第三百七十話【20余名での多数決】

 〝やれやれポーズ〟をとった割には疲れた様子も見せず喋り続ける仏暁。

「私は既にヒントを口にしている。『アジアサッカー連盟』から出す国際サッカー連盟副会長を決めるのに何票が要ったか? クウェート人王族10票+韓国財閥のボンボン11票+日本人候補2票。足した合計、たったの23、有権者はたったの23人。この中で過半数を獲るだけでいい。ワールドカップ本大会もこれと同じだったという事だ」


 そう言って仏暁は例によって手元のファイルを繰る。


(そうとう用意周到だ、)と唖然として感心するかたな(刀)。今となっては日韓共催ワールドカップはそれ自体がそれほどの韓国ネタなのだと、改めて深く感じていた。


「——ざっと私が調べたところワールドカップ開催国は1930年開催の第1回大会から1982年開催の第12回大会までは〝〟によって開催国は決定していた。ところが、1986年開催の第13回大会以降、選び方がマトモではなくなった。〝〟方式に変更されてしまったのである。コレが何を意味するかと言えば、連盟理事、このうちので開催国が決まるという事だ」


「——だからこそ『メキシコ』という変わった場所でワールドカップを開催できたのかもしれない。そういう意味で考えると一応肯定面はある事はある、」


「——しかし一方で、どこか腐敗の臭いが漂ってくる開催地決定法である。巨額のカネが動く世界的イベントの割に〝小中学校のクラス委員選挙の規模〟以下だ。日韓が招致を競っていた当時だと有権者は21名、そのうち過半数の11票を獲ればそれで開催地決定であった」(https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/fc598d09d12fe91426f1dcb2974a2bb26590caa0参照)

「——その中に自国から1人送り込めればそれだけで1票確保。その上内部からなら外部からのアプローチよりも他の理事達に対し働きかけやすい。悪いことばで言うと工作活動がしやすい。もっと悪いことばで言うと買収工作が実に容易な開催国決定法だ。これが日韓が副会長職を争った背景だ」


「——つまり緒戦で敗れた日本は招致合戦に於いて早くも不利な戦いを強いられていた」


(そうか、そういうことなのか、)とかたな(刀)。


「——ここからはちょっとした雑知識。開催地決定のしくみを改悪した時の会長が〝あのブラジル人会長〟であった。そういう意味では〝良い会長〟ではなかったと言える。ただその後、〝スイス人会長〟になってもこのやり方は変わらず、俗に『2015年FIFA汚職事件』と呼ばれる国際サッカー連盟汚職事件の後、2018年6月に行われた2026年大会開催投票から〝〟に再び変更され、元へと戻った。そしてさらに、その投票には〝〟事となった。日本人視点では『2002年大会開催投票時にこうしたルールだったなら』、と今さらながらに歯ぎしりするのみである」


「——強調したいのは日本がワールドカップを開催した2002年大会の招致の頃は、だったという事なのだ。日本が招致に立候補した時代のワールドカップの開催国は少数の理事の投票で決まっていた。ここは絶対に押さえておかねばならない事実だ。そして大韓民国と韓国人はこうした腐敗したシステムを利用する点に於いて遙かに日本人にまさっていた」


(スゴイ、『日本が韓国に負けた』とここまで言い切っているのに、全く韓国を賞賛しているように感じさせないなんて——)ただただ圧倒され続けるかたな(刀)にこの場内————

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