第三百七十六話【国際サッカー連盟のヨーロッパ役員達VS韓国人 韓国人の勝ちにござる】
仏曉がその解説を始める。
「『韓国人達に付け入る隙を与える勝利』というその意味は、ドイツ代表は韓国代表に1–0の僅差でしか勝利できなかったという意味だ。仮にこの試合でドイツが韓国相手にゴールラッシュし、4–0や5–0で勝利できていたなら、付け入る隙など与えなかった事だろう」
「——ではなぜドイツは1–0の勝利ではダメなのか? それは審判員の国籍についての隙があるからだ。この2002ワールドカップ『韓国VSドイツ戦』の主審はスイス人であった」
「——通常、ワールドカップ本大会の審判員は〝それぞれの対戦国が所属する大陸連盟からは選ばれない〟事になっている。審判員は対戦チームの所属する大陸連盟以外から選ばれる。具体的に解りやすく言うと、例えば韓国の決勝トーナメント1回戦の『韓国VSイタリア戦』の主審はエクアドル人であった。だから『韓国VSドイツ戦』の主審がスイス人だったというのは実はおかしいのだ。ドイツもスイスも同じ『欧州サッカー連盟』の所属だからだ」
「——ワールドカップ2002年大会を〝日韓共催大会〟としてしまった時点で国際サッカー連盟には規約もへったくれもないデタラメ集団だと分かったが、ヨーロッパの国が出る試合の主審をヨーロッパ人にできるとは! 国際サッカー連盟のヨーロッパ人役員どもの政治力も実にたいそうなものだ!」と、皮肉たっぷりにあたかも韓国に味方するような発言の仏暁。
「——現に韓国に於いては2002ワールドカップの『韓国VSドイツ戦』の審判がスイス人だった事について、『中立性を欠く人選だ』との批判が上がっていた。確かにアジアの代表チームとヨーロッパの代表チームの対戦で、主審をヨーロッパ人にするのも問題なのに、『ドイツ代表』の試合の主審を準ドイツ語圏とも言えるスイスから選んでしまったのは隙をより大きくしただけの人選だった」
「——もちろん、国際サッカー連盟のヨーロッパ人役員連中からしたら、『信用のできる者を選んだらたまたまこうなった』というスタンスなんだろう。そして当時、韓国人以外の世界のサッカー通達も『このスイス人主審のジャッジメントは公正だ』と評価した。しかしだ、それは2002年当時の話しではないかね? あれからもう20年以上の時が流れている。今やすっかり昔の話しとなり、いきさつなど知らない人も増えてきている事だろう。当時のいきさつを確かめるためには20年以上前の試合である2002ワールドカップの、少なくとも『韓国VSイタリア戦』『韓国VSスペイン戦』『韓国VSドイツ戦』の3試合もの録画映像を見る必要があるが、そんなものを今どき見ようとする人間がどれほどいるだろうか?」
「——すると奇妙な記録だけが残る。『2002ワールドカップの韓国VSドイツ戦の主審はスイス人であった』という、」
「——つまりイタリアやスペインと異なり、韓国代表に勝利したドイツでさえ『試合に勝って勝負に負けた』という立場となってしまっているのだ。この私が範疇に入るかどうかは微妙だが、何も事情など知らない若者が『2002ワールドカップの韓国VSドイツ戦の主審はスイス人であった』という話しを聞けば、『腑に落ちない事だ』として、その心に刻まれてしまう事になる。かくして『中立性を欠く人選だ』との批判の方が、時間が経てば経つほど、それに比例し力を増していくのは必然なのだ。つまり長期的には韓国人の主張の方が勝利してしまう可能性が非常に高いのだ」
「——こうした『好ましからざる事態』を国際サッカー連盟は予測した節がある。いや、厳密な表現をするなら国際サッカー連盟のヨーロッパ人役員達がこうした将来予測をした節がある。彼らヨーロッパ人役員達の立場に立って考えるならば、彼らにとって最も恐ろしいのは『記憶の風化』なのである。こんな事であってさえ〝歴史を語り継ぐ〟というのは難しいものだ」
