第三百八十話【『韓国発祥のカルト宗教』と言える者、言えない者】

 かたな(刀)の網膜に仏暁の不思議な笑みが焼き付いた。


「——さて、この場に気づいてくれた者がいる事を喜ばしく思うぞ諸君! 〝この件〟に関し我々の方からは『左翼・左派・リベラル勢力』を


 仏暁の宣言に場内がざわめく。〝この言〟によりこの場の誰しもが、この主張が従前のパターンと異なっている事に気がついた。


「——『左翼・左派・リベラル勢力』は基本日本人にだけ厳しい基準を設け攻撃して来るろくでなし野郎どもである。それはほぼ『マスコミ』と同義であり『外国人絡みの案件』だとほとんど必ず外国人の側に立ち我々日本民族の方を〝悪〟とするのである。なのに未だヤツらに対する〝一定の信頼のようなもの〟が日本社会には残っている。それには理由がある。『外国人が絡まない』の場合だとからだ。


「——ところが『右翼・右派・保守派勢力』の方は、必ず政府攻撃をするわけではない。それどころか政府の押し進める政策を支持し応援したりする」


「——と言うと途端に『右翼・右派・保守派勢力』からは反発を食らうだろう。『なんでもかんでも反対していたら左翼や左派やリベラルと同じではないか!』と。そう言われれば実に〝もっともらしい〟のだが、暗殺された元首相は北方領土二島返還でロシアと平和条約を結ぼうとしていた。それについて『右翼・右派・保守派勢力』がどれほど暗殺された元首相に抗議していたというのか? その活動について何ら記憶に無いのは私だけか? 何もやっていないのであれば記憶に残らないのも至極当然。これで果たして『右翼・右派・保守派勢力』の事を是々非々でモノを言う勢力と認めていいものだろうか? これでは『長期政権与党サポーターズクラブ』でしかない」


「——とまれ『右翼・右派・保守派勢力』の話しはここでの本題ではない。『韓国発祥のカルト宗教』の件で明らかに明白にのは『極右』だけであるという事だ。『左翼・左派・リベラル勢力』はヤツらの性向からして中途半端な政府攻撃となるしかない。その性向とは〝謎の韓国びいき〟である。韓国人が絡んでいるが故に〝長期政権与党に対する攻撃の手〟がどこかヌルくなる。それはつまりという事だ」


「—— 一見『左翼・左派・リベラル勢力』は、『韓国発祥のカルト宗教』を批判しているようで、実はしていないのだ。その証拠にヤツらは『』と口にしなくなり、『』とは最初から口にしていない!」


(あっ、そう言えば、)とかたな(刀)。


「——より解りやすい話しをするなら、『韓国発祥のカルト宗教』が『左翼・左派・リベラル勢力』のメディアの前でたびたび記者会見をしたが、どういう訳か出てきて喋っているのは日本人だけ、というのは変じゃないかね?」


「——組織ぐるみの不祥事が起きているのに、記者会見するのがなぜかいつも部長クラスであると、こういう事なのだぞ! 韓国人がトップなのだから記者どもは『あんたじゃ話しにならない。トップが記者会見場に来ないのはなぜですか? 出して下さい』と要求すべきじゃないのかね? 例えばだ、現にN大のアメリカンフットボール部内で大麻が蔓延していた件について、トップが釈明のために駆り出されていたではないか。記者の中にはそのトップに向かって『辞任のつもりは無いのか?』と訊いていた者さえいたぞ。なぜ韓国人相手だと同じことができない?」


「——『左翼・左派・リベラル勢力』の追求は『韓国発祥のカルト宗教』の問題を〝純粋な財産問題〟にすり替えているまやかしの追求に過ぎない。政府に〝補償問題〟を突きつけているだけ、カネの問題にしているだけなのだ。これでは突きつけると言ってみても実際の所『ここから逃げられるよ』という〝非常口の案内〟に過ぎない。これは政権側にとって非常に都合の良い追求のされ方で、政権的には金銭的な補償にだけ道筋をつければ問題を幕引きにする事ができる。『左翼・左派・リベラル勢力』こそが政府与党を応援している応援団なのだ」



