第七十五回 ……なだけに、Gの願い。


 題して『G七十五』――Gとは、どのような意味なのか?



 その答えを求めるため、

 僕らの時間は、ちょっと巻き戻る。リトル、少し、少しだけ。――芭蕉ばしょうさんに触れるための奥の細道。そこに入るまだ前のこと、つまりは川で泳ぎ中。


 ……ごめんね。

 温泉に辿り着く前に、もう一エピソード存在していたの。


 実は、僕らが此処を訪れたのは、可奈かなの間違いではなく縁あってのこと。可奈がよく喋る子でなかったら、それこそこの縁は、謎のまま、物語進展の渦に飲み込まれてしまうことだろう。ラビリンスに溺れることは必至、ミステリー劇場の開幕だ。


 話は、得意な泳ぎ方。


 僕は平泳ぎ。自分の背よりも二倍ほどの深さでも、お魚のように潜水する。可奈はそんな僕を見るなり「蛙みたい」と言うが……。それなら可奈は自由型。つまり学校のプールと同じ要領で、自分の背よりも低い場所を好むクロール派。その様子を伺いながら、それ以上に水位の浅い場所で、水遊びを嗜む程度の千佳ちか。……あまり泳げないとのこと。


 そんな具合で、

 同じ場所、同じ川で繋がっているのに、――三人ともバラバラな行動。


 令和の七年。

 何を隠そう千里せんり府の大イベントの二〇二五年。この場所が会場になる。エメラルド&ブルーな大自然を守るよう運動を起こすのに、チームワークは必要不可欠。その意味を含むのか? 可奈はこの場所のことを、――『瑞希みずき先生から聞いた』という。


 そして横たわり日向ぼっこ。

 真っ白な雲のように、真っ白な頭の中。……その時だったね。可奈のお喋りが、稀な確率をもって、そのことを僕たちに告げた。その中には指摘の意味も含まれていた。


 だからこのあと、僕と可奈は一緒に、千佳と水遊びを楽しんだ。童心に帰った。



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