第八十四話【なぜだか突然〝イスラエル・ユダヤ〟攻勢3  〝ユダヤ陰謀論〟大ブレイクの時・編】

「いや待テ! 聞きようによってハいかにももっともラシイ言い草ダガ、お前の言い草ダトまるで1905年以前は〝ユダヤ陰謀論〟など存在シナイかのヨウナもの言イではナイカ! ユダヤ人達はもっと昔から中傷に苦しめられて来タノダ!」リベラルアメリカ人支局長が天狗騨記者の主張に急制動をかけた。

 天狗騨が『ユダヤ陰謀論大ブレイクの時』について語り出そうとしていた正にその時だった。



 『〝ユダヤ陰謀論〟の起源は日露戦争だ!』。


 一見突拍子も無いが妙に説得力もある天狗騨記者の考察に、しかしリベラルアメリカ人支局長としてはこんなものはあっさり認めるわけにはいかなかった。というのもこの説だと〝ユダヤ陰謀論〟はアメリカ人達の行動が原因、という意味にもなるからだった。

 そして実際のところリベラルアメリカ人支局長は〝ユダヤ陰謀論〟が『1905年から』などという、そういう〝体感〟を持ってはいなかった。

 もはやこの天狗騨なる日本人とのやり合いに何の意味があるかなど、やってる本人にも解らなくなっていたが、『こうも歴史をフリーダムに解釈させてはならぬ!』とその反射的存念で反駁が出たのである。日本人が歴史を自由に解釈し出すというのはリベラルなアメリカ人にとっては悪夢でしかなかった。下手をすればこれまで定着させてきた〝アメリカの正義〟が崩壊するからである。



 しかし天狗騨、そんなリベラルアメリカ人支局長の心の内などまるでどこ吹く風。


「〝もっと昔から〟っていつからですか?」と、あまりに直裁的に訊き返したのである。


 そう改めて面と向かって問われ、ハタと立ち往生するリベラルアメリカ人支局長。そこに追撃をかけるが如く再び天狗騨が喋り出す。


「考えてみて下さい。イスラエル王国は南北に分裂し、北のイスラエル王国は紀元前722年、アッシリアにより滅ぼされ、残る半分、南のユダ王国は紀元前586年、新バビロニアにより滅ぼされています。それ以来彼らは流浪の民となり西欧世界で迫害と差別の日常へと放り込まれるわけですが、常識的に考えてこういった人達が世界を裏から操れると思いますか?」


 件の手帳を開きもせず天狗騨は喋り終えた。


「……」


(コイツの得意科目は世界史か)と思うしかないリベラルアメリカ人支局長。こうなると逆に『もっと昔から』ということばの中身が問われる————

(もっと昔からの筈なんだがそれがいつからか……)言い出した本人にも分からなかった。



 ところがここで天狗騨が、論敵であるリベラルアメリカ人支局長に、あたかも助け船を出すかのようなことを喋り始めた。


「とは言えあなたの言う『1905年以前も〝ユダヤ陰謀論〟があった筈だ』も一概に間違いとは言えない」


「なに? どうイウことダ?」当然〝面食らう〟という反応しか出てこない。


「実は『セルゲイ・ニルス』は新たに書き加えた〝『ユダヤ人達の企む陰謀』部分〟についてこんな注釈を付けています。即ち、『これの原典はフランス語で書かれていて私はそれをロシア語に翻訳し紹介しただけだ』と。つまり種本の著者自身が『もっと前から存在していた』と主張しているのです」


 リベラルアメリカ人支局長としてはどう反応すべきか迷い、結論など表明できない。立ち往生状態である。こんなの(ユダヤ陰謀論本の著者)と同列にされたらたまらないからである。


「では問ウガ、お前はその怪しげな本の作者の言うコトヲ真実だト考えているノカ?」質問に質問で返すという〝困ったときの常套手段〟を彼は選択するしかなかった。しかし天狗騨の方は困った素振りも見せず語り始める。


