載った。『暗殺された元首相と、〝韓国発祥のカルト宗教〟が造った〝反共団体〟の主張が、』、そうした論旨の記事である。国政政党に関わる全国レベルの記事なので、おそらくこの記事は通信社の記者が書いたと考えられる」


「——ところがこの記事は記事としては興味深いものの、総論としては残念なものだった。と言うのも『保守政治家と重なる主張』で終わりなのだ。だからマスコミは『左翼・左派・リベラル勢力』だというのだ。『浮かぶのは政治理念を巡る長期政権与党保守系議員と教団との多くの共通点。憲法改正や同性婚反対などで足並みがそろう』とシレッと書いているだけで、読者としては『その先は?』と訊きたくなるが、掘り下げがここまでで終わりなのだ」


「——私が敢えて固有名を持ち出さず、『のカルト宗教』、『のカルト宗教』、『のカルト宗教』と、何度も何度も繰り返して呼んでいるのはいったい何のためか? 〝〟という事を聴衆に意識させるためである。韓国とはなんだ⁉ 外国ではないか!」と右腕を大きく振る仏暁。


「——しかもただの外国ではない。だ」


「——ちなみにここまで断言すると『左翼・左派・リベラル勢力』がゴチャゴチャと何かを言い出すだろうが、連中は韓国の『』を『親日』だと思っている愚か者である可能性が極めて大であるから、こうした奴らの口にする事に意味も価値も無い。『用日』という語彙も知らない奴が知っている者を攻撃するなど愚物が賢者に説教するようなものである。常識で考えてみ給え。『日本の保守政治家』と『反日の外国人が造った組織』の主張が重なるなんて事があるだろうか? あるわけがない! そこには当然〝〟部分がある。つまり重ねるために、をしているのだ。それを本国の韓国人大衆が知ったら必ずや『韓国発祥のカルト宗教』を〝親日派認定する〟に違いないのだ」仏曉はさらに断言を重ねた。


「——そういう意味で『左翼・左派・リベラル勢力』な日本人マスコミの書いたしょうもない記事でも、使いようによっては『韓国発祥のカルト宗教』を滅亡へと追い込む材料になるのである」


「——2022年7月24日の同記事には奈良で暗殺された元首相と『韓国発祥のカルト宗教』が造った〝反共団体〟の主張が『三つのテーマで重なる』と書かれている。それは『同性婚』『防衛力』『憲法改正』である。むろんここでの焦点は〝元首相の主張〟ではない。『韓国発祥のカルト宗教』の造った〝反共団体側の主張〟こそが焦点だ。その具体的中身は順に『同性婚合法化反対』、『防衛力強化・スパイ防止法制定』、『軍隊保持の明記』である。これらが『韓国発祥のカルト宗教』連中の発刊する『思想新聞』や『2021年運動方針』などに記されており、いずれも根拠が明示されているものだ」


「——この中で韓国人大衆の逆鱗に触れるものが一つある」仏暁、指を一本だけ立てる。


「——『同性婚合法化反対』についてはアメリカ人でも反対する者がいる。こうした考えの人間はどの国であろうと一定数以上の割合で存在するのだ。よって別に外国人と意見が一致したとしても不思議無いし、そうした韓国人がいても韓国人大衆の逆鱗に触れる程のものでもない」


「——『防衛力強化・スパイ防止法制定』についてだが、こちらの方には続きがある。この後〝安全保障体制を確立する〟と続くのだ。件の〝反共団体〟を造ったのが韓国人である以上、『わが国』は『韓国』と読み替える事が可能で、むしろこちらの方が自然である。韓国人が〝韓国の安全保障体制を確立する〟と言ったとて韓国人大衆の逆鱗に触れる道理が無い」


「——しかし一番最後の『軍隊保持の明記』だけは別だ。なぜなら〝大韓民国という国は〟からである。これは〝の支持〟以外に解釈の余地が無い」


(に、日本軍か、)そのあまりに直截ちょくせつな表現に無音の衝撃を感じるかたな(刀)。


「——だからこう言って韓国人の大衆を煽ってやればいい。『韓国発祥のカルト宗教が』とな」


 ここで仏暁、大仰な身振り手振りを交え語り出す。

「——いやぁ、素晴らしきかな『日本軍』! 私は前々から『自衛隊』という呼び名は奇妙すぎると思っていた。『師団規模でも〝隊〟とはこれ如何に?』とな。陸上自衛隊は『日本陸軍』に。海上自衛隊は『日本海軍』に。航空自衛隊は『日本空軍』にするべきだ。特に『日本空軍』は重要で、戦前『空軍』なんて軍は存在しなかったから『日本空軍』があるだけで『戦前に戻る!』などという難癖がつけられなくなる事受け合いだ!」


「——これを『韓国発祥のカルト宗教が支持し応援してくれている!』と日韓交流サイトでもSNSでも使って煽ってやればいい。このネット時代、人間を煽るのはそれがたとえ外国人でも割と簡単だ。韓国語などできなくても日本語で書いても効果は期待できる。機械翻訳などとっくの昔から存在しているからな、日本語でも簡単に韓国語になるのだ」


