第三百四十七話【『結婚できない男』たち】
仏曉の話しは続いている。
「昨今の若者の意識調査をすると『結婚願望』がかなり低めに出る。問題はその理由であるが、元々人間が信用できなくて結婚願望が無いのか、結婚したいが経済力に乏しく、したくてもできないと諦めて結婚願望が無いのか、どちらかまでは分からない」
「——ただ事実としてハッキリしている数字はある。先に述べたSNK新聞の記事にはこんな数字が明示されている。『千葉県』という限定されたエリアの話しとはなるが、25歳から39歳まで、即ち〝結婚出産適齢期〟とされる年齢における〝男女別の未婚率〟の推移の数字だ」
「——千葉県においては1980年における25歳から39歳までの男の未婚率は26.5%だという。西暦ではなく元号で表すと昭和55年だ。こんなに昔から結婚適齢期に結婚していない男性が全体の4分の1ほどもいたとは少なからず衝撃的な数字である。ではこの同年における25歳から39歳までの女の未婚率がいかほどかというと、9.9%なのだ。つまり〝結婚出産適齢期〟に結婚していない女性は全体の10分の1程度だ。繰り返しとなるがこれが昭和55年の昔の事なのだ」
「——では比較的最近の数字はどう変化しているのか? 『昭和』ではなく『令和』の数字がどうなっているかだ。諸君らの予想通りだと言っておこう。より悪くなった。2020年というから令和2年だ。この年における25歳から39歳までの男の未婚率は51.3%まで増加している。なんと過半数越えである。ではこの同年における25歳から39歳までの女の未婚率がいかほどになったのかというと39.4%にもなっている。ほとんど4割である」
「——これらの数字から間違いなく言える事がある。それは昔も今も〝男ほど結婚しにくい〟というのがこの社会の現実だという事だ」
「——私には婚活はしてみたものの、経済力を理由として結婚を断られ続け、遂には人間が信用できなくなり、結婚そのものへの意欲も失ってしまったというハイブリッド型の理由が多いように思える。これらの数字から既に答えは出ているのではないか。『異次元の少子化対策』という政策は、本来『受益者世代』といえる同じ世代であってさえも、結婚のできるできないで〝受益者〟と〝非受益者〟に分断してしまう政策なのである」
かたな(刀)は密かに唇を噛む。こんな話しをされると、一人の女性として究極の二択を求められている、そんな気がしたのであった。真実気が滅入るような選択を——
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