第二百九十九話【mRNAワクチン(コロナワクチン)でガンになる?】

かか」唐突に仏曉は口にした。場は静まりかえっている。唖然としているかのようであった。その空気が多少でも薄まるのを待つかのように、少しの間を置いて仏曉が語り出す。



「——これは今までコロナワクチンを接種してきた多くの日本人にとっては実に不穏な言説で、コロナワクチン接種を日本国民に煽ってきた者どもによっては背筋が凍るような主張であろう」


 かたな(刀)は硬直した。だってそのワクチン、接種した事があるから。


「——『デマを流すな! この反ワクめ! コロナワクチンは有効なんだ!』と即座にそうした反応が戻ってきそうである。だが私が否定しようとするのはコロナワクチンではない。mRNAワクチン(メッセンジャー・アールエヌエー・ワクチン)だ。現に中国で接種されてきたコロナワクチンはmRNAワクチンではない。これからmRNAワクチンによる惨劇が始まる。だが中国人だけはこのからは無縁であろう」


「——こんな事を言うと『いかにも頭の程度が低そうな者の、陰謀論に嵌まりやすい者の言いそうな事よ』と、の矢が飛んで来るのは必定である。『親中派』呼ばわりされる可能性すらある」


 ここで仏曉は少し間を置く。場内はシンとしている。仏曉は人差し指と中指と薬指の三本の指を立てた。

「——しかし〝〟を組み合わせるだけで、これが単純な陰謀論では片付けきれなくなるのだ」


「——まずは1つ目の確度の高い情報を諸君らに紹介しよう」そう言うと仏曉はアタッシュケースの中から資料と思しきA4大の紙を取り出した。

「——2022年1月、EUの欧州医薬品庁、即ちEMAは、新型コロナワクチンことmRNAワクチンの追加接種、いわゆる〝ブースター接種〟を短い間隔で繰り返す事に懸念を示した。の追加接種を繰り返せば人体が元々持っている免疫に負荷をかけ悪影響を及ぼす可能性があるというのだ。これは日本の経済紙、NK新聞に掲載された記事が情報元である」(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB1220Y0S2A110C2000000/参照)



「——次が2つ目、ところが9ヶ月後の2022年10月、mRNAワクチンの複数の製造元が同ワクチンの添付文書の改訂を行い、初回接種完了から3回目接種までの最短の間隔について、5か月から3か月に短縮した。つまり、1回目の接種、2回目の接種、3回目の接種を僅か3ヶ月の間に済ませて良いとした。『4ヶ月ごと』どころかでmRNAワクチンを接種しても構わないと言いだしたのである。いったいなぜ突然添付文書の改訂が行われたのだろうか? 安全性についてなんらかの確証が得られたというのだろうか? この改訂はあたかもEUの欧州医薬品庁に挑戦状を叩きつけるような行動である」(https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0099.html参照)


「——しかし確実に言える事がある。『mRNAワクチンの接種間隔はもっと短くできる』と、という点である。これだけは動かしようがない」


「——ではEUの欧州医薬品庁に該当すると思われる我が国日本の専門家集団がどういう判断をしたかが必然焦点となる。その名を『厚生科学審議会』という。この日本の専門家集団はワクチン製造元のmRNAワクチンの添付文書の書き換え通りに方針を変更してしまった。添付文書の書き換えが行われたその同じ月、2022年10月21日にはもう〝3回目接種を行う場合の初回接種完了からの間隔〟を、書き換えられた添付文書の通り、『5か月以上』から『3か月以上』に短縮してしまったのである」(https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0099.html参照)


「——我々は欧州医薬品庁が『4ヶ月ごとでも接種間隔が短すぎる』と言う一方で、日本の『厚生科学審議会』が製造元の添付文書改訂通り『3ヶ月の間隔で問題ない』と言ったことを記憶に刻み込まねばならない」


「——そして最後の3つ目。EUの欧州医薬品庁がmRNAワクチンの接種間隔に関しての警鐘を鳴らした2022年1月から遡ること7年と数ヶ月前の2014年9月、極めて重大な発表が行われていた。なんとこれは日本発の情報なのである」


「——2014年9月、東大、千葉大、東京理科大の共同研究グループは、免疫細胞の一種であるマクロファージや樹状細胞に発現する自然免疫受容体の中の一つががん細胞を直接認識することで自然免疫系が活性化され、その結果がん細胞が体内から排除される事を明らかにした」


「——当該研究成果は、自然免疫受容体ががん細胞を認識し、その排除を促していることを世界に先駆けて明らかにするものであり、今後、自然免疫系の活性化を通した、新しいがんの治療法や予防法の開発へ繋がるものと期待されているとの事だ」(https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/articles/a_00302.html参照)


「——これを踏まえた上で、mRNAワクチンが自然免疫系の活性化とは真逆の方向へ効果を発揮し、逆にを改めて考察したならば、恐るべき結論に行き着くしかない。本来の状態なら体内から排除される筈のがん細胞が、mRNAワクチンを接種した事によって体内から排除されにくくなる。即ちmRNAワクチンを接種したためにがんに罹りやすい体質になってしまったと言えるのだ」


「——ただひとつ、『mRNAワクチン信奉派』がつけ込むとしたならば、『欧州医薬品庁が指摘した〝危険〟はあくまで〝接種間隔〟に過ぎず、mRNAワクチンそのものではない』といったものとなるのだろうが、日本政府の場合、ワクチン製造元の意向通りに接種間隔を設定するばかりか『5回目の接種』すらも呼びかけていた。日本のマスコミもそうした政府の広報に非常に協力的な、『翼賛報道体制』といっても差し支えない報道姿勢だった。むろん5回も接種すれば必然その間隔も短くなるしかない。次に日本人の平均寿命の調査結果が明らかになった時、日本社会は震撼するだろう」


「——しかも加えてこれは〝過去の出来事〟にはできない。通常の季節性インフルエンザワクチンも〝mRNAワクチン化〟するという動きがあるからだ。この問題はまだまだ終わる気配が無いと言うしかない」


「さて、諸君。これはだとは思わないかね?」


 場内シンと静まりかえったまま。ほとんどの人間がmRNAワクチンを接種してしまった身なればそれもまた当然と言えた。仏暁がそうした空気を察したか察しないか、こんな事を語り出した。

「——とは言えこれは『極右』らしくない分断ネタでもある。もちろん『極右』らしい社会の分断ネタも私は既に用意してある」

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