第三百八十六話【カルト宗教の定義(仏暁の定義編)5 『ハルマゲドン』、その後の影響・インディアン編】

 『韓国発祥のカルト宗教』の話しをしている筈がいつの間にかアメリカの話しになっている仏曉の演説であったが、今のところ聴衆は温和しく傾聴している。言い出しっぺの雨土でさえその中にいた。


「最初期のアメリカ合衆国の国民はヨーロッパからの移民である。即ちキリスト教徒が圧倒的多数派である。ヨーロッパから渡ってきた連中だからヨーロッパの技術を持っている。中でも特に〝武器に関する技術〟については原住民が対抗できるレベルを超えていた。〝アメリカ大陸への移民集団〟は現地に於いて最初から強者集団であった」


「——そして強者集団は、〝超常現象的な力の助力〟など無くても『敵』を蹂躙し勝ってしまう。当然の事ながら『敵』にされた原住民はキリスト教徒達から見れば〝異教徒〟である」


「——『敵は異教徒』、この単純な条件に合致した上での勝利。この場合その〝勝ち〟が、勝って当たり前の勝ちであってもその強者集団の意識の中では『神の意志』になってしまうのだ」


「——そして『神は常に正しい』は絶対の前提だ。こうして即ち、『勝った戦いは正しい戦い』という扱いになるのだ。こうして『インディアン』は悪者にされた」と仏暁、平然とを口にした。


「——今なにげに『』と言ってしまったが、この現代、アメリカ大陸の原住民の事を『インディアン』などと言うともれなくアメリカ人から差別者認定される。現にアメリカ大リーグの『クリーブランド・インディアンス』の球団名が変えられてしまっている。2021年にそう決定された。アメリカ人的には心底〝良いことをしている〟つもり、らしい。『インディアン』という呼称はアメリカ社会的に廃止され、現在『』と呼称しなければならなくなったようだ」


「——しかしこれこそが『歴史修正主義』というものではないか? 『アメリカン』には当然『アメリカ人』という意味があるが、『〝アメリカ合衆国〟という国家の建国以前に既に〝アメリカ人〟がいた』、などというのは完全なイカサマな歴史観じゃないか」


「——百歩譲って『アメリカン』の語源が原住民の言語から来ているのならともかく、『アメリカ』なんて名前はイタリア人探検家の名前にちなんでドイツ人の地理学者が命名した名前に過ぎないのだぞ。原住民とは全く無関係なヨーロッパ人由来の名前だ。『インディアン』という言い方が間違っていると言うのなら『ネイティブ・アメリカン』もまた間違っている言い方だ。こんな〝ニュー・ワード〟を発明しアメリカという国家も無いのにアメリカ人がいたというアメリカ人に都合が良すぎるイカサマ歴史観に書き換えるより、『コロンブスがインド人と勘違いしたから〝インディアン〟と呼ぶ』、こっちの方がまだ歴史認識としては良心的というものだ」


「——そう言えばそのコロンブス排斥運動がアメリカ国内で起こっているようだ。もはや私には『インディアン→ネイティブ・アメリカン化計画』の一環、としか考えられない。動機はおそらく『他人の土地を奪ってアメリカという国家を造った』と言われたくないためだろう。そこで元々住んでいた人間達をアメリカ人にしてしまい、そこへ移民が加わってアメリカ合衆国という国家を造った、という歴史に書き替えたいのだ。そうすれば『他人の土地を奪って』という非難を回避できるからな。しかしアメリカ合衆国という国家が無いのに最初からアメリカ人がいるわけないだろう! 『ネイティブ』と『アメリカン』をくっつけて両立させる事などできない! 『ネイティブ』は後から『アメリカン』化されたというのが真実だ!」


「——これを聞いたらアメリカ人連中は頭に湯気を立て沸騰するだろうな。何しろ『勝った戦いは正しい戦い』という価値観だ。『我々は原住民と戦い勝った。だから我々には〝神〟がついている』のだと。だから原住民の呼び方をどう変えようと構わないと、『〝インディアン〟を〝ネイティブ・アメリカン〟にしてしまう事は正しい』と、そう考えているに違いないのだ」


「——その証拠がさっき触れた『クリーブランド・インディアンス』の改名だ。『人種差別的な名称だとの批判を受けたから』というのが表向きの理由だが、移民系アメリカ人の『アメリカ大陸占領』のための手段は原住民どうしを対立させ互いに殺し合わせる事だった。私にはその再現にしか見えず、どこにも良心というものが見いだせない。だから何度でも言ってやる! 『ネイティブ』と『アメリカン』をくっつけて両立させる事などできない! 『ネイティブ』は後から『アメリカン』化されたというのが真実だ! 何が『ネイティブ・アメリカン』だ。それは正しい原住民の呼び方ではない! 正しくもないアメリカ人の価値観に我々が服従する必要など無い。アイツらはいつまで自分達が『神の代理人』だと思っているのか」



 と、ここで一拍の間をとる仏曉。

「——なぜ私がここまで手厳しいか? 簡単だ。になっているからだ。やられた者は忘れないという事だ。韓国の話しをリクエストされてなぜ話しがアメリカへと行くのか? それは『韓国発祥のカルト宗教』から日本民族を守ろうと思ったら、ヤツらが種本とした価値観をまず手厳しく批判しておく必要があるからで、その種本の影響を最も強く受けているのがアメリカ人であるとしか考えられないからだ」

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