第百四回 夢中になって、大人のお話……其の二。


 ――サブタイトルのように夢中になる。経験を積み大人への道を歩み行く。



 うむ、いい響きだ。

 ……と思いながら、プラモデル作りに励む。



 自分の顔を見ることはできないけど、ともに作業する可奈かな未来みらいさんの表情を見ていると、きっと学生の本文である学問、平たくいえば、お勉強よりも手に汗握る作業。それでも勉強机を用いて、更には木製机にまで、作業場は拡大の一途を遂げていた。


 僕は楽しむ。


 愉しむ中にも戦い挑む。「優勝してあげる」と、心底言いたい。されど今回は塗装なしの基本パチ組み。トップコートで半艶消しかな? その分、大きい。一つ一つのパーツが……ボリュームもある。キットの特製を活かし、仕上げる。シンプルなようだけど、さすが未来さん。きっと僕よりも、キャリアーが上なのを感じさせる。……凡そ六年差。


 すると、何故だろう?


 集中と熱中を兼ね備えているはずの瑞希みずき先生が、

 ええっ? いつの間にか未来さんの傍らへ。――瞬間移動? 及びテレポート?


「サタデーナイト、未来君いいの?」


「それはミズッチだろ? ……って、懐かしいな。ミズッチがプチ家出や、彼氏と喧嘩してプンプンと丸い顔を余計に膨らまして、一緒にゲームしたよな」


「そうねえ、丸い顔は余計だけど……豚汁も、あと一緒にお風呂も。

 わたしたち、裸の付き合いもし……」のところで、パッと口塞ぐ。


 もちろん手で、未来さんが瑞希先生の口を。……僕、たぶん可奈も、その先のお話に興味深々で……そう、そうね、そうだね、きっとニヤリとしている。可奈のように。


「……その先、聞きたいなあ。大丈夫だよ、マリさんには内緒にしてあげるから」


 って、何てことを口走ったのだろう? その場の勢い? でも、それとも……。



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