第三百九十二話【『壺』と『終末思想』の点と線】

「ところで『韓国発祥のカルト宗教』の日本人信者は何も『結婚適齢期の女』ばかりではない。日本人信者のうち『結婚適齢期を過ぎた女』、それに『男』を、どう韓国人に尽くさせるつもりなのだろうか?」


「——それを考察するため、まずは2023年7月9日、日本の公共放送が放送した特集番組内へと話しを戻す。『韓国発祥のカルト宗教』の女トップの言いたい放題は密かに録音され、そのは日本のテレビ局へと持ち込まれた。この女トップは『日本は韓国のおかげで経済が大きく発展できたことを忘れてはならない』『韓国のおかげで日本がよみがえったのだからその恩を我々に返さなければならない』とも言っていて相当に腹を立てていた事がよく解るであった」


「——この女トップ的に一番怒り心頭だったのは『宗教法人の解散命令請求』についてのくだりだった。日本歴代最長政権であった元首相が参院選中奈良で暗殺されて以降、実行犯の動機と境遇が明らかになるにつれ、ここ日本に於いて『韓国発祥のカルト宗教』の置かれた立場は日々まずくなっていった」


「——そして立場が日々まずくなっていった連中がもう一グループあった。『日本の長期政権与党』である。『韓国発祥のカルト宗教』と長きに渡り癒着を続けてきた事が大衆に広く知られるところとなったからである」


「——『長期政権与党』は〝教団との癒着〟が自らの党そのものの政治生命にとどめを刺しかねないといった類いの直感だけはやけに敏感に働かせる事ができた。そして自らの党についてはろくな内部調査もせず議員個々人の自己申告で調査終了とする一方で『韓国発祥のカルト宗教』に対してはあまりに鮮やかに手の平を返した。自らの党の生き残りのために同教団に対し宗教法人としての解散命令請求を行ったのである」


「——こうして今までの関係を無かった事のようにして即座に自己保身を謀った『長期政権与党』の政治家達について、『韓国発祥のカルト宗教』の女トップは我々を追い込んでいると憎悪のことばを吐き、『』と言い切った」


「——『滅びるしかないだろう』と教団トップが言った」同じ内容を繰り返す仏暁。場内はシンとしたまま。


「——これが『韓国発祥のカルト宗教』が『終末思想』を持っているという動かぬ証拠だ」


(え? こういうカンジなの?)と虚を衝かれたかたな(刀)。〝こんなものでやけにあっさりと〟という感じがした。


「——頭に血が上った時に発せられるたったのひと言。それだけで充分なのである。それがその人間の正体というものだ。根が『終末思想型の宗教』だから自然に『滅びる』などと口から出てくるのだ」


(これは『国家安康 君臣豊楽』的な?)

 それは徳川家康が大坂城の豊臣秀頼に対し譲歩要求を突きつける口実とした〝鐘に刻まれた文言〟であった。大坂方の譲歩拒否によって大坂の陣開戦という流れになる。太平を大義名分としてもはや手段は問わないという意味がある。


「——ただ『韓国発祥のカルト宗教』の終末思想は『世界は無事で滅びるのは日本だけ』という、実に珍妙に感じる終末思想であるが、どのみち終末思想など『信仰心のある我々だけが助かる』という不合理思想であるから、或る意味これも王道の終末思想であると言える」


「——中に『〝滅びるしかないだろう〟は〝日本の長期政権与党〟に対して言ったのだ』、と言う者が出るかもしれない。『それを日本全体として当てはめる者は与党の廻し者だ!』という事にする戦術が予想される。『韓国』という存在を守るために」


「——だが生憎逆だ。大衆の廻し者になっているのが長期政権与党なのである。日本民族の中で『韓国発祥のカルト宗教は日本社会に必要だ』、などと考える人間は教団中枢に近い限られた信者くらいのものだ。今さらながらに大衆の顔色を窺っているのが長期政権与党なのだ。ただし今さら解散命令請求などしても遂に人気など出なかったがな。その時既に〝保身のため〟と大衆に見切られていたからだ。我々は忘れてはならない。長年に渡り奴らは我々の民族に危害を加えてきたのだ」


「——また、高額で信者に壺を買わせるからといって『韓国発祥のカルト宗教』を『霊感商法型の宗教』とするのは間違いだ。本当に奴らが『霊感商法型の宗教』なら『』とか『』とか『』とか言う筈じゃないのかね? 幽霊・霊感の類いから『滅びる』という発想は出てこない」


(言われれば確かに……)とかたな(刀)は思うが、やはり思い浮かぶは徳川家康の像。


「——では『壺』の意味とは何か? 宗教的な意味に於いて『終末思想』は『絶滅思想』ではない。終末思想の終末思想たる所以は『助かるには』という生存条件を提示している点にある。それを実践さえすれば助かるという。『韓国発祥のカルト宗教』にも当然その手の〝実践〟というものが存在し『日本人であっても終末を逃れ救済される道がある』としているのだ。これであの高額で買わせるが解ったろう? 『結婚適齢期を過ぎた女』、それに『男』の信者にはこうした〝実践〟を強要し。これが日本人に壺を高額で買わせるその意味だ!」


「——故に私はこの宗教を最初から『韓国発祥のカルト宗教』と断定しているのである」仏曉は言い切った。

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