第百十三回 初挑戦! まずはプロフィール。……メモメモと。


 ――メモは、つまりメモリーの意味。心に刻む内部メモリーと筆記の上で残す外部メモリーの二種類。……これを巧みに使う。そして誰のプロフィールかというとね、



 星野ほしの千佳ちか。今、僕の傍らにいる。


 横並びで吊革を持つ。もちろん低め、高いと背伸び必至。身長は、僕と同じ百四十センチほど。服装は、それも僕と同じ制服。……まあ、それもそのはずで、今は登校中、僕と同じ学園の生徒だから。ここは車内、走る電車の中。登校時は出発地点で、僕ら三人の待ち合わせ場所という用途も兼ねる『最寄りの駅』という名の最寄りの駅から四駅先、そこで下車だ。まだ四分ほどある。そして車窓から見える景色は、緑豊かな町並み。


 ふと口遊む。


 鼻歌を超えて口遊んでいる。


 同じアニソンでも、

 頭にリアルの三文字が付くロボット系の『バンダム』よりも、エブリ系の『カントリーロード』が良く似合う。……そのように、そう思っているとね、


梨花りか、エブリ好きなの?」


「えっ?」


 ストップ・ザ・ソング、驚きの表現もまた含まれる。千佳が、こちらを見て話しかけてきた。それもニッコリと。……この時間、登校時に千佳が笑みを見せるなんて……まだ四日目だけれど、本当に珍しいことだった。いつもは笑みとは程遠くて、近付き難いような表情……機嫌悪いのかな? と思うほどで、悲しそうなのもMIXされたような、そんな感じで、……どう接して、どう声をかけてあげたらいいのか、悩むに悩んでいて、


 でも、


「僕ね、大好きなんだ。『カントリーロード』でしょ? 今度カラオケ行こうよ」


 と、そのことさえも帳消しにするような満面な笑顔。……安心。千佳も今時の、普通の女の子と思わせるような一コマ。……嬉しい! 嬉しいな!



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