第三百六十六話【韓国人は政略に長けたる民族・悪夢の2002日韓共催W杯 序編】

「まずは或る高名なプロサッカー選手のことばを紹介しよう、」そう口にして仏暁は例の動作、ファイルを繰り始めていた。その手が止まる。仏暁の口が動き始める。


「——『2006年大会の代表招集に私はNoと言ったんだ。そして、イタリアは優勝した。運命だったと思う。それでも自分は素晴らしい時間を過ごしたよ。とはいえ、本当にもう一度やり直したい試合は、2002年の韓国戦になるだろうね。それまで自分は審判に対して怒りを覚えたことは一度もなかった。だが、率直に言って、あの日はムリだった。自分の中にある最悪をぶちまけた。妻から学んだスペイン語にも助けてもらってね』」


 仏暁の顔が上がる。

「——これを言ったプロサッカー選手の名は『パオロ・マルディーニ』。ポジションはサイドバック及びセンターバック。『アズーリ』ことイタリア代表として126試合にも出場。ワールドカップにも1990年、1994年、1998年、2002年と、4回もの出場を果たしている。そして彼にとって最後のワールドカップとなった2002年にはイタリア代表キャプテンを務めていた」


「——さて、こうした談話の中身からしてこのことばはイタリアが優勝国となった〝2006年以降〟に語られたもので間違いないが、4年以上が過ぎてなお悪夢として人の心に刻まれ続けているとは相当なものだ。それが彼にとっての、いや、全イタリア人にとっての、と言ってもいいのかもしれないが、それが2002年のワールドカップなのである」


「——そしてこの年のワールドカップは不幸なことにだった」


「——こうした体験は、我々日本人にとっては他人事ひとごとではない。或る意味我々も同じなのだ。サッカー日本代表が、日本代表がワールドカップ本大会の決勝トーナメントに残った初の大会でもだ」



「——さて、諸君の中にはこう思っている者がいるかもしれない。『2002年から何年経っているのか』と。『20年以上昔の事より語るべきはより近い直近の問題であるべきだ!』『それは元首相暗殺事件の引き金ともなった韓国発祥のカルト宗教、奴らが日本人に危害を加えていたことだろう!』と、」


「——しかし大韓民国という国家と韓国人というその民族を知る上で、2002年日韓共催ワールドカップは今なお色あせないなのだ。故に何年経とうと〝とっかかり〟はまずここになるしかない」

 ここまで言って一拍の間をとる仏曉。


「——私はアメリカ人、中でも特にアメリカン・リベラルについて、事実上〝韓国に何度も騙され、いいように操られ続けるアホウ〟という意味の事を言っている。しかしだ、これは何も本質を見抜く能力を欠くアメリカ人の無能ぶりをあざけっているわけではない。韓国人の手にかかればアメリカ人のみならずヨーロッパ人までもが簡単に手玉にとられる。その結果が異例の、ワールドカップ史上初となった2002年共催大会なのである」


「——孫子曰く、『彼を知り己を知れば百戦あやうからず』。韓国人の長所とはなんだろうか? 韓国人という連中はに長けたる民族なのである! その点については日本民族は明らかに負けている」


(『政略』って、『政略結婚』とかいうし、あまりイイ意味無いよね、)

(〝長所〟とか言っててもそれ、厳密には誉めてないんだけど、)と内心で突っ込んでいるかたな(刀)。


「では『政略』とは何か? 〝或る目的達成のために行うはかりごと〟の事である、〝はかりごと〟とは謀略の『謀』と書く。この文字には特に〝悪事を企てる〟という意味がある」


(そこまでダメ押しするのか——)とかたな(刀)、そう思うしかない。


「——ここまで言っておかないと人間失格ならぬ〝極右失格〟になりかねない。『韓国人の方がアメリカ人やヨーロッパ人より優れていると思っているのか⁉』と、どこからかこの私が、かの有名な〝〟というやつをされてしまいかねない」


「——だがもしもそういう事を言う者がいたとして、私はそうした彼らにはこう言ってやる事だろう。『韓国人達を蔑称で呼べるほど我々は韓国に勝っていない。だ』とな。その認識が無いから現状延々敵に負け続けているのだ」


「——と、同時に反対側の陣営、『左翼・左派・リベラル勢力』からもまた、或る意味似たような反応が予測される。私が『大韓民国とその国民』を〝敵だ〟と言った事について、『左翼・左派・リベラル勢力』はバカの一つ覚えで『民族差別だ!』とさえ言ってさえおけば『簡単に勝てる』と思い込んでいる節がかなりある」


「——だがお生憎様だ。〝我々を旧態依然とした思想区分で処理できると思うな〟、そういう事だ」とあたかものような事を言ってのける仏曉。


「——『敵』というのは手強いから〝敵〟というのである。対戦相手を〝敵〟と認める事は相手に対する敬意だ。では〝差別〟という現象の構図とはなにか? 『対象を劣った者と認識している』、これである! 現に弱い相手については『敵にならない』ということばの表現法があるではないか! 囲碁でも将棋でもスポーツ競技でも受験勉強でも、割と広範囲に通じることばだ」


「——その〝対象〟、即ち韓国人という民族に政略的に連戦連敗し続けてきたのが我々日本民族だ。韓国人達を差別し見下しているうちは、この先も政略的に連戦連敗を続けるぞ! だから同じ事を繰り返し言う! 『彼を知り己を知れば百戦あやうからず』だ!」


