第百六回 バッドナウ! バッドナウ! バッドナウ……。


 ――『でも、今は』の×ことの三。


 つまり話を戻そうってこと、危うく忘れかけていた。



 前々回、瑞希みずき先生が言ったのだ。


「あと一緒にお風呂も。わたしたち、裸の付き合いもしたし……」と。


 ――誰と?


 それは言うまでもなく、その直後に瑞希先生の口を塞いだ人物、未来みらいさん。


 それに対し、


「……マリさんには内緒にしてあげるから」と、僕は言う。


 ――そう口走っていた。


 僕はマリさんから、聞いたことがあった。……それもね、四年前の出来事。


 マリさんが未来さんに出会う前、イコール。マリさんがまだ、遠く海の向こうにいた頃のお話。……もう承知の上なのだ。未来さんが、瑞希先生に恋心を抱いていたことは。


 でも僕は嫉妬。未来さんに対しメラメラと……。


 ……そのはずだったのだけど、……軽くなったのだ。共同戦線……その条件を飲んだこともあるけど、……ジワッと涙にじむエピソード。


 そう、そうだよ。


 それが今、僕がこの場所にいる理由。バンプラ『四十八分の一スケールUGユージィ』を作るために、未来さんのお家にいる。未来さんのお手伝いのために、今ここにいるのだ。


 それはね、

 母と子の再会のために!


 その母の面影と似たものを、瑞希先生は持ち合わせていたという。多くは語らなかったが、未来さんはそう言っていたそうだ。……マリさんだけには。だからなのかな?


「明日ね、千佳ちかさんの退院祝いに、豚汁パーティすることに決定したよ」


 それは、――マリさんのいる喫茶『海里マリン』で、行われる運びとなった。



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