多重人格の曾曾曾祖父が子孫に取り憑いてる件
K
第1話
どこから話せばいゝのだらうか。
私は解離性同一性障害、所謂多重人格の中の一人である。
私は決して表に出ることはなく、ほそ゛〻と脳内で人を見、人間に対する思ひを綴るばかりである。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
私の主は、(精確にゐゑば体であり主人格だが、私は表に出たことも無い上にとんと体には無頓着なのでこゝでは主と記す)
世間でいふ書生、中学生である。齢15にして学校に通ふとは考えられぬが、これが今の世のけういくなのだらう。
しかしなんとも珍妙なものである。
会って話せばいゝものを隣を歩く友人は小さな板に指を押し付けるばかりで主がいないかのやうに歩いている。
かくいふ主も小さな書物をじっと見つめてはボソ〻となにやら呟いているのだ。
どうやら試験が間近に迫っているらしい。
我が主ながらいじらしいものだ
何日も前からしておればいゝものをゆるり〻と歩を進めながらまるでこの世の終わりかのやうなむっちりとした顔で線を引く。
学校も試験も終わったやうで主はぐで〻とそふぁあの上で寝そべっている。
明日からは夏の長期休暇のやうで大方小さな板を使って遊びの約束をとりつけているのだらう。
恋仲になるやうな相手もゐなひとは我が主ながらなよ〻しい。
恋焦がれるおなごからの返事(どうやら小さな板を介して会話ができると見た)でじたばたと一喜一憂しているのだ。微笑ましい。
それにしても小さな板は便利そうである。
なんでもステーブとやらが作り電力を元に動いているとは正に《ハイカラ》であろう。
しかし主は試験の為に勉強すればいゝ時間も小さな板を見ているのだから情けない。
私の時代では(なぜ私は人格なのに時代を覚えているかは定かではないが覚えているものは仕方がない)福澤大先生や吉田先生が学問の大切さを説いていらっしゃったが今の世は学校に通わず勉学に励まずともよいとの啓蒙活動さえ行われているといふ。
勉学に精を出し努めればこそ小さな板もできたといふにその啓蒙活動を小さな板から発信するとはちゃんちゃら可笑しく物笑いの種である。
けうはこの辺りで筆を置くことゝしよう
多重人格の曾曾曾祖父が子孫に取り憑いてる件 K @syusaku8kipposi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。多重人格の曾曾曾祖父が子孫に取り憑いてる件の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます