第三百六十八話【遅れてきた男、韓国財閥のボンボン】

 仏暁の話しが続いている。

「1993年10月28日、ほんの紙一重、ロスタイムの失点で日本はワールドカップアメリカ大会出場、ワールドカップ初出場を逃してしまった事は既に述べた。この同日深夜、突然大韓民国は〝ワールドカップ自国開催の立候補意志〟を示したのである」(https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/483f04d6d36b9ba3cbd0ff88d1d57f56260b2755参照)


「——『ドーハの悲劇』の夜、日本中が悲嘆に暮れていると言って過言で無いその夜に、わざわざワールドカップ開催に立候補表明する韓国。それだけでは飽き足らず、〝日本人なら絶対に覚えておいた方がいいことば〟を曰った韓国人の男がいた」


「——『日本が一度も出場していないワールドカップに、我々は3大会連続4度目の出場を今日果たした。我々こそがアジアで最初のワールドカップを開催するにふさわしい』だと」


「——そんなものが理由になるのなら『我々は大会連続度目の出場を果たしている。我々こそがアジアで最初のワールドカップを開催するにふさわしい』でも充分立候補の理由たり得た。なにせ日本は一度も出ていないのだからこの1994年大会でも言えた筈だ。なのになぜもっと早く立候補表明しなかった?」


「——それはたった1人の韓国人の男の妄言なのか? ノンノン! ワールドカップを韓国で開催すると表明するからには当然背後に『大韓民国』という国家がいるのだ。日本人が手ひどい精神的ダメージを負っている最悪のタイミングで攻撃を仕掛けてくるのが大韓民国という国家とその国民なのである。これは第二次大戦・日本敗戦直後にその態度が豹変した事実とも被る事案だ。なにせ『自称・連合国民』なのだからな」と仏曉、またしても韓国の『自称・連合国』をチクリとつついた。


「——敢えて、韓国をひいき目に見積もってもコイツらがこの時の最終二次予選をトップで通過していたら『ふさわしい』云々を口にしても〝しょうがない〟と、ただ唇を噛むしかないのだが、この1994年大会のアジア最終予選のトップはサウジアラビアで、本大会でも16強進出。それに比べ韓国は日本のロスタイムの失点による棚ぼたの出場権ではないか。そして本大会ではその過程に相応しい案の上の成績だ。韓国は0勝1敗2分けで本大会決勝トーナメントには進めていない。今さら〝2分け〟など誉める気も起こらない。結局ワールドカップ本大会での韓国の初勝利はだったしな」


「——ここからは『日本が一度も出場していない』などとつけなくてもいいことばをつけた〝韓国人の男〟が何者かについて迫っていこう。それは韓国サッカー協会の会長であった。この者こそが大韓民国から日本へ向けて放たれた刺客、しかしサッカーの専門家ではない。その正体は『韓国財閥HNDグループ』、そのボンボンである!」


「——〝ボンボン〟とはなんだ? と諸君らは思った事だろう。『韓流ドラマ』と呼ばれる韓国制作のドラマがある。その現代版ドラマの方に『財閥』なるものがしきりと登場する。財閥とは金融から重工業までありとあらゆるを網羅した企業グループで、しかもそれらが血で繋がっている。即ちそれら経営形態の企業グループなのである。たいていの場合は〝政商〟でもある」


「——以前韓国と北朝鮮が蜜月状態にあった時代、共同で『ケソン工業団地』なる経済特区を北朝鮮国内に造った事があった。その時分その〝経済特区〟に大規模投資を行っていたのが『韓国財閥HNDグループ』であった。北朝鮮に投資するなど普通に考えたら自爆行為以外の何物でもなく、案の定その後『ケソン工業団地』は丸ごと北朝鮮に接収されてしまい投資は丸損となった。しかし『韓国財閥HNDグループ』は別に潰れてはいない。『国策に積極的に協力する政商だから』、以外に答えはない。韓国サッカー協会の会長はその韓国の政商一族の出身なのである。だから『ボンボン』と言った」


「——とまれ、韓国が立候補を表明し、、大韓民国もワールドカップのを立ち上げる。かくして日韓によるワールドカップ招致合戦の火蓋は切られた」


「——日韓最初の勝負は『国際サッカー連盟の副会長職をどちらが獲るか』の戦いから始まった。つまりは選挙。そして日本は韓国に敗れた。これが躓きの第一歩となった」


「——なぜ敗れたかを私なりに分析すると、日本側が〝副会長に〟と立候補させた人物は生粋のサッカー屋であったからだ。もちろん日本側そのものが立候補者本人だけではなくその背後も丸ごとサッカー屋であった。『サッカー屋とはあまりに蔑んだ表現ではないか』、と腹を立てる向きがあるのかもしれないが、この表現が一番解りやすいのだ。選挙に勝つには『これを私がやります!』という有権者へのアピールが必須であるが、日本側にできることはサッカーに関する事のみだった。コーチの派遣・育成年代の交流だとか、そんな〝地道な貢献〟しかできない。早い話し


「——しかし敵は韓国財閥のボンボンだ。例えば財閥傘下のHND自動車の販売権に絡めた〝ビジネスの話し〟で票集めの駆け引きもできる」


「——これが真っ当な選挙ならこうした運動は〝公職選挙法違反〟なのだ。早い話しそういうのを買収と言うのだ。が、なにせ。今となっては負け犬の遠吠えにしか聞こえないのが難だが、」


「——ところで、この中にこう疑問に思った者がいないだろうか? 『韓国内では財閥面で大きな顔ができるんだろうが、結局韓国の企業だろう? 韓国製の車の販売権などヨーロッパの連中が欲しがるか?』と。または『ヨーロッパの連中が日本からのコーチの派遣・育成年代の交流などを〝日本の貢献〟と認めるか? むしろ〝ヨーロッパが日本に貢献している〟と思われるのがオチではないか?』と、」


「——それについての答えは、国際サッカー連盟の組織の仕組みを知れば理解できる。韓国人でも日本人でも、国際サッカー連盟の副会長になるのにヨーロッパ人は。またしても話しが韓国から横へ逸れてしまうのはご愛敬、しばし我慢し聞き続けてもらいたい」と仏暁は話しが脱線する事への予告を兼ね〝断り〟を入れた。

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