「——それを防ぐための手は2002ワールドカップの僅か2年後、〝2004年に打たれた〟と考えられる。国際サッカー連盟は表向き『国際サッカー連盟創立100年記念』だとして〝映像記録集〟を造った。とどのつまりDVD化だ。そのタイトルは『FIFA FEVER』という。その中に国際サッカー連盟公式認定という形で『世紀の10大誤審』なるパートがあった。なんとこのうち4つもが2002ワールドカップの韓国代表戦のジャッジメントで占められた。要は国際サッカー連盟公認として将来に渡って『韓国VSドイツ戦の主審がスイス人であった事』の正当性が疑われないよう、いわば先手を打ち広く広報活動をしたのだ」
仏暁手元のファイルを1枚めくり目を落とす。
「——それらを具体的に紹介していくと『韓国VSイタリア戦のトンマージのゴールがオフサイド』、『同じく韓国VSイタリア戦でトッティがシミュレーションを取られてイエローカード2枚目で退場』、『韓国VSスペイン戦でモリエンテスのゴールがファウルの判定でノーゴール』、『同じく韓国VSスペイン戦でホアキンのクロスがゴールラインを割っていたとして、モリエンテスのゴールが取り消し』の、以上4つである」
「——しかし、これに噛み付けるのも韓国人という異民族である。或る韓国記者は件のDVD『FIFA FEVER』についてかくの如く主張している。『「FIFA FEVER」が選定した10大誤審のうち8つが欧州の国が違う大陸のチームから被害を受けた事例という点は、欧州中心の排他的な視点が感じられる部分だ』と。要約すると『国際サッカー連盟は人種差別的だ』と言っているわけだ」
「——しかし私にはこれが『負け犬の遠吠え』には聞こえない。敗北したのは国際サッカー連盟のヨーロッパ人役員の方であった」
(え?、)とかたな(刀)、仏暁がどちらの味方をしているのかが混乱して解らなくなる。
「——『お前は〝極右〟などと名乗っていながら韓国などの味方をするのか!』と怒りの声の矢が私に向け飛んできそうだが、『国際サッカー連盟の公式DVDが何と言ったかを思い出してみ給え』としか言えない。『誤審』としか言っていないじゃないか!」
「——『誤審』だけでは、なぜ2002年の韓国代表戦ばかりで誤審が起こるのか、何の説明にもなっていない!」
「——当時の世界の大衆レベルのサッカーファンは『誤審』などを疑ってはいない。そんなものは見れば一目瞭然だ! 『買収』をこそ疑っていたのだ! 単に『誤審』と表現するのみでは、故意か過失かの区別をつけていない。むしろそこから意図的に逃げている」
「——ワールドカップ本戦の『韓国VSドイツ戦』の試合で主審がスイス人だった事を正当化するためには『誰が買収されていないかを基準に審判を選んだらこうなるしかなかった!』と言わねばならなかった」
「——しかしだ、国際サッカー連盟は遂にそれは言えなかった。もし国際サッカー連盟が公式に審判買収を認めたら、2002ワールドカップは大会そのものが無効大会になるしかないからだ。優勝も勝利も得点も何もかもが無かった事になる。もしもそんな事になればサッカー・ワールドカップの権威は地に落ち、世界中のサッカーファンから総スカンを食い、役員達もワールドカップ利権にありつけるサッカー貴族生活を続ける事ができなくなる。だから『誤審』としか言えず、『買収疑惑』の追求など遂にできなかった」
「——したがって、韓国代表のワールドカップベスト4も国際サッカー連盟公認の公式記録のままである。こんなものがアジア最高位として残っている。公式記録としてアジアの頂点に君臨したとして韓国人達は鼻高々ができるかもしれないが、韓国人以外のアジア地域の人間達にとってこれはアジアの不名誉、アジアの恥と言える。これを消すためには上書きするしかない。つまり日本代表には本大会決勝まで勝ち残って貰わねばならない」
(なんてハードル!)とかたな(刀)。