「——日本人マスコミは『左翼・左派・リベラル勢力』の全体主義で、『韓国発祥のカルト宗教』が日本人にどれほど危害を加えていても、トップの韓国人に記者会見を要求しない〝どもばかり〟である。しかし本国の韓国人マスコミは日本のマスコミほど甘くはない。いよいよ騒ぎが大きくなればじきに『韓国発祥のカルト宗教』に対する糾弾記者会見が始まること受け合いだ。さすがに韓国本国での大火事となると〝日本人幹部が記者どもの相手をする〟では済まない」


「——その場で『韓国発祥のカルト宗教』の韓国人幹部どもが『日本軍復活を支持する』などと言えるわけがない。必死になって『我々は〝親日派〟ではない』と言い訳をしだすに決まっているのだ。そしてそのために『日本人は韓国人に尽くさねばならない』というを公にするほかなくなるのである。そのことばは当然韓国語で喋るのだろうが、我々が日本語の字幕をつけてやればいい。『韓国発祥のカルト宗教』の正体が露わになれば〝日本人信者〟を万単位で減らす事も夢ではない。つまり資金源を断たれた『韓国発祥のカルト宗教』は宗教法人の資格云々以前に、宗教として滅亡するのである」


「——しかしこの場にいるのは、口にするのは申し訳ないがご高齢の方ばかり。『インターネットで〝韓国発祥のカルト宗教〟を〝親日派〟と煽れ』、と言われてもやり方が解らないという向きも多い事だろう。むろんこの中に高齢でない聴衆も2名いるが、実際こういうネットを使った煽りが効果を生むためには1万人ほどの規模の実働部隊がいなければとても成功などおぼつかない」


「——だが仮に1万人ほどの規模の実働部隊を確保したとて、まだ懸念がある。それは『にどう対策しておくか』である」


「——『中立野郎』とは何か? それは私の造った造語である。その意味は〝表面上中立者のように見せかけているがその実韓国サイドについている野郎ども〟である。それは2002年のワールドカップで韓国サイドに立った笛ばかりを吹いていた審判員のような存在である」


「——我々のやろうとしている事は結果的に〝日韓関係の破壊〟となる。『中立野郎』どもは〝日韓関係の破壊を許さない〟という、我々日本民族からしたら実に下らない価値観に固執しているのだ」


「——私は先ほど『韓国発祥のカルト宗教』の関係者を引き連れて日本の長期政権与党本部までやって来たアメリカ元下院議長を話題にしたばかりだが、典型的な『中立野郎』はアメリカ人政治家、アメリカ人マスコミである」


「——また、『左翼・左派・リベラル勢力』でしかない日本人マスコミもまた典型的な『中立野郎』と言える」


「——これらの『中立野郎』は我々が『韓国発祥のカルト宗教』を潰す行為を『日米韓の連携に悪影響を与えている』とか抜かし日本政府を動かし、日本政府の権力を使って〝我々に法規制の網をかぶせる〟という手段を採るという事も考えられる」


「——韓国を相手にする時はそれくらい『最悪』を考えておかねばならない。2002ワールドカップはその事を教えてくれている。『審判が審判でなかった』などという事が平然と起こる。だから日韓関係に於ける中立者は疑わしいし、仲裁者に至っては限りなく黒に近いと、最低限これくらいの予想をし、こうした認識で臨む事が必要だ。これでもまだ甘いくらいだ」


「——したがって敢えて『闘争』という表現をするが、この『韓国発祥のカルト宗教』を巡る闘争は『味方か、さもなくば敵か』といった戦いで〝中立の立場〟などは存在しない。『中立野郎』はそう名乗った時点で我々日本民族の敵である。日本人は思想の左右問わず『外国を見習え』と言うのが大好きだが、この点少しはアメリカ人を見習うべきである。この際など『民主主義の側につくか、それともテロリストの側につくか』でいいのだ」


「——しかしだ、日本政府、即ち長期政権与党の政権は〝外圧で物事を決めている〟と、頭からそう信じ込むのもバカの一つ覚えではなかろうか。アメリカ人政治家やアメリカ人マスコミ、そして日本人マスコミ日本政府というのは、つまり長期政権与党の政権は、 連中がもし本当に日本人のための保守政党ならば、『韓国発祥のカルト宗教』などと癒着できる筈が無いだろう。コイツらも


「——アメリカ人政治家やアメリカ人マスコミ、そして日本人マスコミは日本国民に対し直接に権力を行使する事はできないが、日本政府即ち長期政権与党の政権だけは違う。コイツらは我々に直接実力行使が可能な権力を持っている。それは〝法で縛る〟という手段だ。だから奴らが『自称・中立の立場』から我々の行動行為を違法扱いするのは造作もない事だ。そして差別者として我々を葬り去る事も連中の権力なら簡単だ」


(いったいこれはどーいう展開?)と狼狽するかたな(刀)。

(もしや『政府を動かして味方につける』という発想がそもそも無い?)

 仏暁の言の異様さに場内の誰もが気づき始め騒々しくなってくる。そんな中、遠山公羽だけが一人顔に笑みを浮かべウンウンと肯いていたが、その動作に気づく者はいない————

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