「それにはまず『』ということばににどういう意味があるか、それを理解してからでなければなりません」


「原典トハ〝元〟とイウ意味に決まっテイル!」


「〝原典〟という〝一般名詞の意味〟の話しではありません。問題はです」


「中身ダト?」


「解らない、のか自分の口で言いたくない、のか。どちらにせよ私の口で説明する他ないようですね」


「ぐ……」


「『〝世界支配のやり方〟を偉いユダヤ人が後進のユダヤ人に説いてきかせるという特徴的文体で記述されている内部文書』の形、つまり『書いたのはユダヤ人』、という形になっている。これがセルゲイ・ニルスの言う〝原典〟の意味です」


「おッ、お前ハその『原典』とヤラガ存在しテイルと考えテイルノカ⁉」


「〝フランス語で書かれた原典〟なる書物の現物は確認されていません。が、フランス語で書かれた〝雑誌〟というもの自体は存在する。雑誌の名は『現代人』。この雑誌に『或る大ラビ(ユダヤ教の聖職者)がユダヤ人の秘密集合で語った講話』なるものが載っています。ただ、この雑誌を造ったのはあくまで〝ユダヤ人が嫌いなフランス人〟です。それにこの雑誌は『これはイギリスの外交官が言ったこと』と、イギリス人が〝ユダヤ陰謀論〟を言い出したことにしている。セルゲイ・ニルスというロシア人は『元々フランス語で書かれていた』と言い、フランス人は『イギリス人が言った』と言っているのは実に興味深い点です。結局『言ったのは私ではない。他の国の人間が言っている』という体裁になっている。正に典型的な〝噂話〟の構造です。これが『原典』などとは間違っても言えません」


「デハ『原典』なるモノナド存在しナイということではナイカ!」


「それが存在しなくてもしていますが。あなたが私に訊いているのは〝陰謀論〟が『1905年以前からあった筈だ』ではなかったのですか?」


「ヌッ!」


「このフランス語で記された雑誌の発刊年は1881年。しかし私はここから10年ほどさかのぼった1870年代初頭を〝ユダヤ陰謀論〟の誕生時期と見ています。理由は簡単明快。この雑誌以前、1870年代初頭に似たような趣旨の文書の存在が確認できるからです。肝心なのは——」


「待テテングダ! 1870年代が〝ユダヤ陰謀論〟の始まりとイウのも短すぎル!」


「その勘違いは故意ですか? これは差別そのものの有無ではなく〝差別する理由〟の問題です。ユダヤ人差別の起源は宗教問題だった筈です。『イエス・キリストを裏切ったのがユダヤ人』だとかで、キリスト教が絡んでいる。この時分では『世界を支配しようとしている』だとかいう陰謀的要素は見受けられません。それが或る時代から宗教的要素が消え『ユダヤ人が世界を裏から操っている』という〝陰謀論〟へと変遷したのです」


「……」


「あなたは私の話しを遮りましたが、肝心なのは『いつから始まったか』ではなく『』、です」


「〝始まり〟をないがしろにスルなど受け入れラレナイッ!」


 天狗騨は眉根を寄せた。


「仕方ありませんね」と言い、やおら件の手帳を開く。渋々と手帳をめくっていく。「—— 一説にはプロシアの或る小説家が1868年に書いた『ビアリッツ』なる小説の一章、『プラハのユダヤ人墓地にて』が原点と云われています。それがあまりにもっともらしく迫真に満ちた書きぶりだったためネタとして使われた、と」


「ダトすればテングダ、お前の言ウあの『第三版』が種本とかいう仮説は成り立たナイ!」


「なにを言っているんです? いくら『ユダヤ人の陰謀』なるものが書かれていても小説という形で売られている以上、即それが史実として扱われるわけはないでしょう。現に〝ユダヤ陰謀論〟の初期、1872年には『客観的事実に基づいた』と、理解に苦しむ断り書きをつけている政治パンフレットもあるんです。小説を史実化するためには第三者による〝変遷〟というロンダリングを経なければなりません」

