第三百三十六話【かの有名なフレーズ、『外交で解決すべきだ』】

「私は『左翼・左派・リベラル勢力』の特徴を『〝理想的な方策〟を空虚だが美しい言葉で喋る事』だと言った。その中の有名なひとつに『外交で解決すべきだ』というものがある。『LGBT』の方については耐用年数はどれほどかとはなはだ疑問であるが、『外交で』の方の耐用年数は無限大と言っていいだろう」


「——日本の隣国は脅威ばかりだ。『中国』『ロシア』『北朝鮮』、どれもこれも核兵器を保有し日本と日本人に絶えず軍事的緊張を与えている」


「——この日本人の生命に関わる問題をどう解いていくか、『左翼・左派・リベラル勢力』の解法が『外交で解決すべきだ』であり、連中に言わせれば〝日本の軍備増強〟など論外なのだそうだ」


「——確かに『軍備増強を!』と言っておけば勇ましい。しかしそれはタダではできない。軍備の増強のためには予算が要るし、よって当然税金の方がただでは済まないだろう」


「——『これは日本の安全を守るための必要なコストだ!』という主張は成り立つだろうが、この貧富の格差の拡大した現代日本では、これに賛意を示せるだけの心の余裕というか、懐の余裕のある日本人がどれほどいるのか、といった状況だ」


「——こんな中『左翼・左派・リベラル勢力』は美しいことばを喋るのだ。『外交で解決すべきだ』と」


「——何しろ『外交』にはあまりお金は掛からない。基本〝口で何事か喋っている行為〟なのだからそれも当たり前と言えば当たり前。ただこの主張には重大な瑕疵かしがある。ひと言で言うと『中身が無い』、これに尽きる」


「——具体的にどのような外交アプローチを『中国』『ロシア』『北朝鮮』に対し行えば日本が置かれた軍事的緊張状態を解消できるのか、その具体的やり方を『左翼・左派・リベラル勢力』は口にしないのだ。何かやり方のようなものを口にしたかと思ったら『粘り強く話し合わなければならない』とかいった程度のもので、それも『日本の外務省』という他者に要求しているだけ。言い出しっぺの自分達に何のアイデアも無いのにどうして他者に容赦なくアイデアを求められるものか。厚顔無恥というか図々しいにも程がある」


「——だいたい〝〟などと言っている時点で最初からなのが丸わかりじゃないか。これっぽっちも考えてもいない。『交渉を続けているのみで、何かしらの事をやり遂げている事にしよう』と、そう言う気マンマンである。時間が度外視なのだからだ。現に『中国・ロシア・北朝鮮』と交渉した結果、彼らが軍縮に応じた』などという事は無いのである」


「——美しいことばだけで成果ゼロ、それさえも容認するのが『外交で解決すべきだ』という価値観である。にも関わらずこの空虚なことばがなぜ〝使えることば〟として、未だに使用に耐えうるコトバとして通じ続けているのか? これは〝戦争に対する恐怖〟ゆえ通じ続けていると見るしかない。つまりこれは『情緒的主張』なのだ」


「——これは『外交交渉を続けている間は戦争にはならない』という、『話し合い万能主義』とも言うべき価値観が日本人の精神にこびり付き無意識レベルで共有されているからに違いない」


「——しかしだ、戦争をするには準備を整える必要がある。『話し合い万能主義』は場合によっては交渉相手国に対する〝時間稼ぎの奨励〟になってしまう。つまり話し合いなど万能ではない。現実問題、時と相手とを選ぶのである」


「——さて、ここまでは『左翼・左派・リベラル勢力の言うことはいかに空虚であるか』をあげつらっているだけで、『極右の方が大衆に利益を与える事ができる』と、そうした話しを私はひと言も話していない」


「——というわけでここからだ。私はそのための手段を『外交で解決すべきだ』とする」


(へ?)とかたな(刀)。場内もざわめく。『話し合いは万能ではない』と言われた直後に『外交で解決すべきだ』なのだからこうした反応も当然。


 かたな(刀)さえも思う。

(話し合いの通じなさそうな相手とどうやって外交を?)

(——っていうか泡沫極右に外交なんてできるわけがない。そもそも何の権限も無いのにそんなの外国が相手にするわけないじゃない!)瞬時にそうした結論に到達したのであった。

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