 ここで仏暁、僅かの間を取り〝すっ〟と息を吸った。

「——この際ハッキリと言っておく。『壺』『壺』などと言っているうちはこの問題の〝真の根っこ〟には決して辿り着かない。『価値不相応の値で壺を売りつけられたのが問題だ』などと、ここを問題にしているうちは絶対に問題は終わらない。かつて1993年に問題となった時と同様に、ほとぼりが冷めた後に同じ問題が再び繰り返されるであろう」


「——真の問題の根は『そのガラクタ壺を日本人に』だ。日本人に何を吹き込んだらガラクタと札束を交換させる事ができるのか? それは『補償』の問題とは別次元の、当該宗教のという事だ。『左翼・左派・リベラル勢力』は『左』ゆえに唯物論でしか宗教を語る能力が無いのかもしれないが、」と、左側陣営を小馬鹿にしたかのような物言いの仏暁。


「——しかし『左翼・左派・リベラル勢力』を無知無学無教養と決めつけるのは早計だろう。ヤツらは『韓国を傷つけてはならない』『韓国を護りたい』という日本人からしたら理解し難い感情によって主張をしている可能性が極めて高いのだ。韓国のために『日本人被害者には金を払えば解決だ』で、純粋に財産権の問題だとして幕を引こうと考えているに違いない。現に解散命令請求時にもう既に『信教の自由とのかね合い』がどうのこうのとご託を並べていたではないか。どうやら『左翼・左派・リベラル勢力』は『韓国発祥のカルト宗教』も日本国憲法を使って保護したいらしい」


「——翻ってこちらは『韓国発祥のカルト宗教』と、『韓国』『韓国』連呼し、加えて『カルト宗教』とくっつけて呼んでいる。これだけでも『左翼・左派・リベラル勢力』には耐えられそうにないが、その上我々が『韓国発祥のカルト宗教』の教義の追求を始めた時、必ずや『左翼・左派・リベラル勢力』は本性を現す。我々の方からは『左翼・左派・リベラル勢力』を攻撃対象とはしなくても。きっと『左翼・左派・リベラル勢力』は『韓国発祥のカルト宗教と結びついた政権と与党』ではなく、厳しく指弾を行う我々の方に向かって矢を放って来る事だろう。長期政権与党の利益になる行動をとるのだ。かくしてここに奇妙なねじれ現象が発生する。『左翼・左派・リベラル勢力』が政府の犬となり、大衆の信用は現在以上にがた落ちする。その結果『極右』と名乗りながら我々の方に大衆の支持が集まってしまう芽がいよいよ出てくる」


「——この過程においてがいよいよはがれ落ちる事だろう」


(え? いま『右』って言った?)とかたな(刀)。


「——その時『右翼・右派・保守派』が我々の側の応援してくれると思ったら大間違いだ。日本の『右』もまた〝韓国を守りたい〟という理解し難い感情を有している場合が珍しくない。何せ『左翼・左派・リベラル勢力』から『右翼だ』とか『極右だ』とか散々言われ続けてきたのが暗殺された元首相だ。或る意味これで既に答えは出ている。『日本人より韓国人!』という価値観を持つヤツらが『左』や『右』を自称しようと、我々がそっくりそのままその立場を認めてやる必要など無いのだ!」


(全方向へ戦争を仕掛ける気なの?)


「——そこでここからは敵方の戦術予測だ。『韓国発祥のカルト宗教』、こうした呼び方が『差別的だ』として、寄せ手は必ずここから攻めてくる。その際『韓国発祥』の方は否定のしようがないから『カルト宗教』の方に噛みついてくる事だろう。『それはレッテル貼りだ!』とな」


「——そうした〝見え透いた手〟を予測し、少々面倒だがあらかじめ〝〟をハッキリさせておく必要があるだろう」仏暁は宣言した。

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