自分の夢をインターネットにアップロードできるようになった時代を舞台に、女性化した主人公が夜に見る夢の様子を描いていくのだが、とにかく夢の世界の描写が強烈である。
部屋の扉を開けたらいきなり列車が走っていたり、本来いないはずの人間がいきなり登場したりと、展開の支離滅裂さがまさに夜に見る夢そのものなのである。第三者の視点から見ると明らかにおかしなことしか起きていないのに、本人はそのことにまったく違和感を覚えないというのがまさに夢の世界。
それだけでも強烈なのに、一話進むごとに物語は全然違う顔を見せてくる。先ほど見ていた奇妙な夢の話をしていたと思ったら、実はこの瞬間こそが夢だと気づいたり、実は夢を見ていたのが自分ではないと判明したりして、読者の精神をどんどん揺さぶってくる。
そうして文章の力でさんざん読者を悪夢のような酩酊世界に引きずり込んでおきながら、わずか4話で物語にきっちりオチをつけて、綺麗に完結させているのだから脱帽としか言いようがない。
(「裏返る性別……TS作品特集」4選/文=柿崎 憲)