(——またこういう手か)と、説明をしながら〝話し〟が訳の解らない方向へと行きつつあることを天狗騨は自覚していた。(それを正さねばならぬ)と天狗騨は考えた。


「——肝心なのは〝大ブレイク〟、即ちです。そういう意味でセルゲイ・ニルスが1905年に発刊した著作の波及力は日露戦争でロシアが敗けて悲憤慷慨する愛国的ロシア人限定です。これでは〝ユダヤ陰謀論〟は世界に広まりようがありません。種本自体は1905年に誕生していても、この時世界中に大ブレイクしたかというと、そうではない」

 天狗騨はようやく話しを元の軌道に戻しつつある。割り込まれる前に速やかに次を続けていく。


「——しかし、ロシア人ならずとも世界中の人々の関心事となる大事件が起こりました。1917年、『ロシア革命』です。ロシア帝国という大国が〝革命〟という一部の国民の蜂起により消滅し、全く別の国が建てられてしまったのだから無理もありません。〝列強〟などと呼ばれていても内部から国家というものが容易く崩壊する事が証明されてしまったのです。誰もが想像だにしなかったことが起これば、そこに陰謀論が入り込む余地ができる。これこそが〝ユダヤ陰謀論〟大ブレイクのきっかけです!」


「お前はロシア革命ガ〝ユダヤ人の陰謀〟だと言うノカ⁉」


「実際革命勢力の幹部に『レフ・トロツキー』というユダヤ人がいたのは事実です。後にスターリンに暗殺されてしまうのですが。また先ほど名を挙げたユダヤ人金融家のジェイコブ・シフは、そのトロツキー、そしてレーニンといった革命勢力幹部に対しても計4000万ドルものカネを貸していたとの事」


「〝陰謀〟ヲ否定しないノカッ⁉」


「私は『ロシア革命はユダヤ人の陰謀だ』とするを指摘するだけです。それにです、あなたがいくら全否定したくてもユダヤ人の金融家が革命勢力にカネを貸している以上はでしょう。もっとも、ロシア革命における〝陰謀論〟を語るのなら日本人・明石元二郎の名が忘れ去られているのは奇妙ではありますが、ロシア人的にはもうこれ以上〝日本人にやられた〟とは思いたくはないのかもしれません」


「アカシ?」


「やはりご存じありませんか。しかしこの際彼の話はわき道です。私が喋らずともちょっと調べれば解るでしょう」そう天狗騨は口にしてこの話しを短く打ち切った。



 ちなみに『明石元二郎』とは日本陸軍の大佐。日露戦争当時、ロシア帝国を内部あるいは後方から撹乱するためにヨーロッパへと送り込まれた諜報担当士官である。その任務を支えるために国庫から彼に預けられた工作資金は当時の日本の全歳入の250分の1にもなる巨額なものだった。明石はありとあらゆる革命勢力に接触しそして活動資金をばらまき続けた。資金を手にした活動家達は生き生きと活動を始めた。その中にはロシア革命の首謀者レーニンも含まれていた。ロシア帝国にとって、むろんそれらの活動は好ましいものではなかった。

 作家・司馬遼太郎はその著作の中でこんなことを書いている。

 『かれが親交を結んだひとびとを列挙するときりがないが、そのままロシア革命の革命紳士録になりうるものであった』と。



「——そんな時代の気分の中で発掘されたのが1905年発刊のセルゲイ・ニルスの著作です。12年の時を経てこれが日の光を見ることになった。ちなみに発掘したのはニルス本人というのが少し変わったところです。実はロシア革命当時、1917年にセルゲイ・ニルスはまだ存命していて自らの著作にさらに尾ひれを書き加えた。新たな改訂版には『1897年、スイスのバーゼルで開催された第1回シオニスト会議の場で採択された文書』というモノが掲載されました。私がセルゲイ・ニルスの著作こそが『ユダヤ陰謀論の種本』と断定した理由は正にここにあります。なにしろこの後に発刊されるありとあらゆる『ユダヤ陰謀論本』に『1897年』という年号が記されているからです!」


