第九十二回 でも、やっぱり一番は母と子の絆。


 ――くどいと思われそうだけど念のため、ここは病室。


 千佳ちか瑞希みずき先生を中心に、お話……物語ストーリーは進められる。一緒にいる僕は、タイムリーに目の前で起きていること、思うことを、文章にしている。――心の中での文章化。


 君という存在に、

 出会えたという奇跡。また軌跡を綴りたいから。



 そんな中で、旋風のようにカーテンを開けて登場した人物。それでもって瑞希先生に手首を掴まれている人物。……苦痛? そう、苦痛に顔を歪めているその人は、


「強すぎっ、何て力なの? ちょっと離しなさいよ」


 やっぱりだ。「エヘヘ」と、不気味に笑う瑞希先生、……少し怖い。


「千佳さんのお母さんですか? だったら、わたしとちょっと外でお話しませんか?」


 千佳さんのお母さん?


 この人から、苦痛の声が漏れている。

 さらにグッと、力を入れたようだ瑞希先生。……見てわかるように、恐るべき怪力。


 だけど、それを目の当たりにしても驚かないのは未来さん。腕を組んだまま、体勢も崩さず壁際に立っている。長い付き合いだからかな? 動揺の色、まるでなし。


「わかったから、離して」

 と、悲鳴の一歩手前の声で、その人は言った。

 で、その人の手首を、パッと離した瑞希先生。……ニッコリ笑みを見せて、


「じゃあ行きましょうか。お茶できる場所まで」


「はい……」と返事しつつもその人は、もう少しよく瑞希先生の顔を見ると、

「ええっ!」と驚くのも一瞬で「瑞希ちゃん?」と声かける。それでもって瑞希先生の知り合い? ……と、そう思っていたら、今度は、今度は!


千尋ちひろ先生?」と、瑞希先生の口から、確かに出た名前。――確実なものとなる。


 懐かしさ満載。さっきと趣を変えて、二人は周囲にルンルン気分を振り撒いた。



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