第三百三十三話【日本の男女間格差は『146カ国中116位』なのか? それとも『191カ国中22位』なのか?】

 〝利益〟の観点から『極右』の主張の方が『左翼・左派・リベラル勢力』の主張よりも『利益になる』と言い切った仏曉。次にこんなことを喋りだした。


「——『彼を知り己を知れば百戦危うからず』の故事もある。そこで我々の敵、『左翼・左派・リベラル勢力』に非常によく見られる面白い特徴を紹介しておこう。それは『〝理想的な方策〟を空虚だが美しい言葉で喋る事』である」


「——これが毒にも薬にもならないくらいならまだ『これも愛嬌』と、苦笑いで済ませる事もできるのだが、奴らの〝理想的な方策〟を実行してしまったばかりに〝前より悪い社会〟が現在進行形で実現しつつあるのだ。これはもう存在する事すら許されない究極の無能勢力と断ずるしかない」


「——『左翼・左派・リベラル勢力』の中における昨今の流行は『LGBT』と口にする事である。要するに『性的マイノリティーに市民権を認めよ!』と言っているわけだが、これが単なる社会に対する〝啓蒙活動〟ならば、これに異議を唱える方が〝悪人〟となるだろう。何しろ平等を求めるこの〝美しいことば〟を否定するのだからな」


「——しかし『左翼・左派・リベラル勢力』の奴らと来たら、『権利を!』などと言い出し、を欲しがっている。国家権力に『法律で国民を縛れ』と言っているのだ。何の事もない。反国家権力のフリをしながら国家権力の力でもってこの社会を〝特定の価値観〟で支配しようとしているのだ」


「——百歩譲って『左翼・左派・リベラル勢力』が社会に植え付けたがっている〝特定の価値観〟がまともなものならともかく、そこは所詮『』なのだ」


 ここで仏暁は一拍の間をとり、右手人差し指を立てる。

「——そうした価値観の中で、これまた連中の中での流行となっているものが『ジェンダーフリー』という価値観である。これもまた『左翼・左派・リベラル勢力』は大好きだ。これを文章化すると『男女の性差を無くそう』となる。『性によって格差があってはならない』。これもまた実に〝美しいことば〟だ。なにせ平等を求めている」


「——もちろんことばだけは美しいがその背後に『日本を貶めよう』というお馴染みな意図があるようにしか私には見えない。というのも、常にセットになって『報道』されているのが『世界経済フォーラム』なる存在が発表している『ジェンダーギャップ指数』だからだ。これが何かと言えば『男女格差に関する国別比較の報告書』なのである。つまり国別に順位をつけランキング化するのだ」


 仏暁は手元のファイルを一枚繰り目を落とした。


「——この『ジェンダーギャップ指数』の2022版のデータでは『日本は146カ国中116位』という順位になっている。これを『左翼・左派・リベラル勢力』の連中が好んで利用している。『日本ほど男女格差のある国はない!』といった調子の『報道』をするのだ」


「——どこかで聞いた事があるような話しだとは思わないかね? これの意味は『女性を虐げる国日本!』だ。何のこともない、奴ら『左翼・左派・リベラル勢力』は〝〟をしているのだ。いわゆる『慰安婦問題』もその中身はとどのつまり『女性を虐げる国日本!』という意味になっているからな。奴らは未だにこうした〝日本イメージ〟の強化に励んでいる。『ジェンダーフリー』も『慰安婦問題』も根は共に同じなのだ」


「——話しは少しばかり脇に逸れるが、『左翼・左派・リベラル勢力』がその主張の根拠としている『ジェンダーギャップ指数』にどれほどの絶対的根拠があるか、その点につき述べておこうと思う」


「——『ジェンダーギャップ指数』の事を『GGI』とも言うが、これが唯一絶対無二の〝男女格差を表す基準値〟かというと、実はそうとも言えないのだ。非常に紛らわしい表現となるが『GII』という価値基準もある。これを日本語にすると『ジェンダー不平等指数』となり、発表者は『国連開発計画』である。こちらの『ジェンダー不平等指数』の方も国別の順位をつけている」


「——となると気になるのはに拠った場合、『日本は何位になるのか?』となるだろう。同じく2022版のデータでは、なんと『日本は191カ国中22位』で、率直に言って『なんだ、上の方にいるじゃないか』と誰しもが率直に思う事だろう。となると『ジェンダーギャップ指数とジェンダー不平等指数はどう違うのか?』もまた、誰しもが思うところとなるのは想像に難くない」