「お前はマサカ『第1回シオニスト会議の文書』とやらモ否定しナイつもりデハあるマイナ!」


「そこは否定ですね、私はジャーナリストですから。なにせ裏が取れない。〝裏を取る〟は記者として基本中の基本。ハッキリ断言しますがこれは怪文書の類いです。日本で例えるなら『田中上奏文』みたいなものです」


「タナカ?」


「それもわき道ですのでご自分でちょっと調べて下さい。その際はを自覚しつつ調べることをお勧めします」そう天狗騨は口にしてこの話しも短く打ち切った。



 ちなみに『田中上奏文』の〝田中〟というのは、昭和初期の内閣総理大臣『田中義一』のことである。〝上奏文〟とは『天皇に意見をする文書』という意味である。

 その中身は『日本国がいよいよ世界支配に乗り出す時が来ました』という趣旨で『その実現方法』が記されている。

 時の首相田中義一が昭和天皇に上奏した文書の筈なのになぜか中国語版の方が先に現出した怪文書である。戦後東京裁判の時『タナカメモランダム(田中上奏文)こそが共同謀議の物的証拠だ!』としてGHQが必死に現物を捜し回ったが遂に日本語の原文が見つからなかったというオチがついた。



「——さて、セルゲイ・ニルス本人にとって不幸なのか幸福なのかは解りませんが彼の著作の全てが後世に残ったわけではありませんでした。新たに書き加えられた〝ユダヤ人の陰謀部分〟、ここだけが残ることになる。あなたにも『シオン賢者のプロトコール』、あるいは『シオン長老のプロトコール』という名に覚えはあるでしょう? こうして『世界支配のハウツー本』として独立し一人歩きしていくことになります。こうなるとセルゲイ・ニルスという名も忘れ去られる」


 ソレを『知っているか』と問われ『知っている』とは答えにくいリベラルアメリカ人支局長であった。『シオン賢者のプロトコール』だとか『シオン長老のプロトコール』だとかはアメリカ人なら決して公の場で口に出してはいけない語彙だからである。それはハッキリ言って悪名高き本の名であったから。

 ちなみに天狗騨は相手がアメリカ人なので〝プロトコール〟と言ったが、日本語では『シオン賢者の議定書』『シオン長老の議定書』となる。


「——先ほど指摘した通り『ロシア革命』は世界中に衝撃を与え、列強とその国民の一大関心事となりました。いつ革命が自国に降りかかってくるか分からないからです。この日本も例外でいられる筈も無く『治安維持法』という法律が造られたくらいです。『ユダヤ人の陰謀でロシアが戦争に敗けた』と言われてもロシア人以外は関心など持ちませんが、『ユダヤ人の陰謀で一国が倒れ革命が起きた』と言われるとにわかに人は恐ろしくなってくる。影響力は雲泥の差です。そしてユダヤ人にとって不幸なことに、セルゲイ・ニルスの書いた〝ユダヤ陰謀論〟の部分がどんどん各国語版に翻訳されていくことになります。大ブレイクの始まりです!」


 天狗騨記者の圧倒的な喋りに息つく暇も無くなっているリベラルアメリカ人支局長。ただただ傾聴状態となっていた。


「——大ブレイクしてしまったこの本が国際的にどれほどの影響を与えたかと言えば、三年後の1920年にはドイツ語に訳され『シオン賢者の秘密』というタイトルで出版されました。正に最悪のタイミングでした。1920年というのは第一次世界大戦でドイツが敗北し間も無い時期です。第一次大戦の終結が1918年11月ですから。戦勝国の課した巨額の賠償金に国民生活が疲弊する中、この『シオン賢者の秘密』という本は出版後一年で12万部売れました。これだけ売れればその影響力は弱小政治結社が集会で配るビラの類いとは段違いです」