「——ついでにもう一つ、余談的な事に触れておくと、2002年当時以前、ワールドカップ本大会に於いてどういうわけか『ブラジルVSドイツ戦』はただの一度も実現していなかった。『ワールドカップ優勝回数を競うこの両雄が直接対決したらどちらが強いのか?』は当事国以外の者でさえ関心事であったが、この〝夢の対決〟は2002ワールドカップで、それも決勝戦で実現してしまうという絵に描いたような展開となった。——のだが、試合結果は、というと2–0でブラジルが勝利してしまった。つまり、ドイツの方が格下になった。正に2002ワールドカップはヨーロッパ人連中にとって踏んだり蹴ったりの大会となった」
「——だが日本民族にとってはこの状態、デジャビュの筈だ」
(おお、久々のフランスかぶれ)とかたな(刀)。
「——それはつまり我々からしたら〝既視感〟がある。国際サッカー連盟のヨーロッパ人役員達のやった事は、その思惑は別にして『韓国人のための行動』でもあった。彼ら国際サッカー連盟のヨーロッパ人役員達の尽力で韓国はワールドカップ日本単独開催を潰せた。半分韓国で開催する事に成功した。ここには〝これも彼らのおかげ〟という恩がある筈だ。しかしその韓国は、ヨーロッパ連中に対し恩を仇で返したのである」
「——先ほど〝或る韓国人記者〟という個人レベルの考えを紹介した。この記者が国際サッカー連盟の名の下に造られた件のDVD、『FIFA FEVER』が取り上げた10大誤審について、『10大誤審のうち、8つが欧州の国が違う大陸のチームから被害を受けた事例という点は、欧州中心の排他的な視点が感じられる部分だ』とさえ主張している件について、今一度立ち戻ろう。韓国人にありがちな〝被害者意識全開的思考法〟からしたら、私にはこれが特異な個人の特異な主張のようには感じられない。或る種普遍的な韓国人を感じる」
「——最初から『欧州中心の排他的な視点』という考え方があったのなら、国際サッカー連盟の会長はあのブラジル人会長のままでよかったんじゃないのかね? 韓国はその『欧州中心の排他的な視点』を利用しヨーロッパ人役員達と結託しブラジル人会長を追い込み韓国自身の利益に変換したというのにな。さしずめこれは『用欧』だ。ヨーロッパ人は韓国人に利用されただけだった。日本人も韓国人達が困った時だけ利用される『用日』の被害を受けているが、役に立つときは利用して役立てた後は恩を仇で返す。或る意味日本人以外にもこれができるという点で、私は韓国人達に感心できる」
(『感心』って、本来ぜったいこんな使い方じゃない)と、かたな(刀)。
「——いずれにせよ2002年の韓国代表戦の疑惑の判定を『誤審』としか定義できず、『買収』と言えなかった時点で、ヨーロッパ人連中は韓国人という民族に敗北したのである。いったいヨーロッパ人連中はなんのために日韓共催にしたんだろうか? ただ、物事には〝例外〟というものがある。ワールドカップ日本招致団はイングランドの会長から『日本が単独でやるのがいいとは思わない』などと言われていたと紹介したが、当のイングランド代表は本大会1次リーグは『埼玉』『札幌』『大阪』、決勝トーナメントに入っても『新潟』『静岡』と、日本でしか試合をやっていない。日韓共催を推進しておきながら或る意味実に悪運が強い」
「——とは言えこれはあくまで〝例外〟で、2002ワールドカップに良い思い出の無いヨーロッパ人の方が多数派だ。そして連中は日本人とは違い『報復』は確実に行う。この点について、私はヨーロッパ人達に感心できる」
(『感心』って、本来ぜったいこんな使い方じゃない)と、またかたな(刀)。
「——2002ワールドカップの話しはもう終わったが、国際サッカー連盟の話しには今少し〝続き〟がある」仏暁は言った。
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