「——日本のランキングを世界116位とした『ジェンダーギャップ指数』は、『教育』『保健』『経済』『政治』の4分野で〝男女格差〟を計るとする価値観だ」


「——まず教育分野の中身は『識字率・初等教育就学率・中教育就学率・高等教育就学率の男女比』となっている。高等教育の中身を〝大学進学率〟と定義されると、日本が引っかかってしまいそうなのはこれくらいだろう」


「——保険分野の中身は『出生時性比・平均寿命の男女比』となっている。以前に聞いた話しであるが、中国では出生にあたり〝男の子〟が生まれる方が一族やイエにとっていろいろと都合が良かったらしい。そしてかの〝一人っ子政策〟もあり、せっかく懐胎しても出産前に女の子と分かってしまった場合『生まないで堕ろす』という選択も珍しくはなかった。そのため〝男ばかりが生まれる〟という状態になり、自然に任せた状態でさえ若干男の方が多く生まれるというのに、人為的な手が加わったためにかなりアンバランスな男女比状態となった。しかし日本に於いては『出生時性比』の差があるなどとは聞かない話しだ。また『平均寿命の男女比』を男女格差の指標としてカウントするというのは違和感しか感じない。総じて女性の方が平均寿命が長くはないかね?」


「——経済分野の中身は『労働参加率・同一労働における賃金・推定勤労所得・管理的職業従事者・専門技術の男女比』となっている。日本がランクを落とされる原因は間違いなくここだろう」


「——また政治分野もまたその原因となっているのは間違いない。政治分野の中身は『国会議員の男女比・閣僚の男女比・最近50年における行政府の長の在任年数の男女比』となっている」


「——結論を述べよう。『ジェンダー不平等指数』の方の中身に言及する前にもう結論が出てしまった! 『世界経済フォーラム』なる存在が発表している『ジェンダーギャップ指数』はいかがわしい価値観である! どれほど改革しようと順位が大幅に変わりようのない価値基準を思いつく奴らは邪悪な存在である! 諸君らには私が何をもってこうまで断言しているか、既に想像できている筈だ。『行政府の長の在任年数の男女比』というのは何だ! これは50年ごとに発表しているランキングなのか? 違う! 1年おきだろう! ならここは普通『昨年度における』となるのが真っ当というものだろう!」


 仏暁が吠えると場内から一斉に拍手が涌く。


「——こんな価値基準を根拠として『女性差別社会の国・日本』などと吹聴している『左翼・左派・リベラル勢力』もまた邪悪な存在である。奴らは正義ではない。奴らの中に新聞社やテレビ局など記者連中が少なからずいるが、やっている事は『報道』ではない。『宣伝』だ。排日プロパガンダだ。我々はこれ以上悪党どもに正義面をさせておくわけにはいかない! 悪党どもが正義面をしてきてもそれはあくまで〝ツラ〟に過ぎず正義そのものではないのだ!」


 とまたここで場内から拍手。


「——しかし私は極右だ。『左翼・左派・リベラル勢力』ほど邪悪ではなく誠実な存在だ」仏暁がそう言うと一転場内から笑いが漏れた。

「——だからキッチリと『国連開発計画』が発表している『ジェンダー不平等指数』についても言及しておこう。『ジェンダー不平等指数』もまた『教育』『保健』『経済』『政治』で〝男女格差〟を計るとする価値観である。その中身はそれぞれ順に『中・高等教育への男女進学率』、『妊産婦死亡率・15〜19女性の1000人当たりの出生数』、『男女の労働力率』、『国会議員の女性割合』に基づいて〝ジェンダー不平等〟を数値化したものである」


「——この二種類の基準を比較した結果ハッキリと分かった事がある。『ジェンダーギャップ指数』なる価値観は〝〟をことさら重視し上昇させる事を要求する価値観でもある。だから『国会議員の女性割合』程度では満足せず『閣僚の男女比』まで加わる。教育についても、つまり〝高校〟についての顧慮は行わず、高等教育つまり〝大学〟時点からの男女比の比較となる。『管理的職業従事者の男女比』というものもあったし、さっきの〝50年〟云々の後には『行政府の長の在任年数』と続いていている」


「——諸君らには私が何のためにどこへ向かってこの話しをしているのか、徐々に見えなくなってきているのではないかと推察する。長々と話してきたが要はこういう事だ。『左翼・左派・リベラル勢力』は『日本と日本人を貶めるという目的のため味方面みかたづら』、そういう連中だという事例を挙げ、予め明瞭にしておく必要があったという事なのだ」

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