(これは……〝いい人〟、なのだろうか?……、いちおう、韓国人差別には反対の立場のようだし……)と頭が混乱してくるかたな(刀)。


「——ただし、敵と言ってもそれは。間違っても好敵手とは言わない。それが大韓民国という国家と韓国人である。日本という国家と日本民族を窮地に立たせるためには連中だ」


(えぇ……)さらに頭の混乱に拍車がかかるかたな(刀)。


「——連中がそうした目的を達成するための〝手段〟もこっちは先刻承知している。以前『頂き女子』とか自ら名乗っていたふざけた女が逮捕されたというニュースがあったが、その女は自分が『おぢ』と呼ぶ〝中年男性層〟から自身が金を巻きあげるだけでなく、『巻きあげ方』のマニュアル本まで造って同類の女達に売っていた。その中身を極めて簡単に述べると〝〟というもので、例えば『毒親に苦しめられて生きてきた』とかいった、〝身の上話的なテーマ〟で嘘をつく事を勧めている」


「——まったく聞けばだ。こんなものはとっくの昔から韓国人達は使っていた」


 かたな(刀)の目には、

(確か……どんなイジメ問題も解決してしまう敏腕中学教師だったんだよね?……)と映っていた。

 イジメ対応のエキスパートだったはずなのに目の前で可哀想な話しをされても〝感情移入もしなかった〟ように見えていた、のであった。


「——『我々は過酷な植民地支配された!』とまず言っておき後は様々な尾ひれをくっつければいいだけだ」


(コレ、ぜったい〝同情〟よりも〝観察〟が先に来るタイプだ、このヒト、まるで性格の悪い名探偵みたいなヒトだよね——)


「——先に私は『韓国人によってアメリカ人は操られヨーロッパ人は手玉にとられる』、という話しをしたが、いつもいつも韓国人達が勝つわけではない。それが可能となる〝条件〟というものがある。もう既に『過酷な植民地支配云々』と触れた後だ。既に諸君らも察しがついている事だろう」と、人を試すようなことばを吐く仏曉。

 しかし質問等、実際に試すことなく、よどみなく話しを進めていく。


「——韓国と日本が争っているというケースのみで欧米人は韓国人の政略にまんまと嵌まる。日本をかたき役に仕立て〝いかに韓国自身のことを可哀想に見せるか〟、これで欧米人からの同情を買う。ありきたりの推測だがおそらく『ナチス』というワードが大活躍していた事だろう。これが『毒親』に該当する。これでコロリといく様は正にさっき言った『おぢ』そのまんまである。『おぢ』とはとどのつまりカモであり最終的に損をさせられる存在なのである」


「——人間、誰しも時間とともに中年になるのは避けられずそこは仕方ないが、『おぢ』などにはなりたくはないものだな」仏曉がそう言うと場内から苦笑が漏れた。


「——ワールドカップの2002年大会をのは国際サッカー連盟の当時のヨーロッパ人役員どもであった。が、この連中はまさしく『おぢ』であった。当時の連盟内部事情的にはトップの〝ブラジル人会長憎し〟という感情があった」


「——その会長は『カネに汚い』とか『権力を欲しいままにしている』とか定番の悪口雑言を放たれていたようだが、別にこういうものは糾弾側が正義とは限らない。ことサッカー熱についてこの会長はと私は睨んでいる」


「——と言うのも1990年代以前のサッカー界が『ワールドカップ』と大会名を銘打っていても、それはアメリカ野球の『ワールドシリーズ』よりも少しばかりマシな程度の『ワールド』に過ぎなかった。というのもヨーロッパ人と南米人だけが当事者で、この二つの地域以外の地域の人間からしたらほぼ全く関係が無い。興味すらほとんど無く傍観者とさえ言えなかった。その頃当事者でもないのに一生懸命ワールドカップなど見ている者は仕事でやっているかマニアかのどちらか一方という状態であった」


「——ワールドカップをこの状態から新たなステージ、真の『ワールド』な大会にするために必要なのは、『ヨーロッパでもなく南米でもない地域、それもあまりサッカーが盛んでない国で敢えてワールドカップを開催する事だ』と、このブラジル人会長は考えたようだ。特にアジア地域でのワールドカップ開催に格別にこだわった。サッカーに対する志が高いのはさすがブラジル人といったところだ」


「——これは私事となるが私が真面目に『教育評論家』などをやっていた頃から私を支援してくれる親御さんとはその信頼関係から親しく雑談などしたりする間柄だが、或る日話題がサッカーとなった。話しは昔のサッカーの話しとなり、そしてじき日韓共催ワールドカップの話しになった」


「——これについて彼の言った事が妙に記憶に残っている。言ったことばが『日本はサッカー後進国としてヨーロッパ人に軽く扱われた』だ。これは〝彼の場合〟に過ぎないのだが怒りは韓国と言うよりはヨーロッパ人に向いていた」


「——というのもブラジル人会長はヨーロッパ人役員達の圧力に抗しきれず、ワールドカップを史上初の2カ国共同開催としてしまう。こう言ってはなんだが、『メキシコ』でさえ単独開催だったのにな。これが1986年の事だ。そういうものが相まっての『ヨーロッパ人に軽く扱われた』というあの親御さんの憤りだったのだろう」


「——で、共催推しで韓国側についたヨーロッパ人役員達はについて当時『どうせ犠牲になったのは日本だけ』と内心思っていたろうな。しかし自らのそうした行動が後に自らの身に恐るべき災厄をもたらすとは思ってもいなかったろう。2002年大会の開催地決定から本大会までをつぶさにみていけば、いかに韓国人が政略に長けた民族であるかが解る。ではより具体的に続けよう——」と、まるで講義でもするようかのように話しを続けていく仏曉である。

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