「——こうして『世界支配を目論むユダヤ人達にとってドイツ帝国という国家の存在は邪魔だった』、『だからドイツが敗けるようユダヤ人達はあらゆる工作を仕掛けそして目的を達した』という〝理解〟が拡散していくことになります。これだけ聞くとキテレツな考え方にしか聞こえませんがこれは『ドイツ国内にドイツの足を引っ張った者がいる。そのために戦争に敗けた』という意味になるようです。足を引っ張った者がユダヤ人にされた。やはりドイツ人もプライドが高いので『何者かが尋常ならざる手段を使ってドイツを攻撃した。そうでなければ我々が敗ける筈がない』と思いたいのでしょう」


「——さて、次に『いったいどんな層がそんなヘイト本を買ったのか』というのが気になるところです。我々のような者は『どうせ程度の低い人間が買ったに違いない』と信じ込みたいバイアスを抱えているものですが、残念ながらこの本を買った読者の大半は中産階級で、官僚や退役軍人や大学生など一般的に教養のある層と言って差しつかえない人々だったそうです。むしろそうした人々だからこそプライドが高い。この本を題材とした勉強会・講演会もドイツ各地で行われ、演壇に立った講演者は『大学教授』『高校教師』『編集者』『弁護士』だったとの証言もあります。後にナチス党が政権に就くことになりますが、ナチス党のような政党が非知識層に偏ること無くまんべんなく支持されたことを〝理解できない〟とする人も多い。〝ナチスの宣伝はそれほど巧妙だったのだ〟ということになっている。しかしそうした土壌はナチス党がわざわざ造るまでも無く既にできていたという事です」


「——そのナチスですが、こうした数多の集会の中に草創期のナチス党もあったという想像は決して突拍子も無い考えとは言えないでしょう。むしろ初版が1920年、『シオン賢者の秘密』が発売一年でかなりのベストセラーになったということを踏まえるとナチス党と関係の無いところで〝ユダヤ陰謀論〟は既に広まっていたと考えるほかありません。ナチス党構成員自体もこれを信じ込む〝影響を受けた側〟と言える。1933年にヒトラー政権が誕生した時、この『シオン賢者の秘密』は版を重ね33刷にもなっていたとのことです」


 リベラルアメリカ人支局長は驚愕した。この天狗騨という男の対応力に。

(『ユダヤ陰謀論』について、見苦しく弁明させるどころか逆に〝講義〟を食らうとは——)しかしもはやこうなると(テングダの悪魔化は極めて困難)と結論せざるを得ない。


(ユダヤ人を怒らせるようなことを言えば『申し訳ありません、ありません、ありません——』とすぐさま平伏するように謝罪し発言を撤回するのではなかったのか————)


 リベラルアメリカ人支局長が半ば呆然ぼんやり考え事をしているさ中、天狗騨記者が語りかけてきた。


「ではあなたにはユダヤ人団体への紹介状の方をよろしくお願いします。大使館の方へは勝手に押しかけられると思うんですがね。団体の方へはあなたが一筆書けば確実なんでしょう?」


「ハ?」


「忘れたわけはないでしょうね? 私は取材をしたいと言ったじゃないですか。それにあなたも『イスラエル政府や在米ユダヤ人団体カラ猛抗議がいく』と言っていたでしょう?」


(正気か⁉)


「お願いしますよ」


(こんなのをユダヤ人団体幹部に引き合わせたら俺の立場が無くなる! 俺は社会的地位あるアメリカ人なんだぞ!)

「なにヲ言うつもりカ言エ!」


「あなた、ユダヤ人ですか?」


「そうでなくてもいいカラ言エ!」


「二、三、ユダヤ人団体の方やイスラエル政府の方に取材したいことがありましてね」


(こいつの言う〝取材〟は取材じゃない!)


「何ヲ言うツモリカ、まず俺に言エ!」


 いつの間にか攻守が逆転しているリベラルアメリカ人支局長と天狗騨記者であった。

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