第三百十九話【他人の労働で利益を得る『株式会社』という奇怪な制度】
「『株式会社』、それも〝一部上場企業〟となれば、そこへ入りたがる就活生も多い。一流大学・難関大学・有名大学の卒業見込み者でなければ入るのは難しい、というのが一般的な常識である。そしてそうしたいわゆる大企業に入れれば、いわゆるエリートという事になり、同じ世代と比較して『勝ち組になった』という事に、世の中はなっている。だが、果たして本当にそうかね?」
「——そうした新入社員も、入社して何年かすれば戦力として『株式会社』という組織に利益をもたらす。だがその利益の全てが、社員に還元されその『株式会社』という組織のさらなる発展のために使われるわけではない」
「——『株式会社』という組織は、利益を出せば出すほど〝内部留保〟としてかなりの額を株式会社内に積み上げていく」
「——だが『極右』を自認する私でさえ一概にそうした『株式会社』の行為に悪罵を浴びせる事ができない。なぜならそれは〝有事の際に使用する資金〟と言えるからだ」
「——別に〝有事〟と言っても必ずしもそれは『自然災害』や『戦争』に限定はされない。『株式会社』が貯め込む内部留保は、『株主』という連中、中でも特に『モノ言う株主』とやらが仕掛けてくる敵対的買収に抗うために使う戦費でもあるからだ」
「——その『モノ言う株主』の主張の専らは、『俺達の言うとおりにすれば株価は上がる。そうして俺達にもっと配当を寄こせ』である。もちろん〝モノ〟を言わなくても『株』というものは持っているだけで『配当』という名のカネが入ってくる。株を持っているだけで、他に何もしなくてもだ」
「——労働は他人にやらせ、自分達は寝転び続けていても自動的にカネだけが入ってくる。しかも近頃は平然と『もっと寄こせ』と曰うようになった。さもそれが『常識』であるかのように。これはあたかも『奴隷階級と貴族階級』のような関係ではないか。『労働者』をやっている以上、一見それがどれほどエリートに見えようと『株主』に渡す配当のために働く奴隷なのだ。かくして『株式会社』という仕組み自体が今や〝奇怪な制度〟と化してしまったのだ」
「——昔々の日本は、『株』という実に奇妙な概念且つ物体を会社同士で互いに持ち合ったものである。この場合の『配当』はそれぞれの会社の発展や社員の給料として還元されるため、同じ『株式会社』という仕組みであっても『奴隷階級と貴族階級』のような関係にはならなかった。いわゆる『日本株式会社』というやつだ」
「——ところが、こうして上手く回っていた日本社会を『閉鎖された日本市場』などと攻撃したのがアメリカ人という連中である。奴らを満足させる『改革』とやらが行われ続けた結果、富裕層に居心地のいいこの現代日本ができあがったというわけだ」
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